変化ーchangeー

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俺は十番隊隊長の日番谷冬獅郎だ



冬獅郎「松本ぉーーー!!」



いきなりの怒鳴り声で悪いとは思うが、叫ばずにはいられない



十番隊副隊長の松本乱菊が、また仕事をサボってやがるからだ



楓「ぴゃあ!?」



冬獅郎「ん?」



楓「ビックリした・・・」



冬獅郎「あぁ、悪いな。霜月(シモツキ)



こいつは霜月(シモツキ)(カエデ)



俺の幼馴染だ



今は五番隊の第三席で、隊長・副隊長代理もやってる



なんでそんな役割やってんのか?



今の五番隊が、一番壊されてて不安定だからだ



護廷十三隊、五番隊隊長だった藍染惣右介の裏切り



同三番隊隊長、九番隊隊長の市丸ギンと東仙要も同様に裏切った



藍染に心も体も傷付けられた五番隊副隊長にして、俺のもうひとりの幼馴染・雛森桃



雛森は今、四番隊で治療中・・・休隊扱いだ



つまり今の五番隊は、三番隊・九番隊よりもキツい状況にあった



副隊長である吉良と檜佐木がいる三番隊九番隊は、まだあの2人でどうにかできる



だが霜月は違う



副隊長の雛森がいないからだ



だからここ最近のこいつがバタバタしてるのを、俺達はみんな知ってる



こいつは統率力はあるし、人望もある方だ



だから俺はそんなに心配してない・・・五番隊に関しては



必要なら他の隊長や副隊長に自分から声を掛けて、ちゃんと自分で助けを求められるタイプだからな



俺が心配してるのはもっと別の事



こいつは自分自身を助けてほしい時は、なかなか言えない質だ



昔からそうだった、なんでもひとりで溜め込んでた



そのくせ泣き虫で、弱虫で・・・



いじめの対象になった時も、俺が割り込むまでずっと耐えてるような馬鹿だ



そんな霜月が死神になったって聞いた時は、本当に驚いた



おまけに優秀で腕が立つ



他の隊から勧誘を受けても断ってたっけな



十番隊も断られた・・・



楓「また、乱菊さん?」



冬獅郎「少しはお前を見習ってもらいてぇな、松本には」



楓「あはは・・・」



冬獅郎「で、お前は何しに来たんだ?」



楓「十番隊への提出書類、持って来たんです」



冬獅郎「ああ、そうか。って、その書類の期限、まだ先じゃねぇか。急がなくていいって言っただろ」



楓「隊長も副隊長もいないからって、甘えられないですから。大変なのはどこも一緒だし、五番隊だってしっかりしなきゃ」



冬獅郎「霜月・・・」



楓「ん?」



冬獅郎「・・・・・・霜月は・・・姉貴はそれで良いのか?」



そう、本来なら俺は歳下だ



姉と弟みたいな関係で、俺達は育ってきた



冬獅郎「大変だろ?色々。手伝える事があるなら、なんでもやるから・・・言え」



楓「・・・ありがとう、冬獅郎くん」



照れ臭くて、それを隠そうとしたら上から目線な言い方になった



でも霜月は、それもお見通しだと言ってるみたいに・・・笑ってくれた



俺は姉貴の・・・楓のこの笑顔が好きだ



他の奴になんか見せたくないくらい



けど、こいつは他の奴の前では営業スマイル・・・まあ、つまりは愛想笑いだけだ



それでも、顔だけならモテそうだけどな



でも姉貴は、残念な事にモテない



笑顔は可愛い、普通に



俺が見張ってなきゃ告白されまくってパニクってるだろうくらいには



性格も悪くないし、女子力も高い



それでもモテない理由は、単純明快



地味だから



おまけに左眼には白い眼帯、前髪を伸ばして隠してる



灰色がかった黒髪と、翡翠の右眼



左眼は絶対に出したがらない



いじめられていた原因のひとつだからだ



大丈夫だって言ってんのに・・・



俺は好きだ、綺麗だから



でもやっぱり地味だ



松本の奴は会う度に言う



「あんた今日も地味ねぇ、相変わらず」



もはや口癖と化してんな、あれは



霜月本人も笑って誤魔化すだけだ



髪はそこそこの長さがあるのに、別に結い上げたりしてるわけじゃない



松本じゃねぇが、オシャレって言葉を知らないのかってぐらいには地味だ



苦し紛れで良い言い方をすれば、シンプルってとこだ



この人は自分を着飾るって事をしないし、たぶん知らない



勿体ない、とは思う



けど俺は女のファッションとかには、どっちかって言うと疎い



かと言って松本に任せたら最後、真逆の状態になり兼ねない



姉貴は露出とかは苦手だからな



けど、そんな地味な姉貴を変えた奴がいた



いや・・・正確には、これから姉貴を変えていく奴が現れる



残念な事に、これは俺と楓の物語じゃない



そいつと楓の物語だ



俺はただの、臆病な傍観者



冬獅郎「あ、そうだ。霜月、悪いがお前も付き合ってくれないか?」



楓「付き合うって・・・何にですか、日番谷隊長?」



俺が姉貴か楓以外で呼んだ時は、仕事の話だ



だから楓も、俺を隊長と呼ぶ



冬獅郎「現世だ。死神代行の事は覚えてるか?」



楓「あぁ、黒崎一護くんだっけ?覚えてるけど・・・彼がどうかしたんですか?」



冬獅郎「破面(アランカル)と接触した」



それだけで察したらしい楓の表情は、一瞬で真剣なものになった



冬獅郎「正直に言う・・・・・・俺だけであいつらを統率できるとは思えねぇ」



楓「【キョトン】へ?・・・あの、一応聞くけど冬獅郎くん?一体誰が行くのかな?他」



冬獅郎「朽木と阿散井。松本、斑目、綾瀬川だ」



楓「うん、大変だね。お姉ちゃん同情するよ」



さっきまでの真剣さはどこへやら、だ



冬獅郎「あいつらの引率は(ホロウ)より手を焼く」



楓「うん、もはや統率じゃなくて引率になってるよ。言い方」



この、先遣隊への誘いが鍵だった



俺が誘わなければ・・・



楓「承りました。引率、ご同行致します」



冗談っぽい口調で、お前がOKしなければ・・・



お前の隣にいたのは、あいつじゃなかったかもしれない・・・そう、思ってもいいのか?



けど俺は、お前には幸せになって欲しいから・・・



互いがちゃんと想い合えてるのなら・・・それでいいと思う
 

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