★本編★

□守りたい大切なもの
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〜守りたい大切なもの〜




ドクンドクンと心臓の鼓動が早くなるのを感じる、
知らないはずなのに恐怖で足が竦み
虎白の脳裏には血まみれの誰かが浮かんでは消えていく。


「……へぇ、目が覚めたって噂は本当だったのか……そっか、そっかぁ……先生の言ったとおりだ……!」

『……っ!?』


全身に手のついた男の言葉は虎白には届いていた、
虎白が目覚めたことはまだ雄英の教師陣、そして一部の警察しか知らないはずなのだ。
ぐるぐると思考が混乱する


「敵ンン!?ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

「先生!侵入者用センサーは!」

「もちろんありますが……!」

「現れたのはここだけか学校全体か……なんにせよセンサーが反応しねぇなら無効にそういうこと出来る“個性”が居るってことだな校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割……バカだがアホじゃねぇ、これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」


虎白は轟の言葉を聞きながらぎゅっと目を閉じ、すうっと呼吸を落ち着かせるように息を吸い込む。
耳をぴこぴこと動かし、そのまま目を閉じながらぽつりと声を発した。


『……でんぱがさえぎられてる、うん……しょうと君の言うとおり、そういう個性のやつ、いるよ、……いわ?みたいなのがたくさんあるとこ』

「!?」


なんでそんなことがわかるのかと聞き返そうとした轟は相澤によってかき消された。


「13号避難開始!学校に電話試せ!センサーの対策も頭にある敵だ“虎白”が言った通り電波系の個性を持った奴が居るんだろ、上鳴おまえも個性で連絡試せ」

「っス!」


相澤は捕縛武器を手にかけて広場にいる敵の方を見据えた、
その行動に虎白の顔がどんどん真っ青になっていく。
行かせてはいけない、本能的にそう感じ取った、
しかし震える口から出てくるのは言葉にならない文字ばかりで言いたい言葉はひとつも出てきてくれない。


『っ……ぁ、しょ、……』

「あの数じゃいくら個性を消すって言っても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ正面戦闘は……」

「一芸だけじゃヒーローは務まらん」


すっと体制を低くする相澤
そのとたん虎白が大きく息を吸い込み、声を震わせ張り上げた。


『っ……しょ……、先生!!!ぼくもいく!!!!』


虎白の言葉にみんなが振り向き相澤も目線だけ振り向く、
相澤に駆け寄ろうとする虎白を13号ががっしりとおさえこんだ。
真っ青な顔で必死にこちらに手を伸ばしてくる虎白に相澤は喝を入れる。


「ダメだ!!13号任せたぞ!!」


それだけ言えば階段から飛び出し敵のいる広場へと突っ込んでいった。
虎白はそんな相澤の背中を見つめ13号から逃れようと必死にもがき悲痛にも叫び続けた。


『しょ、たぁ……しょぉたぁあああ!!!』


★ ★ ★


ーこの子は殺せないさ、命に代えても…!ー

ーこの子の未来をつなぐこと、それが私たちにできることー

ーだから、これで最後だ敵ー

ーっ…虎白、いい?これだけは覚えておいて、悪に染まってはダメ、あなたは光ある子だもの、私の…私たちの自慢の息子ー

ーイレイザー、虎白が一番なついていたお前に頼みがあるー


相澤が飛び出してから虎白の周りはがらりと音を無くした。
見えている景色は相澤が一人敵に攻撃を仕掛けているものだったのだが、
音だけは無音の中に目覚める時に聞いた二人の声が響き、まわりが真っ赤に染まる映像がフラッシュバックする。
助けに行かなければ、彼を、消太を助けなければいけない。
一瞬脳裏に脳みそが剥き出しの巨漢に取り押さえられ、血まみれの相澤が浮かびヒュっと息を詰まらせる。
13号にがっしりと掴まれている虎白には何もできないのだ


「はじめまして我々は敵連合」


不意に場外に出ようと走っていた一同の前に黒い靄が広がり
一人の男が立ちふさがった
行く手を阻まれ13号と生徒たちは足を止めざる負えなかった。


「平和の象徴オールマイトに息絶えて頂くことと、そちらにいる“白星の王子”王羽虎白を回収したいと思ってのことでして」

「!?(オールマイトと……虎白君!?)」


緑谷は13号に抱えられている虎白をチラリとみる
虎白はグルグルと威嚇したように敵に牙を見せていた


「本来ならばここにオールマイトもいらっしゃるはずなのですが……何か変更があったのでしょうか?まぁ、それとは関係なく私の役目はこれ」


靄をぶわりと増殖させる
しかし瞬時に霧島と爆豪が飛び出し攻撃を仕掛ける
全く攻撃が聞いてない敵に焦る13号は個性を発動しようと手を伸ばし二人にどくようにと指示を出した


『っ!?』


13号が個性を発動するよりも先に敵が個性を発動させた
ほとんどの生徒がバラバラに飛ばされ
13号の腕の中にいた虎白も同じように飛ばされてしまった。
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