短編&リクエスト
□G
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『金が浮くに越したことないだろ?』
『あんまり強情だと可愛げがねぇな』
『明日また来る。ガキじゃねぇんだ。それまでに覚悟決めとかねぇとどうなるか分かるよな?』
あまりにしつこく自分じゃ対処しきれないと思っていた矢先のこと。
こんなことならもっと早く零さんに相談しておけば良かった。
…あとの祭りなんだけど。
仕事から帰ったばかりのこの時間。
零さんに電話しても大丈夫かな?
否、忙しいかもしれないから先にメッセージを送って…。
ピンポーン
もんもんと考えていたらチャイムが鳴った。
「こんばんは」
「安室さん…!」
部屋に入ってもらって早々、焦る私を落ち着かせるために抱きしめてくれた。
今連絡しようとしてたところだと伝える。
「接触事故?」
「10日ほど前に…。職場の備品買出しに出たときに自転車で男性とぶつかってしまって」
「◇◇に怪我は?」
「私はかすり傷程度で、もう治りました。…でも」
その場で警察を呼んで病院に行ってもらおうとしたけど、男性は大丈夫だと言って帰ってしまった。
けれど翌日、職場の近くで待ち伏せされていて"首が曲がらなくなった"と言ってきたのだ。
「それは…」
「治療費は払うと言ったんです。でもその人、金は要らないからって交際を迫ってきて…」
零さんの表情がどんどん険しくなっていく。
「もちろん断りました。でもずっとしつこく付き纏ってきてて…」
「脅迫紛いなことまで言い出した、と」
「…はい」
「何故すぐに相談しなかったんだ。最後に会ったのは5日前だぞ。電話もメッセージも出来ただろ」
「ここまでしつこいとは思わなくて…。さすがに今日はもう、と思っていたら零さんが来てくれたから」
はぁ…とため息をつく零さん。
「まぁ今回はちゃんと相談する気があったみたいだからいい」
「ぅ…いつもいつもごめんなさい」
「とにかく。男が待ち伏せしてるのは退社後なんだな?」
「はい。帰宅途中に、時間や道を変えても絶対鉢合わせするんです」
「となると会社を出てからつけられてる可能性があるな」
「ホークアイで見ても、いつもどこから現れてるのかわからなくて」
「明日は僕が迎えにいく。仕事が終わったら絶対に会社の入口で待ってろ」
「はい…」
大丈夫だと言って頭を撫でてくれた。
零さんの手は安心する。
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