奇跡ーmiracleー
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五番隊隊舎
雛森「水無月三席、いらっしゃいますか?」
シーン・・・
雛森「もう・・・入りますよ?」
返事が返ってこない部屋に向かって、一言断りを入れる五番隊副隊長・雛森桃
戸を開けるとすぐに目に入ったのは、ソファで読み物をしている同隊第三席・水無月咲桜
眼鏡を掛けた彼女は知的に見える
一瞬見惚れてしまった雛森だったが、すぐに頭の中を切り替える
咲桜「あ」
手に持っていた本が取り上げられ、思わず声を上げてしまった咲桜
顔を向けると、そこにいたのはムッとした顔の雛森
雛森「水無月三席、聞こえてましたか?」
咲桜「す、すみません」
雛森「ハァ・・・いいですよ、もう慣れましたから」
そう、彼女は趣味や読書を始めると集中してしまい、基本的に周りの声が聞こえなくなる
時間を忘れて没頭してしまう事もあるため、仕事を片付けた後か非番の時にしか集中しないようにしてきた
だがつい、のめり込んでしまう
特に読書は
・・・と、以前にも似たような事があったが、この癖は未だに健在だ
雛森「普段は真面目な仕事人間!な、水無月三席ですからね。別に少しくらい、そういった可愛いところがあってもいいとは思いますけど」
咲桜「・・・雛森副隊長、私のどこが可愛いのでしょうか?」
雛森「無自覚なのも三席らしいです」
咲桜「???」
雛森「まあいいです。それより、藍染隊長が呼んでますよ。各隊への書類提出を手伝って欲しいって」
咲桜「わかりました」
現五番隊隊長・藍染惣右介
彼に頼まれ、咲桜は各隊への提出書類を持ち、回っていた
二番隊
咲桜「失礼します。五番隊第三席・水無月咲桜です。二番隊宛ての書類を届けに参りました」
砕蜂「咲桜か。構わない、入れ」
現二番隊隊長・砕蜂が招き入れる
砕蜂「言えば大前田にでも取りに行かせたんだがな・・・」
咲桜「一応、彼は副隊長ですから」
砕蜂「なぜ私の誘いを断るんだ?お前なら、副隊長職は適任だろう。いや、そもそもお前程の人なら、隊長になっていてもおかしくない」
彼女がここまで人を評価するのは、かなり珍しい
だからこそ、砕蜂が言いたい事は咲桜にも十分理解できた
咲桜「他の隊からも、お誘いを受けていますし・・・その中からひとつを選ぶなんて事は、私にはできません。それに・・・五番隊にいる事に、今の私には意味があるんです」
砕蜂「お前、まさかまだ・・・」
咲桜「・・・それだけじゃないの。やりたい事がある。それができるのは、五番隊だけだから」
砕蜂「・・・・・・私が隊長になる前の口調で、お前が話す時は・・・余程の事だとわかっている。だから止める気はないが・・・無理だけはするな」
咲桜「ありがとうございます、砕蜂隊長。では、私はこれにて」
砕蜂「今日は早いな?いつもみたいに茶でも飲んで行けばいいのに」
咲桜「他の隊へも行かないといけなくて・・・なるべく、早くに終わらせたいんです。それでは、失礼致します」
そう言って出て行った咲桜
ふと、砕蜂は思い出す
砕蜂〈そういえば、今日は・・・〉
三番隊
吉良「わざわざすみません。一言頂ければ、僕が取りに行ったのに」
咲桜「それ、本日2度目です・・・いいんです。私は三席ですから」
吉良「敬語なんてやめて下さい。確かに立場上は僕が上になってしまいますが、経歴では水無月三席の方が先輩なんですから」
咲桜「普段はそうするわ。でも今は職務中ですから」
吉良「・・・本当に真面目ですね、水無月三席は」
ギン「さーくーらーちゃーん!なんや、遊びに来てくれたん?」
咲桜「いえ、書類を届けに来ただけです」
ギン「きっぱり言わんといてや、寂しいやん」
咲桜「松本副隊長に告発しますよ」
ギン「・・・咲桜ちゃんが言うとシャレにならんから、やめといてくれん?」
咲桜「冗談です」
ギン「・・・いや、本気なんか冗談なんかわからんて」
咲桜「では、私はこれで」
ギン「おっとと」
終始冗談めかした口調の、三番隊隊長・市丸ギンに書類を押し付ける
そのまま立ち去る咲桜の背中を、ギンは副隊長の吉良イヅルと見送る
吉良「・・・今日はまた、早いですね?水無月三席」
ギン「ホンマやね・・・あぁ、そうやった。今日は確か・・・」
六番隊
白哉「兄の手を煩わせてすまなかった。次からはこちらから取りに向かわせよう」
咲桜「あの、白哉隊長。なぜ皆様そう仰るのでしょうか・・・?立場としては私が下なのですから、これくらい・・・」
白哉「・・・」
咲桜「はい、あの・・・すみません」
白哉の無言の圧に負けた
恋次「・・・何してんスか?」
咲桜「阿散井副隊長」
恋次「恋次でいいっスよ。って、咲桜さんが書類持ってきたんですか?言ってくれれば俺が取りに行ったのに」
咲桜「いや、あの・・・立場的に下のはずな私が、なぜそのような扱いを?」
恋次「100年以上死神やってる大先輩だからっスね。みんな頭上がんないんですよ。おまけに強ぇし。あんたの斬魄刀の始解、誰も見た事ねぇし」
咲桜「別に、大した事じゃあ・・・それに、それを言うなら総隊長と卯ノ花隊長、京楽隊長と浮竹隊長の方がもっとすごいと思いますが?」
恋次「いや、あれは別次元だろ」
咲桜「別次元なんだ?」
白哉「ところで、兄はのんびりしていてもいいのか?まだ他の隊へも赴くのであろう」
咲桜「あ、そうでした。では、これにて失礼致します」
恋次「別にあそこまで急がなくても・・・」
白哉「恋次。今日が何日か忘れたのか?」
恋次「え?今日は・・・あ」