奇跡ーmiracleー
□３
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五番隊隊舎
藍染「水無月三席」
シーン・・・
藍染「・・・ハァ、入りますよ？」
返事が返ってこない部屋に向かって、一言断りを入れる藍染
戸を開けるとすぐに目に入ったのは、ソファで読み物をしている咲桜
眼鏡を掛けた彼女は知的に見える
一瞬見惚れてしまった藍染だったが、すぐに頭の中を切り替える
咲桜「あ」
手に持っていた本が優しく取り上げられ、思わず声を上げてしまった咲桜
顔を向けると、そこにいたのは苦笑した藍染だ
藍染「水無月三席、聞こえてましたか？」
咲桜「す、すみません」
藍染「いいですよ、もう慣れましたから」
そう、彼女は趣味や読書を始めると集中してしまい、基本的に周りの声が聞こえなくなる
時間を忘れて没頭してしまう事もあるため、仕事を片付けた後か非番の時にしか集中しないようにしてきた
だがつい、のめり込んでしまう
特に読書は
藍染「きちんと仕事はして下さるので、僕も隊長も何も言う気はありませんよ。ですが、これから式典ですので」
咲桜「・・・それ、総隊長命令とは言え、私も参列してよろしいのでしょうか？」
藍染「そもそもあなたは、実力を見込まれて、隊首会への出席も許可されているじゃないですか。上が良いと言っているのですし、経験としては損しないと思いますよ」
咲桜「それは・・・まあ・・・」
藍染「では、隊首室に行きましょうか」
咲桜「あ、はい」
藍染「ご準備よろしいですか、隊長？」
平子「おう、ええで！入っても！」
藍染「失礼します」
咲桜「失礼します」
入室した藍染を見ると、平子はつまらなさそうな顔をする
平子「んぁ？なんや、フツーのカッコやんけ。お祭りやぞ？キラキラのカッコで来い言うたやろ、惣右介」
藍染「隊長こそ、普通の格好じゃありませんか」
平子「俺はええねん。隊長やから」
咲桜「それ、理由になってません」
藍染「僕だけ面白い格好させようとしても、駄目ですよ」
咲桜「そもそも、今日は祭りではなく式典です。お間違えの無いように」
平子「お祝いやからお祭りみたいなもんやろ？」
藍染・咲桜「違います」
平子「ハモんな！」
藍染「ところで隊長。さっきから流れている、この音楽はなんですか？」
平子「現世の新しい音楽や！ええやろ？」
藍染「よくわかりません」
平子「ほななんで話振ったんや？」
咲桜「私は好きですよ？なんとなくしかわかりませんが」
藍染「水無月三席、あまり共感しないで下さい。隊長が調子に乗りますから」
平子「乗ってへんわ！」
実はちょっと乗り掛けた・・・
咲桜「なんでもいいですけど、早く行きますよ」
一番隊隊舎
平子「もしもーし！五番隊隊長の平子真子ですけどぉ！？誰か開けてんかー！しっかし、一番隊舎はいつ来てもごっついなぁ。緊張してまうわ。しゃーから俺ここ来たないねん」
藍染「それが緊張している人の顔ですか？」
咲桜「とてもそうは見えませんけど」
藍染「式典が面倒だからって、駄々こねないで下さい」
平子「うるさいなぁ！そっちから顔見えへんやろ、お前ら」
藍染「開きましたよ、入って下さい」
平子「わぁっとる−−」
ドカッ
咲桜「あ」
中に入ろうと、後ろを振り返っていた平子が正面に向き直った瞬間だった
両足の裏が顔面に直撃し、彼は後方に吹き飛ばされた
右斜め後ろにいた藍染と、左斜め後ろにいた咲桜は巻き添えを食らう事はなかった
ひよ里「オッス、ハゲ真子！今日もペタンコで踏みやすい顔しとんなぁ！」
平子「ひよ里！お前コラァ！」
ひよ里「なんやねん！？謝らへんぞ！」
平子「まだなんも言うてへんやろ！」
ひよ里「ほんなら余計謝らんでもええって事やな？」
ゴンッ
ひよ里「んが！？」
咲桜「あ」
後ろから脳天に拳骨を食らったひよ里
彼女に拳を食らわせたのは、七番隊隊長・愛川羅武だ
羅武「ちゃんと謝れ、ボケェ！全く、オメェは・・・」
ひよ里「何すんねん羅武！？お前余所の副隊長の頭ド突いてええと思てんのか！？」
羅武「隊長がいねぇんだ。誰かが面倒見ねぇといけねぇだろ」
ひよ里「ガキみたいに言うな！あんな奴になぁ！謝る必要なんかないねん！見てみぃあの顔！腹立つわぁ！」
羅武「わかった、わかった」
受け流すように言うと、羅武は強制的にひよ里を隊舎の奥に引っ込ませた
それを復活して追い掛けた平子が、入り口で変な顔をして見送る
藍染「隊長もやめて下さい。隊員達の前ではしないで下さいよ、そんな顔」
咲桜〈やり取りが子供ね・・・〉
呆れた視線を向ける咲桜だが、すぐに気持ちを切り替えた
咲桜「さあ、私達も行きますよ。平子隊長」
平子「なっ、ちょっ！？おい咲桜！」
右手を掴まれると、容赦なく引っ張られて隊舎の中へ
その後ろを、藍染が苦笑しながらついて来た