第2章
□第31話
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勘違いのせいで起きてしまった悲しい事件だったけど、被害者が命を落とさなくて本当に良かったと思う。
大積さんが連行されるのを見守っていると、平次君が大声を上げた。
「早よ錦座四丁目に行かな!」
「行くんは錦座やない、東京駅や!」
「か、和葉!?」
「和葉ちゃん!」
「早よ行かんと帰りの新幹線に乗り遅れてまうで!◇◇さんもごめん!」
平次君の告白は一体いつになることやら。
それぞれが事件後の事情聴取を受けている間、すでに終わった私は蘭ちゃんのところへ。
「蘭ちゃん、イルミネーションどうだった?」
「すっごく綺麗でしたよ!」
「そっか、じゃあ新一君と見られなかったのは残念だね〜」
「いや…そういう◇◇さんは安室さんと行かないんですか?」
「◇◇さんさえ良ければこの後行きますか?」
会話に入ってきたのはいわずもがな安室さん。
そんな人が集まる場所に彼を連れていくのはどうかと思う。
第一、何時までやってるかも分からないので今から向かうと終わってるかもしれない。
それを伝えれば彼もそうですかと言って戻っていった。
時間も遅いので、帰りは安室さんが送ってくれることに。
助手席に乗って雑談をしていると、少し寄りたい場所があると言われた。
しばらく車を走らせると、先ほどまで話題に上がっていた錦座四丁目のイルミネーションだ。
「ちょ、安室さん?」
「あと20分くらいなので人も少ないですし、夜のデートも悪くないでしょう?」
エスコートされるまま車を降りて、手を繋ぎ歩く。
こんなにロマンチックなデートが出来るなんて思ってなかった。
綺麗な景色に見とれていたら20分なんてあっという間。
もうすぐ消灯の時間だ。
「安室さん、消える瞬間のカウントダウンしましょう!」
彼が頷いたのを確認し、街にある大きな時計を見る。
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「「ゼロ」」
暗くなる街並み。
そのとき、彼の首にキスをする。
触れたのは一瞬。
自分からこんなことが出来るようになるなんて、私も図太くなったもんだ。
くるっと彼に背を向けて、歩いてきた道を戻る。
が、背中からぎゅっと抱き締められて動けない。
「…せっかくなら口にして欲しかったです」
「私の身長では届かないです」
「言ってくれればいつでも屈みますよ」
「恥ずかしいからそれは嫌!」
サプライズデートが嬉しかったから舞い上がったテンションでやったことだ。
冷静になって今同じことをしろと言われれば絶対に無理。
「仕方ありませんね…今日は◇◇さんのお誘いを受けるとしましょう」
「……ん?」
「首筋へのキスの意味を知っていますか?」
何か嫌な予感がする。
首筋へのキスの意味ってどこかで聞いたことがあるな…確か
「執着…とかでしたっけ?」
「えぇ。でも女性から男性へ首筋にキスする場合、誘惑の意味もあるそうですよ」
「!?」
「とりあえず今日は僕の家へ帰りましょう」
「ちが、だから首にしたのはただ身長の問題で…っ」
反論していたらくるりと後ろを向かされ、口を彼のそれで塞がれた。
離れた唇はそのまま私の手首へ。
「男が手首へキスするのは欲望の証です。逃がしませんからね」
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