短編&リクエスト

□H
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◇◇は薄暗い部屋の中に放置されていた。

ここはテナントビルの中。

手足はロープで縛られ立ち上がることも出来ない。

部屋のカーテンからわずかに漏れる光がオレンジ色に輝いている。

時刻は夕方になっていた。



ふと扉の開く音がする。

◇◇がそちらに意識を向けると、入ってきたのは例の男だった。

拳銃を構え、子どもたちの命を脅しの道具に使って◇◇をここへ連れてきた張本人。



しかし今、男が持っているのは拳銃ではなく手のひらほどの瓶。

中には液体が入っている。

そしてもう片方の手にはガスマスクのようなもの。



「オレが誰だか分かるよな?」



数ヶ月ほど前に現れた、帝丹小の児童ばかりを狙う変質者。

当然そんな事件を放置できない少年探偵団。

毎度のことながら止めても聞かず、コナンや哀とともに捜査をして逮捕された男だった。



「お前達があまりに憎らしくて調べたら、オレが捕まった原因がお前だと分かった。その"目"だ」

「……」



何をどうやって調べたかは知らないが、人とは違う視野を持っていることは既に知られているようだ。

変質者相手に怯えを見せるのは逆効果だと考えた◇◇は男を睨む。



「捕まった原因はあなたが罪を犯したからでしょう?人のせいにしないで」

「…うるさい!」



ガスマスクをつけて瓶を持ち直す。



「拳銃で頭ブチ抜いてやっても良かったんだけどな。どうせならその目から潰してやるよ」



人体に硫酸をかけるなんて、理科の実験でも出来ないもんな?



狂気じみた男の発言に、◇◇も焦りを感じた。

じりじりと窓際に逃げる。

が、手足を縛られていては思うように動けず窓を突き破って逃げることもできない。

一歩…また一歩…男が近付く。



「(もうだめ…っ)」



男が瓶を振りかざしたのが見え、ぎゅっと目を閉じる。

次の瞬間



ガラスの割れる音と、小さな破片が降りかかる感覚。

そして男の叫び声がこだまする。



「◇◇!!」

「◇◇さん大丈夫!?」



扉を開けて入ってきたのは安室とコナンだった。

その声におそるおそる目をあける。

目の前には硫酸の瓶が割れて右手をおさえてのたうち回る男。

◇◇の頭上にあった窓ガラスが割れ、少量の破片が自分に降りかかっているのが見える。



「◇◇!怪我は!?」

「れ…安室さん…大丈夫です」



小型のナイフでロープを切る。

硫酸が広がる部屋に長居は出来ない。

割れた窓を全開にして、扉をあけたまま部屋を出る。

先に出ていたコナンが救急車と警察を呼んだようだ。



「◇◇さんごめん…あの男…」

「コナン君が謝ることじゃないよ。それよりも助けに来てくれてありがとう」



安室さんも。と目をやれば、笑って◇◇の髪を撫でた。

ガラス片がパラパラと落ちる。

着ていたジャケットを脱いで◇◇に渡した。



「服についた破片で怪我をしてはいけませんから。これを着てきてください」

「でも安室さんの上着が…」

「大丈夫ですから、さぁ早く」

「…じゃあお言葉に甘えて。ありがとうございます」





男は救急車で運ばれ、高木刑事からの事情聴取も無事に終わった頃。



「そういえば、どうしてあの瓶割れたんでしょうか?」



コナン君のサッカーボール?と聞けば、安室の顔が渋くなった。

それを見た◇◇は納得する。



『無事でなによりだ』

「赤井さん。ありがとうございました」

『偶然にも君があの男を窓際に誘導してくれて助かったよ』



無駄な手間が省けた、と。



「◇◇、お礼を言ったならもう電話はいいでしょう」

「え、あ、ちょっ!安室さん!」

『君の前では安室君も形無しだな』

「赤井さんには負けます…」

「じゃあボク(ある意味)疲れたから赤井さんと帰るねーばいばい」

「コナン君!放っていかないでー!」










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