神様の気まぐれ
□第2話
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米花百貨店の件からしばらく。
◇◇はあれ以降、通勤途中にポアロ前を歩くようにしていた。
本心を言えばウェディングイブに起こる悲しい事件は起こさせたくなかったが
「でも、あの事件がいつ起こるかなんて分からないし…」
「そうだな。あたしも◇◇にケガなんてしてほしくない」
「◆◆こそ、危険な所に突っ込んで行ったりしないでね」
事件が起きた後ならば、原作の知識から対処も出来るだろう。
だが以前にも言った通り、この世界の時間軸は全く読めない。
ならば無茶はせず、やりたい事を出来る範囲で頑張ろうということになった。
それは◇◇と◆◆が二人で決めたこと。
お互いを大事に想うからこその約束だった。
今日も仕事終わりに1人でポアロの前を通る。
窓から中を見る前に、店の扉が開いた。
出てきたのは、先日見れなかった素顔の彼。
「…っ(降谷さ…いや安室さんだカッコいいー!)」
「あ、すみません驚かせてしまって」
「…いえ、こちらこそ」
ペコっと頭を下げて彼の前を通りすぎる。
「今日は僕の名前を呼んでくれないんですか?」
◇◇が驚き目を見開く。
先日、名前を呟いたのが聞こえていたとは到底思えない。
絶対に声が届く距離ではなかった。
だとすると、唇を読んだということか。
「初対面だと思いますが、どこかでお会いしましたか?」
「…。いえ、勘違いのようですね。失礼致しました」
「いいえ。それじゃ」
安室の鋭い視線が背中に刺さる。
誤魔化されてくれたわけではない様子だが、ひとまず解放してくれたから良しとする。
「調査を頼みたい人物がいる。任せたぞ、風見」
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