短編&リクエスト

□中
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気付けば洞窟の入り口にいた。

背後にはさっき私が溺れた海の景色が広がってる。

私、助かったの?

ここは間違いなくあの海だけど、岸から見たときは岩場だけで洞窟なんてなかった。

しかもさっきまで快晴だったのに、今は大雨。

海も荒れ果てて、まるで大きな台風が来ているみたい。



ーー無くなってしまった…

ーー探しに行かないと…





ーーーーー



◇◇さんを助け出し、僕たちは急遽旅館へと戻った。

医師に診て貰ったところ怪我もなくあとは回復を待つだけだと言われたため、彼女を布団に寝かせる。

蘭さんと園子さんにその場を任せ、部屋を出ることにした。



「(気になることがある)」



意識を手放しても、何故か◇◇さんが力強く握りしめていた髪飾り。

今もそれを持ったまま彼女は眠っている。

あれは一体何なんだ



「お客様の容体は如何ですか?」



部屋を出た僕に、旅館の女将が話しかけてきた。

大丈夫だと伝えれば安心した様子。



「今は安静にして眠っています。どこから拾ってきたか分からない髪飾りを握ってるんですが」

「…髪飾り?」

「髪飾りが何か?」

「あ、いえ。ここには昔から海神様の祠があるんですが…」



女将曰く。

岸から見える大きな岩場には洞窟があり、その奥にある祠には海神様の髪飾りが祀られているという。

恋人から贈られたとても大切な髪飾りだという言い伝えがあるらしい。

しかし、その洞窟の入り口が何故か先日あった大雨の日以来無くなってしまったという。

入り口が塞がれたわけでもなく、最初から入り口などなかったかのように。



そんな非現実的なことがあり得るのかーーー



そこまで考えて、自分の思考を否定した。

◇◇の能力も、彼女と知り合う前の僕にしてみれば非現実なものだ。

自分の目で見て確かめよう。



「そういえば小舟に乗った女性の噂が流れ始めたのもちょうどその頃で…」

「なるほど…」

「あ…お客様が大変なときにこんな話…申し訳ございません」

「いえ。ありがとうございます」

「安室さん!◇◇さん目を覚ましたよ!」

「コナン君。すぐ行くよ」



女将と別れ、再び部屋に戻る。

僕と入れ違いに蘭さんと園子さんが出ていき、コナン君は彼女たちについていった。

布団から起き上がった◇◇が困ったような申し訳なさそうな顔でこちらを見ていた。





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