神をも狂わすもの
□2. 目覚め
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「んん......」
私は目を開けた。
意識がはっきりし始めると、体の痛みや怠さが襲ってくる。
...もう何十年も眠っていた感じ。
きっと時はそんなに経ってはいないけれど...
私は体を起こしたが、背中に激痛が走る。
その原因は背中を見なくてもわかった。
私...翼が片方無くなってしまったんだった。
涙と共に私の身に起こった全てが鮮明に蘇る。
私はあの日いつも通りの生活を送っていた。
月の女神である私は夕暮れと共に目を覚まし、夜明けと共に眠りにつく。だから、日中に起きることなんてほぼなかった。
あの時は聞いたこともない爆発音で目を覚ました。
私は城の窓からビルカを一望したが、もう私の知っているビルカの姿ではなかった。
私は急いでベッドから出て何が起こっているのか見に行った時には誰も生きてはいないし、城の窓から見た時以上に酷く、跡形もなかった。
そして城から出て数分後、城に落ちたものの正体が雷だとわかり"エネル"だと確信した。
ビルカを破壊し見下して高笑いをするエネル...。
私は神であり、ビルカでは一番強かったが昔からエネルも強かった。しかし、こんな姿のビルカを見てここまでの力があったなんて全く知らなかった私は恐怖を感じてしまった。
案の定、エネルを目の前にして何も通用しなかった。まだ夜ならよかったんだ...エネルはわかっていた。日中の私が無力であることを...月が出ていなければ人間と同じだということを...。
そして、片方の翼はエネルの雷によって撃ち落とされた。
そう...その後...!!!
私はその後の事を思い出し怒りのせいか体が熱くなった。
...エネル...あいつに!!!!
あんなキスをされたのは初めてだった。もう嫌だ...
どうして私を殺してくれなかったのよ...
変な爪痕を私に残して消えたエネル。
ビルカは破壊され、片方の翼は無くなった私にはもう何も無いのに...
膝を抱えて何処かもわからない草原で一人涙を流した。
突然一人ぼっちになって しまった私は本当に寂しくて死にそうだった。
黙ってエネルについて行けばよかったのか...なんてそんな考えが頭をよぎったが、あんな奴について行く気は全くない。
こんなことにならなければ...エネルを嫌う必要も無かったのに。