夢追う君に、手を伸ばし U
□記憶の補填
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轟家に帰ると、居間では携帯を見てる焦凍君がいた。
自分の部屋にいないでここでのんびりしてるってことは、わたしを待っててくれてたって自惚れていいのかな。
「焦凍君、おかえり。」
「…ただいま。」
知らない人は、この挨拶は逆だって言うだろう。
でもこの言葉はどうしても言いたかった。
相手の方が先に帰ってきてて、不恰好なタイミングになっちゃったけど。
「帰ってきた時、姉さんからほとんど何も言われなかった。誤魔化してくれてありがとな。」
「まあ言い出しっぺだし…」
勝手にしたことだ、お礼を言われたくてやったわけではないけれどその言葉に少し救われた気になった。
「ニュース見てもいい?えっとリモコンは…」
「………。」
「焦凍君…左脇にあるものは何ですか?」
とっさにリモコンを隠そうとしたみたいけど、バレバレである、そんなにわたしに見せたくないのか。
「大丈夫だって。重傷者の映像見ただけで思い出せたら、もうとっくに記憶取り戻してるよ。」
「…気づいてたのか?」
「さすがにね。気遣いは嬉しかったけど。」
お父さんの亡くなった現場を、辛い記憶を思い出さないまま生活してほしいなんて思ってくれてたんでしょ?
本当に冬美さんも焦凍君もわたしに甘すぎる。
1日経っても、ニュースを独占してるのは昨日の事件。何回も同じオールマイトの戦闘映像が流れていた。
「焦凍君たちは映ってないね…こことは別の場所だった?」
「いや、ここだ、メディアが着く前に救出はできたから。」
最初は気乗りしない感じだったけど、聞けば色々と話してくれる。信憑性高すぎる情報の源よ、ありがたや。
「えっと、じゃあ脳無につけたGPSはここを示してて、爆豪君もここにいて…」
「いや、最初は爆豪も他の敵と別のとこにいて、ワープの個性でここに来たって感じだ。」
「さっきのキャスターの言い方的には最初からここにいたことになってるけど。」
「同じ個性の人達への配慮だろ。」
「そっか…敵と個性一緒っていじめの対象になるもんね。」