第2章

□第35話
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先日壊れたドローンから新しいものを作るという博士。

手伝って欲しいと言われれば断る理由もなく作業を進めていた。



ひと段落して休憩をしていると子ども達が帰ってくる。

サッカーの観戦に行っていたらしい。



「ホォー。スタンドで比護選手に会ったのか!」

「良かったね、哀ちゃん大ファンだもんね!」

「えぇ、とてもラッキーだったわ!」



最近、哀ちゃんの笑顔がとても増えてきて私も嬉しい。

上機嫌な哀ちゃんと子どもたちが盛り上がっている。

それを横目にコナン君にコソっと話しかける。



「(修学旅行のこときちんと相談した?)」

「(あぁ…でもどんな副作用があるかも分からないしダメだってさ)」

「(哀ちゃんがそう言うなら、やっぱり諦めた方が…)」

「(ぜってー諦めねぇ)」



どうやらビッグ大阪が負けて不機嫌な哀ちゃんの機嫌を取ろうと考えているらしい。

哀ちゃんの心配をよそに、蘭ちゃんとの修学旅行しか頭にない彼に思わずため息が出た。

とはいえ、彼も17歳の男子高校生。

蘭ちゃんのことを除いても修学旅行には行きたいだろうから何も言えない。

なんとも罪作りな子。



「そういえばその時の写真撮りましたから見せますね!」

「おお見せてくれ」

「ーって…あれ?録画中になってます!」

「ホントだー!」

「いつからだよ?」



どうやら電車で転んでしまい、スマホを落としてないか確認したときにボタンを押してしまったという。



「電車随分混んでたでしょ、みんな怪我は無かったの?」

「えぇ、みんな無事よ」

「ズボンの後ろポケットなんかに入れとくからだよ」

「どーしてそんな所に入れてたの?」

「灰原さんがそうしてたから真似して…」

「哀ちゃんのスマホは大丈夫?」

「えぇ。ちゃんとポケットに入って…あーっ!?」



珍しく哀ちゃんが大きな声を出した。

どうしたのかと訊ねると、比護さんのストラップがなくなってるという。

涙が滲んでいる哀ちゃんの頭を撫でる。

すると珍しく彼女が抱きついてきた。



「まぁその内ネットでも買えると思うから!」

「もう買えないわよ!」

「どういうこと?」

「あれは今日比護さんが触ってくれた世界でたった一つのストラップだったのよー!」



その悲鳴を最後に、哀ちゃんは意識を手放した。

倒れる彼女を咄嗟に抱きしめる。



「これは…完全に放心してるね」

「おい光彦!スマホで撮っちまったさっきの動画見せてみろ!」

「あ、はい!」



動画には、男性がストラップを拾っている場面が映っていた。

駅員に電話をすると、届けてくれた人が居るという。



「んじゃ米花駅に取りに行って来っから!」



出かけようとしたコナン君に、博士がストップをかける。

預けられているのは千槍駅だというけど、米花からだと随分距離が…



「博士のビートル出してくれよ!」

「それがのォ…」

「ん?」

「博士の車、さっきお友達に貸しちゃって今ここに無いんだよ」

「まぁ焦らんでも後日取りにいけばいいじゃろ?」



私とコナン君は哀ちゃんを見る。

確かに後日でも構わないことだけど、このままでは哀ちゃんがあまりに不憫。





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