奇跡ーmiracleー
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浮竹「ん?水無月じゃないか」
咲桜「浮竹隊長。おはようございます」
浮竹「あぁ、おはよう。風邪で倒れたと聞いたけど・・・もう大丈夫なのかい?」
咲桜「はい。1週間も空けてしまって・・・平子隊長には申し訳ないです」
浮竹「ははっ。彼はそんな事、気にしないと思うけどなぁ。けどまあ、そこは君らしいな」
咲桜「実は既に本人から言われてしまいました」
浮竹「あはは!だと思ったよ」
咲桜「ところで浮竹隊長。珍しく出掛けられてますが、どうかされたんですか?」
浮竹「実は、隊舎でよく飲むお茶が切れてしまったんだ。今日は体調もいいし、散歩がてら買い出しにと思ってな」
咲桜「隊長自らですか?」
浮竹「ん?ああ」
咲桜「よく誰からも止められませんでしたね」
浮竹「言ってないからな」
咲桜「笑顔で言う事ではないと思います」
浮竹「そう言う水無月は何を?」
咲桜「私も買い出しです。五番隊の方もお茶っ葉が切れてしまいまして」
浮竹「そうか、偶然だな。そうだ!良かったら一緒に行かないか?」
咲桜「一緒に、ですか?」
浮竹「水無月は確か、紅茶という物に詳しかっただろう?少し教えて欲しいんだ」
咲桜「はぁ・・・まあ、構いませんけど」
浮竹「よし!じゃあ行こうか」
咲桜「あ、はい」
先に歩き出してしまった浮竹を小走りで追い掛け、斜め後ろを歩く
浮竹「水無月。折角だから、隣を歩かないか?」
咲桜「え?あ、でも・・・」
浮竹「確かに、隊長と三席と立場は違うが・・・俺は気にしない。むしろ、もう少し気楽に接してくれて構わない。護廷十三隊という立場を除けば、俺達の立場はそう変わらないんだからな」
彼が言っているのは、家柄という立場の事だ
同じ下級貴族同士なのだから、あまり気を遣わなくていいと
彼はそう言ってくれているのだ
咲桜「・・・」
少し悩むような顔をした咲桜だったが、歩調を早めると隣に立った
それを見た浮竹は満足そうに微笑むと、肩を並べて茶屋へと向かう
浮竹「・・・・・・水無月。実はひとつ、お前に話があるんだ」
咲桜「私に話、ですか?なんでしょうか?」
浮竹「・・・・・・十三番隊に、来る気はないか?・・・副隊長として」
咲桜「え?」
浮竹「前々から、考えてはいたんだ。ただ、その・・・水無月は、出世話は断ってばかりいると聞いていたから」
咲桜「私なんかよりも、もっと相応しい人がいますから」
浮竹「海燕もそう言っていたな」
咲桜「あの人こそ副隊長になるべきかと」
浮竹「俺も声を掛けてはいるんだが、何度も断られてしまってな。俺の中では、水無月も副隊長になるべき人物だと思ってるんだ」
咲桜「・・・・・・」
浮竹「無理にとは言わない。だが、考えておいてくれないか?」
咲桜「・・・一応。とだけ、お答えしておきます」
浮竹「そうか」
平子「浮竹隊長、おはようさん」
浮竹「あぁ、平子隊長!おはよう」
平子「こないだはどーもな。咲桜が世話んなったわ」
浮竹「え?」
平子「茶っ葉、一緒に買いに行ったて聞いたんやけど」
浮竹「あぁ、その事か。いや、むしろ俺が世話になったかな。紅茶について色々と聞いてしまったから」
平子「それはそうと、咲桜がなんやめっちゃ悩んだ顔して帰ってきてん」
浮竹「悩んだ顔?」
平子「心当たり、あんねやろ?あんましうちの三席、困らせんといてや。あぁそれと、浮竹隊長でも咲桜は簡単にはやらんでな。覚えとき」
浮竹「え・・・」
平子「やぁっと手に入れたんやで?簡単に他所になんかやるわけないやろ。ほなな」
キョトンとした浮竹をそのままに、平子は言いたい事を言ってこの場から去った
浮竹「・・・・・・なんだ、やっぱりもう自覚していたのか。彼は」
そう、浮竹も平子が無自覚の恋をしていたのは知っていた
だが咲桜が無自覚の乙女のままだと言うのにも、彼は気付いていた
彼女を異性として見ているわけではないが、気に入っているのは本音だ
浮竹「嫉妬か・・・若いなぁ」
京楽「浮竹ぇ、発言がオジサンくさいよぉ」
浮竹「京楽か。いやぁ、平子隊長が嫉妬したみたいだから、つい・・・」
京楽「嫉妬?あぁ、彼女、誘ったのかい?」
浮竹「ああ。うちの副隊長になる気はないかってな」
京楽「あぁ、それで彼が嫉妬したと・・・僕も誘いたいけどねぇ、咲桜ちゃん。可愛いし、綺麗だし、仕事も出来るし」
浮竹「・・・お前こそ彼の嫉妬と言う名の怒りを買いそうだな」
京楽「ははっ、そいつは勘弁だなぁ。おっと、よくよく考えたら、リサちゃんからも怒られそうだよ。怖い怖い」
これはとある日の、とある平和な日常と会話だ
平和な日常と会話が、崩される事を・・・まだ知らない者達の