劇場版&番外編

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「(一刻も早く解除して風見と合流しなくては…)」



安室さんが珍しく焦りを顔に出している。

それだけ切迫した状況であることは間違いない。

ここ数日休む暇もなかったのか、緊張の糸が切れてしまいそう。



「おっと!」

「!」

「危ない危ない…コイツが光ったらアウトだ」



汗もかいている。

傷に沁みてしまうかもしれない。



「安室さん、大丈夫ですか?」

「えぇ、心配かけてすみません」

「いえ。それよりちょっとだけこっち向いてください」

「?」



振り返った安室さんの額をハンカチでそっと拭う。

あまり強くすると傷に響くかもしれないから。

きょとんとした彼の顔が間近にあって…ちょっと可愛いかも。



「…ありがとうございます。落ち着きました」

「それなら良かったです!」

「僕もまだまだですね。…焦りは最大のトラップだったな」



誰かの口癖だろうか?

聞いたことはないはずの言葉。

なのにその言葉を聞いた瞬間、思い出せなかった彼の名前が浮かんできた。



「松田…」

「(やっぱり…)」



安室さんが呟いた名前と、私が思い出した名前が一致した。

私は会ったことがないけれど、話に聞いていた人が安室さんのお友達だったなんて。

一瞬だけあの寂しそうな表情を見せた後、安室さんは再び作業に取り掛かった。



彼の背中にそっと手を当てる。

人肌の体温が安室さんを安心させてあげられたらいいな。



その時、突然視界が真っ暗になった。



「何っ!?」

「え!?」

「離れるな◇◇!」

「は、はい!」



恐らく組織の仕業だと思う。

少し目が慣れてきて安室さんの姿は分かるけど、これじゃ爆弾の解体なんて…



「くっ…肝心なところで視界を奪われた」

「頼りないかもしれないけど、スマホの明かりで…」

「いや。それだと奴らに気付かれる可能性がある」

「あ、そっか…」



人為的に行われた停電だとすると、復旧まで時間がかかるかもしれない。

どうしよう…。



「◇◇、絶対に僕から離れるな」

「安室さん?」

「貴女をこんな危険なことに巻き込んでしまうとは…」



悔しそうな顔をしているけど、私にはその意味がよく分からない。

だって



「安室さんが居ても居なくても、私は危険なところによく居合せるので」



安室さんがそう言ったんでしょう?

彼に笑ってみせた。

だから安室さんのせいじゃないし巻き込まれたなんて思ってない。



コナン君達と出会って間もなく、彼らは事情を知った私を遠ざけようとした。

それを嫌がって皆と一緒に居ることを選んだのは私自身だから。



「だからこそ、安室さんが助けてくれるんですよね?」



ちょっと意地悪な言い方かもしれない。

けど彼は苦笑いしながら"参りました"と手を挙げた。

しかしこの状況

案の定なかなか電気は復旧しないけど、どうしたらいいのか。



その時、上の方から大きな物音した。



「え、何!?」



上を見ると、建物に穴があいて月明かりが入ってきた。



「何があったか分からないがこれなら」

「良かった、手元が見える」

「(集中しろ。焦らず慎重に。そして急げ)」

「安室さん…」

「◇◇、さっきと同じようにしててくれ」

「さっき?」



ふと浮かんだのはさっきの私の行動。

そっと安室さんの背中に手を当てる。



「ありがとう、◇◇」





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