第1章
□第6話
1ページ/2ページ
ある日、阿笠博士から連絡があった。
少年探偵団が『子ども防犯プロジェクト』のパンフレットのモデルに選ばれたらしい。
けれど例によって哀ちゃんを写真撮影に参加させるわけにはいかない為、子どもたちをビートルで警視庁まで送ったあと仮病を使って哀ちゃんと帰る算段らしい。
コナン君が居るから大丈夫だろうとも思ったが念のため保護者として子ども達についててあげて欲しいと言われ、二つ返事でOKを出した。
そして撮影当日
子どもたち3人はビートルから降りてさっさと警視庁の入り口まで行ってしまった。
引率の意味とは。
「◇◇さん、悪いけどあの子たちのこと頼んだわよ」
「すまんのぉ」
「大丈夫だよ。気を付けて帰ってね」
簡単に挨拶を済ませて、コナン君と歩く。
「そういや◇◇さん、最近日中によく会うけど仕事はどうしたんだよ」
「あぁ、出張中ほとんど休みが無かったから今は代休取ってるの」
「一ヶ月ずっと働いてたのか!?」
「まぁね。でも代休取れることが分かってたから」
出張先で休みがあっても遊ぶ友達居ないしね、と続けると呆れ顔をされた。
解せん。
子どもたちに追いつくと、まだ高木刑事は来ていない。
代わりに見慣れないおじいさんが去って行くところだった。
「ん?何だよあの人」
「高木刑事の知り合いみたいです!」
「それより博士と灰原は?」
「博士が風邪で辛そうだったから、哀ちゃんつけて先に帰ってもらったよ」
「じゃあ灰原さん抜きですか…残念です」
光彦君が残念がっていると、一人の男性が私たちに近づいてきた。
「僕も残念だよ。せっかく噂の阿笠博士に会えると思ったのにね」
「あ、安室さん…」
「やぁコナン君。◇◇さんもご一緒だったんですね」
「こんにちは、安室さん」
安室さんの話によると、先日の誘拐事件のことで再度事情を聞かれて警視庁に来ていたらしい。
今思い出しても肝が冷える…。
苦笑いしていると、安室さんが私に近付いてきた。
「◇◇さんにも怖い思いをさせてしまいましたし」
「いえそんな!先日も言いましたけど大丈夫です。それよりちゃんとお礼を言えてなかったですよね」
「お礼?」
「コナン君を助けてくれて本当にありがとうございました!」
あの時はなんだかんだでお礼を言いそびれていたことに気付き、次会った時にはちゃんとお礼を言いたいと思ってた。
連絡先はもらったけど、依頼でもない個人的なことで連絡するのは何となく憚られた。
だから今日会えたことは非常に嬉しい。
ただそれが安室さんには予想外の発言だったのか、頬を掻きながら笑顔でどういたしましてと返してくれた。
安室さんって照れることあるんだ。
私の横からコナン君もありがとー!と元気よくお礼を言った。
気付けば子どもたちは少し離れたところに居て、コナン君もそっちへ向かう。
「ところで安室さん、事情聴取は終わったんですよね?」
「えぇ。まぁ別の用もあったんですけど」
「?」
「気にしないでください。もう用は無くなりましたから…」
振り返って去ろうとする向こう側で、先日とはまた違う顔。
何だろう、険しい表情なのに酷く寂しそうな…
「あ、安室さん!」
「はい?」
こちらを振り返る彼はいつもと同じ彼だった。
私が余程切迫詰まったような表情をしていたのか、怪訝な表情を浮かべる。
どうしよう何も言うこと考えてないのに呼び止めちゃった…!
一人でわたわたしていると、彼が小さく笑った。
「そうそう。別に困ったことがなくても連絡してきてくださいね」
「…え?」
「連絡先を渡したのに反応がないのは、案外寂しいものなんですよ?」
そう言って今度こそ彼は去っていった。
呆然としてると、いつの間にか傍に来ていたコナン君が私の腰を肘で突いた。
「◇◇お姉さん、さっきのお兄さんのこと好きなの?」
歩美ちゃんから爆弾発言が投下。
どうしてそうなった。
コナン君、ニヤニヤすんな。
「いやいや今日で会うの2回目の人を好きになるとかおかしいでしょ」
「でもイケメンさんだよー?」
「私、顔が良い人ってあんまり信用してないから」
彼の推理力や行動力は尊敬するけどね。と当たり障りない答えを返しておいた。
どうやら高木刑事に連絡がつかないらしく、コナン君が佐藤刑事に連絡する。
.