短編&リクエスト
□No.5
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「私を誘拐犯から助けて下さったと聞きました。ありがとうございます」
「当然のことをしただけですよ」
◇◇にお礼を言われる度に返し続けてきた安室の言葉。
少しでも思い出すきっかけになればと思ったが無駄に終わったようだ。
脳神経外科でも異常はなし。
結局精神科ではショックによる一時的なものだろうという診断しか得られなかった。
「(落ち着け。今一番不安なのは彼女だ。何があっても僕が必ず…)」
「あの、安室さん?」
「あ…すみません。どうしました?」
「不躾なんですけど、安室さんとは友人だったんでしょうか?さっきのボクも」
安室としても必ず来ると分かっていた質問だ。
が、いざ◇◇の口からその言葉が出るとーー
「僕は…」
「◇◇さん!蘭姉ちゃん連れてきたよ!」
「あ、ボク…じゃなかった。コナン君?」
「失礼します」
コナンと蘭が病室に入ってくる。
蘭は以前、精神的ショックにより記憶を失ったことがある。
近しい人間であり同性でもある蘭に任せるのがいいと判断したらしい。
「◇◇さん…」
「えっと、蘭さんでいいのかな?」
「呼びやすいもので大丈夫ですよ。私たち友達なんです」
「…私の交友関係って年齢幅広かったんだね」
ポカンとしている◇◇に対して蘭はクスクス笑っている。
その様子にほっとした安室とコナンはこっそり病室を出た。
「安室さん。◇◇さんに付き合ってること言わないの?」
「あぁ。記憶がなくて彼女も不安だろうからね」
「安室さんはそれでいいの?」
仕方ないね、と安室は笑った。
そうかもしれないけど…とコナンが顔をしかめたとき、蘭が病室から出てきた。
「蘭姉ちゃん、◇◇さんは?」
「少し疲れたみたいで眠ったよ」
「蘭さんありがとうございます」
◇◇を起こさないように病室を離れ、3人で院内のカフェに入る。
「蘭さんも記憶喪失になったことがあるとコナン君から聞きましたが」
「はい」
「どうやって記憶を取り戻したんですか?」
「テレビに映ったトロピカルランドに見覚えがあって、そこでーー」
蘭は過去の事件と記憶を取り戻した経緯を簡潔に説明する。
しかし戻った最大のきっかけは事件現場と酷似した犯人の言動だった。
安室は、もう二度と◇◇に榛沢の顔を見せたくない。
何か他に
「安室さんと◇◇さんは思い出の場所とかありますか?」
「そうですね…。まだ付き合い始めて間もないですし」
探偵業と組織、なにより公安の仕事をこなす安室の事情を知るコナンも頭を悩ませる。
「お互いのマンションにはよく行くんだよね?」
「そうだね」
「やっぱり退院しないと始まらないですよね」
今日一日は検査のため病院を出られないが、明日は退院となっている。
蘭に◇◇を任せ、明日からの行動のため安室は帰っていった。
「◇◇さんはもちろんだけど安室さんもコナン君も辛いよね」
「うん…。蘭姉ちゃんは大丈夫?」
「うん。絶対、◇◇さんの記憶取り戻してみせるんだから!」
明るい笑顔の蘭に、コナンも顔を上げる。
失くしたものを探し出すのは探偵の本業。
明日から◇◇の宝探しが始まる。
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