★本編★

□平和の象徴と王子
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〜平和の象徴と王子〜




ぽけっと病室のベッドの上で外を眺め、
暇そうにくぁっと小さなあくびをこぼす虎白。
ふいに病室のドアが控えめにノックされ扉が開かれた


『……!』


入ってきたのは大きなフルーツの籠を持ったオールマイトだった、
その後ろに焦り顔の緑谷がぴょこりと顔を出す
二人を見た虎白はぱぁっと表情をほころばせた。


『おーるまいと!いずく君!』

「やぁ、虎白君暇そうだね」

「あ、あれ……虎白君、今オールマイトって……」


トゥルーフォームのまま病室に入ったオールマイトに焦っていた緑谷だったが
虎白は確かにオールマイトと呼んだのだ
ベッドからぴょんっと飛び跳ねてオールマイトに抱きついた虎白
なんなりと受け止めそのまま高い高いとかかげてやる、オールマイトも虎白もニコニコと笑顔だ。


「相変わらずのヤンチャっぷりだ!」

「え、えっ……?」


何が何だかわからない表情の緑谷を置いてけぼりに2人で会話を進めてしまう。


「虎白君、来るのが遅くなってしまってすまなかった、よく頑張ってくれたね」

『たすけなきゃ、っておもったから、しょーたも、みんなもだいじ』

「相澤君から、記憶が戻ったと聞いたよ、……虎白君」


オールマイトは急に真剣な顔になり
抱いていた虎白をベッドに座らせて自分はその前でしゃがみこんで虎白の手を握り瞳を見つめた。


「いいかい?あの力はまだ使っちゃいけないよ、君にはまだ大きすぎる、制御する力をしっかりと学んでからだ、約束できるね?」

『……うん』

「いい子だね」


そっと頭を撫でるオールマイト
置いてけぼりにされていた緑谷は声をかけていいものかと
恐る恐る口を開いた


「あ、あの……オールマイトは虎白君の知り合いなんですか?」

「緑谷少年、8年前、世界を騒がせていた二人組のヒーローが居たの知っているかい?」

「……!!もちろんですよ!オールマイトと並ぶプロヒーローで、とっても強力な個性を持っていた、けど8年前の敵の襲撃によって殉職した、伝説のヒーローコンビ、ホワイトウィングですよね!?」


緑谷の言葉にきゅっと唇を噛む虎白
オールマイトはそっと虎白を抱き上げた。


「相変わらず凄いな君は……そう、そのホワイトウィングの二人、白星の王ライオ、天空の王女エンジェル……虎白君は彼らの息子だよ」

「……え、ええええ!?!?」


病室内に緑谷の驚いた声が響き渡る
何を言っていいのか、
驚きすぎて言葉が出ず口をぱくぱくとさせている。


「私は彼らの友人だ、虎白君は生まれたときから知ってるよ」

『……っ』


抱かれていた虎白はふいにオールマイトの肩にぐりぐりと顔を押し付け、
ぎゅうっと強い力で洋服を掴みしがみついた
そんな虎白の背中をゆっくり撫でてやる。


「緑谷少年、君を一緒に連れてきたのはほかでもない、学校生活でも虎白君と仲良くしてくれているとは思うが、私たち教師一同が虎白君を見れない時、君に見てもらいたい」


少しうるんだ瞳で虎白は緑谷を見つめた
オールマイトはとんとんと背中を優しくたたき続けながら再度口を開く。


「緑谷少年はあの場所にいたからこの子の個性が強力なものだとわかるだろうが、虎白君もまだまだ小さな子供なんだ、私たちはとっても心配でね」

「あの……オールマイト、虎白君は何歳なんですか?確かに身長は小さめだし、言動も子供っぽいですけど、ぼくたちと同じ高校一年生ですよね?」


緑谷の言葉に少し悲しそうな表情をしながら
オールマイトは虎白の頭を撫でた。


「普通だったら君らと同じ年齢さ、虎白君はね8年前の事件の時、あの場所にいたんだよ彼らが大事な子を守るために、力の暴走を抑えるために虎白君を時の眠りにかけたんだ」


オールマイトの言葉に唖然と口を開く緑谷
強力な個性の持った子供が行方をくらませた
その情報しかテレビでは入ってこなかったし
詳しい内容は公開されていなかったのだ
そんな重大な話を僕なんかにしてもいいのかと緑谷は考え込んだ。


『……だから、ぼくの今のねんれいは、7さい、いずく君には話していいよって、おーるまいとに、ぼくがいったんだ』

「え……どうして……」


驚きに目を見開く緑谷に
先程まで少しぐずっていた虎白がにかっと笑って言った。


『だって、いずく君はおーるまいととおんなじだから』

「……!!」

「私は何も話してないよ、わかるのはこの子の力だよ」


ふわふわの髪をそっとなでてやれば
虎白は気持ちよさそうに目を細めた


「それって……」

「おっと……緑谷少年この話はまた今度だ」


撫でていた虎白の頭に急に耳がピコンと生えた、
オールマイトの腕の中にいる虎白はぱぁっと満面の笑みを浮かべて入り口を見つめ手を伸ばしたのだった。
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