神様の気まぐれ
□第2話
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「またお会いしましたね」
翌日、いつも通りポアロの前を通るとまた会った。
「こんにちはお兄さん、今日もイケメンですね」
「からかわないでくださいよ!」
「(生で台詞が聴けた!)」
「よろしければ寄って行きませんか?」
「お誘いありがとうございます。でも今日は予定があるのですみません」
そのまま立ち去ろうとしたとき、背後でとてつもない大きな音と悲鳴が聞こえた。
反射的に振り向くと、大きなトラックがポアロ近くのビルに追突している。
血が流れて
「ぁ…っ」
「貴女はここに。梓さん、彼女を頼みます」
音を聞きつけて店から出てきた梓に◇◇を任せ、安室は現場に走っていった。
梓に促されるまま、店内へ避難する。
出してくれた水を飲むと、少し落ち着いた。
「ありがとうございますお姉さん」
「大丈夫ですか?」
「お陰様で。怖かったですけど距離が離れてたし」
その時、安室が現場から戻ってきた。
警察と救急車が来たからもう大丈夫だとのこと。
「まだ顔色が良くないですね。車で送ります」
「はい!?いや、あの、大丈夫です!」
「梓さんすみません後をお願いします」
「はい、気をつけてくださいね」
有無を言わさず車へ強制連行。
ナビをしながら自宅マンションまで送ってもらう。
「大分顔色も戻ったみたいで良かったです」
「お手数おかけしました…」
「いいえ。ご存知かと思いますが僕は安室透と言います」
何故ご存知かと思ったのか。
◇◇は思わずはぁ…とため息を吐いた。
「もう既に調べてらっしゃるでしょうけど、◯◯◇◇です」
「えぇ、よろしくお願いします◇◇さん」
嫌味で返すもののあまり意味がなかったらしい。
想定内ということだろうか。
「単刀直入にお尋ねしますが、貴女は何者ですか?」
「安室さんが期待するような人間じゃないことだけは確かです」
「ホォー…僕がどんな期待をしていると?」
同じ米花町内だ、車で送ってもらえばすぐに自宅に着いた。
◇◇はシートベルトを外すが話の途中で逃げる気はない。
それよりも生ホォーを聴いてしまったと内心大暴れである。
「お酒の名前も持ってなければ、警察官でもないってことですよ」
安室の表情が一気に険しくなった。
さすがにそこまで知られてるとは思ってなかったか。
「強いていうならファンですね!」
「……は?」
「降谷さんという方が幸せになる日を心待ちにしている数多の女性のうちの一人です」
お礼を言って車を降りた。
呆気に取られた安室の顔も可愛いかったと上機嫌の◇◇。
通称『安室の女』たちはみんな彼が幸せであることを望んでいるだろうと思う。
自宅に戻っていく◇◇を呆然と見つめる安室。
しばらくするとRX-7の姿はなくなった。
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