短編&リクエスト
□No.4
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ポアロのバイト後に本庁での仕事を終えた。
夕日は沈み、夜が始まりを告げている。
車に乗り込み自宅までの道を走る。
昨晩はあまり眠れなかったため仕事も普段ほど捗らず疲弊していた。
「◇◇のところで寝るか…」
今までは一人で深く眠っていた。
疲れていれば尚のこと。
だが、◇◇の傍で眠る心地良さを覚えてからはそうもいかない。
マンションに戻りスーツからラフな服に着替え、再び車を走らせる。
彼女に会うためなら無理にでも体が動く自分に笑いが込み上げた。
信号待ちの間、ふと景色を見渡した先に◇◇の姿。
大通り沿いにあるカフェの窓際に座っている。
外は暗く、店内が明るいため姿がハッキリと分かった。
ちょうど良いから一緒に帰ろうと思ったその瞬間
「…は?」
心の呟きが思わず声に出てしまった。
◇◇の目の前に座る男。
楽しそうに談笑する2人。
「いやまさか…。◇◇は浮気が出来るような人間じゃない」
頭では分かっていても、疲れた心が正常に機能しない。
乱暴な気持ちを抱えたまま気付けば車をカフェに向かって走らせていた。
店内に入ってすぐ、汗をかいているフリをしてタオルを頭から被る。
好きな席へどうぞと言われ、◇◇から少し離れた席へ。
帽子では万一彼女の視野に入ってしまっときに気付かれてしまう。
尾行するにもされるにも優秀な能力だとつくづく実感した。
女性客が数組話しているだけで◇◇達の声は掻き消される。
彼女達に背を向けて座っているため唇を読むことも出来ない。
時々盗み見る様子では、相変わらず楽しそうに談笑するばかりだ。
自分の下唇を噛んでいることに気付いたのは血の味が滲んでからのことだった。
「(このまま店内に居ても意味がないな…)」
会計を済ませて店を出ると、入口から少し離れた店の柱にもたれかかる。
さっきまで吹き飛んでいた疲労が一気に襲いかかってきた。
何をしてるんだ僕は。
疲れているんだ、帰って寝ればいいだけだ。
彼女を抱き締めて眠りたかった。
このまま引き返して…万が一にも…
思考はそこで止まる。
店の扉が開き、◇◇と男が出てきた。
「付き合ってくれてありがとな」
「私も楽しかったよ!」
「あのさ、この後…」
男が何か言おうとしたが、その先は聞きたくなかった。
◇◇の肩をぐっと引く。
「え…あ、安室さん!?」
「あれ?もしかしてさっき言ってた彼氏?」
「こんばんは。ダメですよ◇◇、夜遅くに出歩いちゃ」
ニコっと笑って"安室"を作り上げる。
だが肩を掴まれた◇◇は怯えた表情を見せた。
なんだその反応は
「あー…あわよくばって思ったけど迎えが来たなら辞めとくわ」
じゃーなーと言って去っていく男。
"あわよくば"とはどういう意味だ。
ふざけるな
呑気に手を振る◇◇を車に連れ込む。
彼女の家に着くまで一言も喋らなかった。
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