桜の鷹
□第3部
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「だーかーらー!◇◇さんは誰狙いかって聞いてんの!」
「ちょっと由美ってば、いい加減飲み過ぎよ」
どうしてこうなった。
遡ること数時間前
観覧車の爆発事件から再びオープンした杯戸ショッピングモールで買い物をしていた。
そろそろ帰ろうとしたとき、非番が重なったという佐藤刑事と由美さんにバッタリ遭遇。
先日は失礼な態度を取ったと2人から謝罪され、気にしていないことを伝えて和解(?)したところまでは良かった。
何故か、この後飲みに行こうという流れになり今に至る。
うん、間違ってない。
「ほら白状しなさい!」
「いやー…そう言われても」
「やっぱ松田くん!?」
「え!?いやほら松田くんは…」
チラっと佐藤刑事の方を見る。
意図が伝わったようで彼女はニッと笑った。
「あら。私はもう吹っ切れてるわよ?」
「そっかー……え?吹っ切れ…?」
「えぇ。誰かさんは何も言ってないみたいだけど」
えぇ何も聞いてませんとも!
まぁ私に報告するのもおかしな話か。
萩原くんの生存が、松田くんを変えたのかな?
あの2人やっぱ両想いなの?
下らない思考に進んでいると、酔って真っ赤な顔をした由美さんが「幼馴染が好きなの?」と聞いてきた。
出会った経緯でも話したんだろうか彼は。
「質問に答えなさいよー!誰が好きかを訊いてんのよ!」
ぷんすこと効果音が付きそうなくらいお怒りな由美さん。
困ったな…。
「今はまだ恋愛まで頭回らないかなぁ…」
「なぁに言ってんの!いい男はすぐ持ってかれちゃうんだから早く見つけておくに越したことないわよ」
「でも私まだ社会人3年目だし、今までは仕事にがむしゃらだったというか…」
嘘ではない。
けれど一番の問題は、次に来るだろう伊達くんの件。
彼の事故が起きるまであと少し、気合いを入れなくてはならない。
皆には生きていてほしいんだ。
とはいえ恋愛をする気がさらさら無いということでもない。
好きな人が出来れば話も変わってくるだろうけど、あくまで今現在の私の優先順位の問題。
「確かに働き始めて1〜2年ってわりとがむしゃらよね」
「じゃあ今度◇◇さんも合コンに誘うか…ら、ね…」
「おぉマジか。寝ちゃった…」
「ったく由美は〜〜」
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