短編&リクエスト

□No.4
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部屋に入ったと同時に◇◇を床へ押し倒す。



「零…さん?」

「さっきの男はなんだ」

「え…。え!?う、浮気じゃないですよ!?」

「そんなことは分かってる」



それでも男と2人きりで楽しそうにしているのを気分良く見てられるわけないだろう。

そう続ければ、泣きそうな顔で小さくごめんなさいと謝ってきた。



「違う、悪い。怖がらせたいわけじゃない」

「れいさん…」

「ははっ、いや。今日はダメだな。帰るよ」



押し倒していた彼女から退く。

玄関へ向かおうとする僕の背中にしがみつく◇◇。



「待って!行かないでください…」

「怖がらせておいて言うのも何だが、君を傷付けるようなことはしたくない」

「思ったこと言ってくれて良いんです!そんな弱い女じゃないです!」

「◇◇…」

「勘違いさせるような状況だったのは、本当にごめんなさい」



◇◇は勘違いだと言うが、あの男は"あわよくば"と言っていた。

少なくともあの男にはその気があったとしか思えない。

そう告げると、◇◇は首を横に振った。

話を聞いて欲しいというので、改めて座って話を聞く。



「さっきの彼は高校時代の友人で、元男子バスケ部の部長なんですが…」

「うん」

「彼は、私を自宅に呼んで…」

「…うん」

「私と恋人を会わせたかっただけなんです」

「………うん?」



◇◇と恋人を会わせる?

曰く、こうだ。



あの男の恋人は、◇◇の友達。

◇◇が仲を取り持って2人は付き合い始めたのだと。



「それで"あわよくば"とは言わないだろ」

「いわゆる脳筋というやつでして…その…国語が少々…いやかなり…」

「……」



下を向いて大きなため息を吐く。

その時、頭に触れた優しい感触。

彼女の手だ。



「なでなで…私いつも零さんにされると落ち着きますけどどうですか?」



なでなでってお前…。



「怒らないのか?」

「?何でですか?」

「嫉妬して、お前を怖がらせた」

「怖かったのは笑ってるのに目が笑ってない安室さんの顔だけでしたよ」



そうだ、彼女は他人の表情に敏感だった。

クスクス笑う彼女の呑気さといったら。



「嫉妬してくれるのも、傷付けたくないっていうのも、零さんの気持ちが分かって嬉しいです!」



そうだ、この笑顔が僕をいつも癒してくれる。

この素直さが僕を救ってくれる。

◇◇をベッドに転がし、僕も横になって彼女を抱き締める。

擦り寄ってくる彼女が愛おしい。



「零さん唇切れてる。大丈夫ですか?」

「大したことはない」

「でも痛そう」

「じゃあ…癒してくれるか?」



優しい彼女のことだ。

リップクリームでも用意してくれるかもしれないが、今離す気はない。

そう思って瞼を閉じた途端、傷口にペロリと当たる感覚。

思わず目を見開いた。

そこには、小さく舌を出した◇◇の顔。



「あ、ごめんなさい。嫌でした?」

「そうじゃなくて…お前…いつもそんなこと…」

「えっと…愛情表情…みたいな?」



恥ずかしそうな顔は、すぐに僕の胸に擦り寄って隠れてしまった。



「…足りない」

「え!?」

「もっと。ほら早く」



催促すればまたおずおずと舌で傷口を舐める。

チリっとした感覚すら甘く感じる僕は重症かもしれない。

彼女の後頭部を抱えて、そのまま口付ける。

舌を絡めながら僕の口内の傷も舐めさせた。

いつのまにか僕の意識は途切れ深い眠りについていた。










おまけ。



「なでなで…落ち着きます?」

「うん」

「なでなで…」

「…zzz」

「(なんで頭撫でる時"なでなで"って言わされてるんだろう)」



しばらく降谷さんがやみつきになりました。










→あとがき
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