★本編★
□プロローグ
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〜プロローグ〜
『ぱぱっ、ままっ!!』
恐怖でガタガタと震え泣きながらも、
必死に小さな手を懸命に伸ばす男の子。
周りは、まさに戦場といってもいいほどであった。
誰のかもわからない血が飛び散り、まじりあってどろどろとした血の海を作り上げていた
そんな血の海に彼と彼女は佇んでいた。
完全なる奇襲であった
敵の目的が彼らの一人息子であり、その子が人質に取られている。
他のヒーロー達も、うかつに手が出せない状況であったのだ。
そんな中、彼と彼女はふっと肩の力を抜き息子へと微笑みかけた、
その行動に、ヒーロー達が息をのみ
涙を浮かべる者、拳を握る者、唇を噛み締める者、様々であった。
「虎白、大丈夫だよ、いつも教えているだろう?言ってごらん?王様は?」
『っ……かっこよくて、つおいっ!』
ボロボロと嗚咽をこぼしながらも、厳しい父の教えだと
しっかりと答える虎白と呼ばれた男の子
しかし、その子は見てしまっていたのだ、自分の親である二人が血だまりの上でお互いの身体を寄せ合って手をつないでいるのを、
そして、これからするであろう行為を予測してしまったのだ。
『やだっ、……やだよっ……!ぱぱっ、ままっ!!ぼく、いいこに、するよっ……つよくもなるっ、だから、……だからひとりに、しないでよっ!!!』
身動きが取れない身体で必死に手を伸ばし二人に近づこうとする
泣きながら叫びながら小さな王子は訴えた。
「っ……虎白、いい?これだけは覚えておいて、悪に染まってはダメ、あなたは光ある子だもの、私の…私たちの自慢の息子」
「イレイザー、いや、消太……虎白が一番なついていたお前に頼みがある」
「……っはい」
静寂の時間が数秒訪れる、
イレイザーは苦し紛れに笑う彼の言葉をしっかりと受け止めようと、彼の黄金に輝く瞳を見つめた。
「これから、虎白を……俺たち二人の子を頼んだ、……そしてみんな」
彼と彼女は涙を流しながらヒーロー達を見回した。
ゆっくりと個性を発動させていき、二人の間には眩い光が集まり始める。
「8年後だ、必ずこの子をプロのヒーローにしてやってくれ」
『ぱぱっーー!ままっーーー!!』
敵が虎白に攻撃を仕掛け始め
虎白が叫ぶのと同時に辺り一面には目があけられないほどの眩い光が溢れだした。
その、光が止む頃にはヒーロー達全員が無傷で雄英高校の敷地内におり
イレイザーの腕の中には虎白が、涙を流しながら時の眠りについた。
★ ★ ★
以前、あるヒーロー夫婦が亡くなったというニュースが世界中を駆け巡り、そして、人々を不安にさせた。
平和の象徴をも超える強大な力を持った子供を残したという噂とともに、
ヒーロー達はそれぞれの思いで今を過ごしているだろう。
彼が目覚めるまであと少し…
END