桜の鷹

□第1部
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「そういえば…」

「ん?どうしたの零くん」

「◇◇の将来の夢って聞いたことがなかったな」

「そういえばそうだね。◇◇、何かなりたい職業ってないのか?」

「それよ!それが定まってたらここまで悩まないんだよ!」



そうだろうな、と言って2人は笑った。

いや笑い事じゃないんだなこれが…。



正直に言うと、興味があるものはある。

けれどその職業に就きたいかと問われれば微妙なところで。



「いいじゃないか、何が気になってるんだ?」

「あれ、私ってばついに心の声を全く制御出来なくなってる?」

「全部顔に出てたよ。やりたいことがあるけど言えないーってね」

「そんな分かりやすい顔してるの!?」

「いいからほら、何がしたいか言ってみなって」



「……工学部に、ちょっと興味ある」



時々遊びにいく阿笠博士の発明を見て遊んで

あぁ…この技術があれば将来零くんを独りぼっちにしない手助けが出来るかも…なんて。



「へぇ意外だね。いいんじゃない?」

「あぁ。むしろ何が引っかかってるんだ?」

「勉強したいなってだけで、別にそれを仕事にしたいかというと…なんとも言えなくて」



それを言うと、零くんが私の頭を撫でた。

ん!?



「なにも工学部を目指したからって職業を決めないといけないわけじゃないだろ」

「そうだよ◇◇。学びたいっていうその意欲が大切なんじゃないか?」

「まずは家族に相談してみていいと思うぞ」

「うん。それに、工学部ならオレたちと同じ大学目指せるよ?」



なるほど…そうか。



「零くんとヒロくんのことばかり見てたからつい進路=職業って考えてたけど、言われてみるとそうじゃないよね」



そう言うと、なぜか2人は少し照れたようにそっぽを向いた。

なぜ?

…でもちょっと待って、2人と同じ大学って



「無理無理無理!絶対無理だって!2人とは頭の出来が違いすぎる!」

「あと2年、死ぬ気でやればいけるだろ」

「◇◇だって普段から勉強頑張ってるし大丈夫」

「いや、あの、他の友達からも同じ学校とか勧められててね?その中から工学部探すって手も……やっぱ何でもないです」



見る見るうちに零くんの笑顔が冷えていき、ニコニコしてたヒロくんの目がうっすら開かれていったのでそれ以上言うのはやめた。



「物覚えわるいよ?ちゃんと勉強教えてくれる?」

「当たり前だろ」

「うん。一緒に頑張ろう」





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