★本編★

□ヒーロー科1年A組
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〜ヒーロー科1年A組〜




部屋中にバタバタと動き回る音が響く、
ここは相澤の住んでいる家であり最近目を覚ました虎白もここに住んでいる
そんなこんなで雄英高校ヒーロー科への編入が決まり今日が初めての登校日である。


『しょーたぁー!これどーやってやるの』


校長である根津から貰った制服は虎白のサイズに合わせているとはいえ、これから身長が伸びることを見越して少し大きめに作られており、
現在虎白はネクタイを首に巻き付けながら格闘していた。


「バカ、そうじゃない、ほら、覚えろよ?」


背中側から手を伸ばし虎白に見やすいようにネクタイを結んでやる。
じっとネクタイが結ばれるのを見ている虎白は、どうやらイマイチ理解していないようで少し首を傾げていた。


「ほら、これでいい」

『むず……』

「最初はわかんないだろ、次からは自分でやってみろ、何回かやれば覚える」

『はぁい』


ネクタイを結び終え、
虎白はててっと鞄に駆け寄り荷物を押し込んでいた。
相澤も自分の荷物の準備をしつつ虎白の荷物もチラリと覗き見る。


「ちょっと待て……、ぬいぐるみはいらん、置いてけ」

『えぇ……?でもこれ、ほわいとらいおんだよ?』


雄英高校に行った次の日に色々と必要なものを買い揃えに行った際、
虎白がおもちゃ屋の前で動かなくなったので買ってあげたぬいぐるみであった。
普通は持っていかないだろうと考えつくが、なんにせよ虎白は8年も眠っていた、
時は過ぎても子供のままなのだ。
子供の時の虎白は個性は強いが、身体が弱くあまり学校に行ってなかったのを思い出した相澤は虎白の目線までしゃがみこんでしっかり目を見つめた。


「虎白、学校にはヒーローの勉強をしに行くんだろ?じゃあ、そのぬいぐるみはどうする?」


虎白はうーんと唸る。
渋ったように鞄からぬいぐるみを取り出すとソファに置いた。


『…勉強するからおいてく』

「よし、いい子だ」


わしゃわしゃと頭を撫でてやれば
時計をチラリとみてサッと荷物を担げば、行くぞと虎白に声をかけた。


「そろそろ行くぞ」


★ ★ ★


少し早めに学校に着き職員室で待機している虎白は真新しい制服を先生たちに見せびらかして回っていた


『まいくー!せいふく似合う―?』

「虎白、ここでは先生な」

『まいくせんせー!』

「おー、似合ってる似合ってる!」


よほど嬉しいのか虎白は次から次へと先生たちに声をかけて回っていた。
そんな時、外に出ていた相澤が帰ってきて虎白の首根っこをつかみ、そのままぷらんと持ち上げた。


「チビ助、そろそろ行くぞ」

『しょーたー!』

「先生な」

『せんせー』


職員室に残ってる先生たちに手を振り虎白と相澤は教室へと向かった


★ ★ ★


「昨日の戦闘訓練お疲れ、Vと成績みさせてもらった、爆豪、お前もうガキみてぇなマネするな能力あるんだから」

「……わかってる」

「で、緑谷はまた腕ぶっ壊して一件落着か、個性の制御…いつまでも「できないから仕方ない」じゃ、通させねぇぞ、俺は同じ事言うのが嫌いだ、それさえクリアすればやれることは多い焦れよ緑谷」

「っはい!」

「さて、HRの本題に入る前にお前たちに紹介したいやつがいる」


そんな言葉に一斉に教室中が騒がしくなる。
ざわついてる時間ですら無駄なので、相澤は個性を発動させ静かにさせる、チラリとドアの方を向くと廊下で待っている人物に優しく声をかけた。


「王羽、入ってこい」


ガラリと教室のドアが開くと真っ白な髪をふわふわと跳ねさせた、小さな男の子が入ってきた。
みんなの視線を受け、少し警戒したようだったがゆっくりと相澤の前まで来ると皆へと向き直る。
周りの人をゆっくりと見渡せば幾分か落ち着いたのか肩の力がスッと抜けるのが分かった
それを確認し相澤は生徒へと紹介を始めた。


「訳あって、少し遅れての編入だ、王羽挨拶しろ」

『……おうば、こはくです、よろ、しく』


ぺコりと頭を下げる虎白。
遅れての編入者に不思議がっていた生徒たちも虎白が挨拶をすればそれぞれがよろしくと声をかけ始めた。


「王羽、お前の席は一番窓側の後ろな」

『はぁい』


虎白が席に着くのを確認すると
相澤はHRの本題を切り出した


「さて、HRの本題だが……急で悪いが今日は君らに学級委員長を決めてもらう」

「「「「「学校っぽいのキターー!!」」」」」

「委員長やりたいです!ソレ俺!」

「ウチもやりたいス」

「ボクのためにあるやつ☆」

「リーダー!やるやるー!!」


それぞれが手をあげやりたいと騒ぎ出す
周りの声にびっくりしている虎白は、目を見開いただけで特に手を挙げようとはしなかった、そんな中、ざわついているクラスを飯田が止めに入った。


「これは投票で決めるべき議案!!」

「そびえたってんじゃねぇか!何故発案した!!!」

「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」

「そんなん皆自分にいれらぁ!」

「だからこそここで複数票を獲ったものこそが真にふさわしい人間ということにならないか!?どうでしょうか先生!!!」

「時間内に決めりゃ何でもいいよ」


飯田の提案に相澤はしれっと答え、
もそもそと寝袋に潜り眠り始めた。
虎白はそんな相澤を見て自分も朝早かったなと呑気に考えあくびを一つこぼしてウトウトと瞳を閉じた。
投票結果が黒板に書きだされた
そうやら委員長は緑谷、副委員長は八百万に決まったようだった。


★ ★ ★


お昼になり虎白は生徒たちに囲まれていた
皆に一緒に食事をしようと誘われたのだが
一気に話しかけられ困ったように眉を下げる


「みんな一気に話しかけすぎだよ!王羽君困ってるよ」


緑谷が助け舟を出してくれた
ふっと息をはくと虎白は緑谷を見た


『ありがとう、えと……』

「緑谷出久、よろしくね王羽君」

『あ、虎白でいいよ?よろしくね、いずく君、あ……ごはんなんだけどね、職員室いかなきゃなんだ、だから、今日はダメだけどみんなのこと知りたいからあしたでもいい?あと、名前教えてほしい』


まだ少し慣れていないのかたどたどしく話しながらも
皆のことが知りたいと懸命に伝えた。


「もちろんだぜ!よろしくな!虎白!俺は切島鋭児郎」

「俺は上鳴電気」

「私は麗日お茶子」

「俺は飯田天哉!よろしく頼むよ王羽君!!」

『うん!えいじろう君、でんき君、おちゃこちゃん、てんや君!覚えた!じゃあ、ぼく行くねー』


名前を教えてもらい満足そうに職員室へと足を進めた。
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