短編&リクエスト

□お散歩
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「カノン!ちょっと待って!」

「アンッ!」



日中は気温が高かったため、待ちに待った夜のお散歩にハイテンションのカノン。

夏は日が沈んで間がないこのくらいに散歩する。



お気に入りの公園に到着すると、珍しく先客が居た。

ペコっと頭を下げて公園内を歩き始めると、小さなワンちゃんが走り寄ってきた。

カノンが反応するようにその子の方へ走りだす。



「きゃっ!?」



転ぶことはなかったけど、油断していた私はカノンの力に負けて自分も引きずられる。

カノンとその子は合流したところでじゃれ合っていた。



「ハロ!驚かせちゃダメだろう。…すみません」



ハロと呼ばれたワンちゃんを叱る金髪の男性。

さっきは遠目で分からなかったけど、イケメンさんだ。



「いえこちらこそ!ほらカノン、ご迷惑でしょうやめなさい」

「…その子、カノンという名前なんですね」

「あ、そうなんです。クラシックCDを流してるといつも上機嫌で」

「ハロも音楽が好きですから、仲良くなれたのかもしれませんね」



未だにじゃれ合っているカノンとハロ君を見つめる。

なるほど、この子たちの間で通ずるものでもあったということか。

最近は散歩時間が被らないから他のワンちゃんとも遊べてなかったし嬉しいんだろうな。

ひとしきり遊んだところであまり遅くなるわけにもいかず、カノンに声をかける。



「カノン。そろそろ帰ろうね」

「カノンちゃん、遊んでくれてありがとう」

「ハロ君、また会えたらカノンと遊んであげてね」



お互いのワンちゃんを撫でる。

金髪のお兄さんにペコっと頭を下げて挨拶をして公園を離れる。

カノンは寂しそうだったけど、頭を撫でてあげたら機嫌が直った。

はい、うちの子は今日も可愛い。





数日後

用事を済ませたところで暑さに負けてふらりと立ち寄った喫茶店。



「いらっしゃいませ…おや?」

「あれ?ハロ君のお兄さん?」

「貴女はカノンちゃんの。お一人様ですか?」

「はい」

「ではこちらのカウンターへどうぞ」



アイスコーヒーを注文する。

ハロ君のお兄さんは、あの有名な毛利探偵のお弟子さんらしい。

探偵という馴染みのない職業に関心してしまった。

彼がスッと名刺を差し出してくれた。



「安室透と言います。僕自身も私立探偵をしてますので良かったらどうぞ」

「◯◯◇◇です。ありがとうございます」



他にお客さんが居なかったため、そこからは他愛ない話をした。

安室さんはまだハロ君を飼い始めたばかりだということ。

オススメ散歩コースを訊かれたり。

探偵というだけあって話し上手な彼とは緊張せずに会話が弾んだ。



「◇◇さん、今日もあの公園に?」

「はい。カノンのお気に入りなので」

「それならハロを連れて行きます。先日と同じ時間でいいですか?」

「本当ですか?カノン喜びます」



お会計を済ませてお店を出た。

自宅に戻ってカノンに声をかける。



「良かったねカノン。またハロ君と会えるよ」

「アンッ!」



これがハロ君とカノン、安室さんと私の出会いだった。





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