第2章

□第29話
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翌日

阿笠邸に遊びに来ると、鈴木相談役がキッドに挑戦状を叩きつけたことが話題になった。

キッドが来るなら私も行きたい。

なんだかんだでミステリートレイン以来会えていなかったのだから。



「ホォー…三水吉右衛門ですか」

「あれ、沖矢さん?」

「今回はじっくり煮込んだ肉じゃがをおすそ分けに」

「何?あなたも行きたいの?」

「いえいえ。これを置いて退散します。怪盗の類には関心がないので」



美味しそうな匂いがする。

有希子さんが教えたり、私もちょっとお手伝いしたことあるけどどんどん料理が上達している気がする。

安室さんといい赤井さんといい、イケメンが料理出来るともはや非の打ち所がない。



「もっとも物ではなく命を奪う輩には多少興味はありますが…」

「もう夏なのに相変わらずのハイネック…なんなのあの人」

「冷え性なんじゃろ」

「あははは…見てるだけで暑そうだよね」



会場についてしばらくすると、毛利さんたちも到着。

問題の箱をこじ開けようとする様子を冷や汗もので見ていたらスマホが鳴った。

安室さんからだ。



「はい」

『◇◇さん、今少しいいですか?』

「大丈夫です。どうしたんですか?」

『明日から三日間、ポアロを休むことになりました。連絡も返せないと思いますので伝えておこうと思って』



組織絡みか、それとも公安のお仕事なのかは不明だ。

連絡がつかないことで私が心配しないように配慮してくれたらしい。

心配しないは無理だけど、事前に言ってくれているだけありがたいものだ。



「分かりました。無茶するな…って言ってもダメでしょうから、元気に帰ってきてくださいね」

『大丈夫です。必ず、あなたのところへ帰りますよ』

「はい」

『ところで今どこにいるんですか?随分周りが騒がしいようですが』

「あ、煩かったらごめんなさい。鈴木相談役と怪盗キッドが対決する会場に…」

『…そういえば以前、キッドを見られず拗ねていたらしいことがありましたね。怪盗が好きなんですか?』



電話口の彼の声が一気に低くなった。



「い、以前キッドに助けてもらったことがあって!そのお礼を直接言いたいだけなんです!」

『つまり怪盗キッドと面識がある、と』

「コナン君がキッドキラーって呼ばれるくらいですし、たまに現場に居合わせるくらいで…」

『まぁいいでしょう。あまり遅くならないうちに帰宅してくださいね』

「はい。帰りは鈴木財閥の運転手さんが送ってくれるそうですから」

『分かりました』

「あっ」



電話を切ろうとした安室さんに思わず声を上げる。

どうしました?と聞かれるけど、なんとなく連絡が取れないと言われると寂しい気持ちになってしまった。



「ご、ごめんなさい。なんでもないです…」

『…戻ってきたらまずあなたの家へ向かいます。ちゃんといい子で待っててくださいね』

「!」



私の気持ちなんてバレバレ。

小さく返事をすると今度こそ電話を切る。

すると阿笠博士が近づいてきた。

いや、違う…彼は



「キッ…」

「おっと。ここではその名は伏せていただきましょう」

「お礼を言うのが遅くなっちゃったね。本当に、助けてくれてありがとう」

「どういたしまして。ま、お礼をしてくれるなら俺のことは今回は内密に」

「随分欲のない盗人さんだね」

「またいずれ、ゆっくりあなたと逢瀬出来る機会を楽しみにしていますよ」





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