GOT7 短編

□あの時から始まっていた…
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一緒のオーディションを受けて2人で受かったあの時から俺達の運命は始まっていたんだ。


練習生としてJYPに入り、レッスンの日々を送っていた。
俺とジニョンは同じ時にオーディションを受けて2人で受かった。
それから、2人で組んで事務所の査定を受ける事が度々あった。



俺はひとりっ子特有の人見知りがすごくて
「ヒョン!」と声を掛けてくるジニョンにいつも戸惑っていた。
ジニョンは人当たりが良く誰とでもすぐに仲良くなる奴だった。
俺は、そんなジニョンが羨ましくもあり妬んでもいた。
ジニョンは、そんな事御構い無しにいつでも俺に近寄って来た。

「ヒョン!なんか食べる?」

「ヒョン!なんか飲む?」

「ヒョン!」「ヒョン!」とそれを嬉しとも思っていたが、受け入れる事がなかなか出来なかった。


日が経つに連れいつしか俺はジニョンを受け入れる事がだいぶ出来るようになっていた。



そんなある日、2人でデビュー出来る事になった。
今まで、一緒に踊って来たジニョンと2人という事でお互いを知っている分正直嬉しかった。
2人で今までやってきた事をフルに出し切ればいいんだと思い、迷いや不安はなかった。
俺達はデビューまでの間無心になって頑張った。

意思疎通が出来ていた分歌やダンスにはなんの問題もなかった。
ただ一つ、2人でのコミュニケーションがまだまだ完璧ではなかった。
ジニョンが歩み寄ってくれても俺の方が苦笑いの様な表情をする事が多かった。
それでも、ジニョンは諦めず俺に接してくれていた。

そのおかげか、いつしかジニョンとのコミュニケーションも自然にとれる様になっていた。

そうなると、俺は自然とジニョンに触れる事が出来る様になった。
デビューをしてからは、2人で行動する事が多くなり昔からの友達の様に過ごす事が増えた。
ジニョンは、笑顔が増え俺もつられて笑顔になる事が多くもなった。



そんなこんなで、何ヶ月か経った頃事務所の人から思いがけない事を言われた。

「今回、2人でデビューしたけどこれからは2人を中心にグループで再デビューをする事になるから。」

「えっ?どういう事ですか?」

「元々は、グループを作る予定だったんだけど2人のパフォーマンス能力を見てメンバーを決めようと思ってね。」

「はあ。」

「やっぱり2人のパフォーマンス能力はすごく高くて下手なメンバーとの組み合わせじゃダメだなって事になってさ、今までにない形のグループを作ろうって事になったんだ。」

「面白そうですね。」

「だろう!もう時期正式にメンバーを紹介する事が出来ると思うからお前ら先輩としてちゃんと面倒みてくれよな。」

「はい!」

俺は、事務所の人の話を聞いて俄然やる気が出ていた。
2人でやるもの楽しかったけど人数が増えてグループとして新しいものを作る事が出来るというのはすごく嬉しかった。

だが、ジニョンには違ったようだった。


グループに入る正式メンバーが決まり俺達は顔合わせをした。
そこにいたのは練習生時代から一緒にやっていた奴らばかりだったので下手に気を使う事もなくすぐに打ち解けられた。
最初の内は俺らが率先してみんなをまとめたり色々な事を教えてあげていた。
最後にメンバーとして入って来たヨンジェも最初は緊張していたが、みんな歳が近い事もありすぐに打ち解けていた。
俺は、先輩としてみんなとたくさん話しをして馬鹿騒ぎをするようにもなった。


最初は、ジニョンもメンバー達とはしゃいでいたが段々とその輪から外れる事が多くなった。

その後、ジニョンは俺のサポートやメンバー達のフォローをする事が多くなり次第に話しをする事が少なくなっていった。


俺は、マンネ達を見て昔のジニョンをよく思い出していた。
ジニョンのおかげで俺は今マンネ達と普通に話す事も出来るし接し方がわかる。
あの時、もっと早くにジニョンと接する事が出来ていたら俺達は何か変わっていたのかも知れないな。

だけど、俺がそう思った時には全てが遅すぎていたのだ。
ジニョンは、今までのヤンチャさがなくなり大人しくなってしまっていた。
俺は、そんなジニョンを見て申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

今思えばジニョンは、俺と仲良くしようと頑張って接してくれていたのに俺はそれに答える事をしなかった。
いや、俺の性格が邪魔をして答えられなかったんだ。

今だって、こんな俺の事を助けてくれている。
それを考えると、なんだか愛おしく思えて俺の心はジニョンでいっぱいになっていた。


ジニョンは、外国人メンバーやマンネの面倒をよく見ていた。
特に、マークは韓国語がまだあまり上手く話せず言葉に詰まる事が多々あった。
そういう時には、決まってジニョンがフォローをしていた。
その為、ジニョンはマークと一緒にいる事が多くなりいつしか2人がカップルのように持て囃されるようにもなっていた。

その姿を見て俺の心はいつも騒ついていた。
マークに嫉妬してしまう事も少なくはなかった。


ある日、楽屋に入るとマークの肩に寄りかかってジニョンが寝ていた。
その姿は、まさにカップルのようだった。
スタッフ達も、2人を見て『可愛い』なんて言っていた。

俺は、何故かイライラしてしょうがなかった。
2人の時は、あの場所は俺の場所だった。

「ヒョン〜!肩貸して!」

「はぁ〜?またかよ。しょうがないな。ホラ」

なんてやりとりが懐かしく思える。
それが今はマークがその場所にいる。
俺は、いてもたってもいられなくなった。




俺とジニョンは先にデビューをしていた事もあり、テレビ局などでの挨拶まわりを一緒にする事が多かった。
その日も2人で局のPDに挨拶に行った。

「よろしくお願いします!」

「頑張ってね!」

「ありがとうございます。」

「2人の時も良かったけど、今回のグループも結構いいね。」

「本当ですか!」

「ああ、そう言えばジニョン?今日はヒマ?」

「えっ?今日ですか?」

「久々に食事に行こうよ。」

「あっ、でも…。」

なんだ?ジニョンの奴PDと食事に行ったりしてるのか?

「わかりました。その代わりジェボムも一緒でもいいですか?」

「珍しいな。いつもはジャクソンが一緒に来るのに。でも、いいよ。」

「ありがとうございます。」

「じゃ、後でね。」

俺達は、PDに一礼して外に出た。

「ジニョン?PDとよく食事しに行くのか?」

「たまに…。」

「いつもは、ジェクが一緒なんだ。」

「うん。あいつ会話上手だしいると安心だから。」

「ふ〜ん。今日は俺でいいのか?」

「うん。ジェクは今日仕事があるから。」

だから、俺か。
安易だな。


収録の後、ジニョンに着いて行き俺はPD達との食事を楽しませてもらった。
そこにいる人達は色々な番組に参加しているスタッフばかりだった。
そこで俺はジニョンやジェクがグループの露出を考えて頑張ってくれていた事を知った。

自分の事を売り込むのだって大変なのに、ジニョンはグループのために頑張ってくれていた。
何だか俺はジニョンの事を甘やかしてやりたくなった。


PDとの食事が終わり俺達は宿舎に帰る道を2人で歩いた。

「ジニョンと2人でこうして歩くのって久しぶりだな。」

「そうだね。グループになってからは初めてだよね。」

「なぁ、お前2人でやってた頃に戻りたいとか思うか?」

「えっ?どうしたの急に。」

「いや、なんとなく。」

「ヒョンを独り占めしてた時に戻りたいって思う時はあるよ。でも今は、みんなでいられて楽しいから…。」

ジニョンが俺を独り占めにしたいなんて…。
確かに今はメンバーが増えた分2人だけでいる事はなくなった。
気づけばいつもメンバーの誰かといて互いに会話すら無くなってしまっていた。

「独り占めにしたい?」

「出来る事なら…。」

俺はジニョンの手を引き脇道の路地に入った。
壁際に行きジニョンを抱きしめた。

「どうしたの?ヒョン?」

「ジニョン、今なら独り占め出来るよ。どうしたい?」

「どうしたい?って…。」

「ジニョンのしたい事していいよ。」

「本当に?」

「ああ。」

「でも、やめとく。」

「ジニョン?」

「僕のしたい事は、ヒョンが嫌がる事だろうから。」

「じゃあ、俺がジニョンを独り占めにしてもいい?したい事しても…。」

「うん。いいよ。」

俺は、またジニョンを抱きしめてキスをした。
唇を離しジニョンを見ると驚いた顔をしていた。

「ヒョン…?どうして…?」

「ジニョンが好きなんだ…。」

「僕を…好き?ヒョン…が…僕を…?」

そう言うとジニョンはポロポロと泣き出した。

「えっ?ジニョンどうした?」

「嬉しい…僕だけが好きなんだと思ってたから。」

「ジニョン!今の本当?」

「えっ?今のって?」

「俺の事を好きって言うの。」

「うん。最初に会った時からずっと好きだった。なんとか仲良くなりたくて一生懸命話し掛けたりしてた。」

「ごめん。そんな事知らなかったからオレ素っ気なくしてたよな。」

「本当に…なんとか仲良くなれたと思ったら今度はメンバー達に持って行かれちゃった。」

「それは、俺も同じだよ。」

「ヒョン?今度は僕が独り占めしてもいい?」

「いいよ。」

ジニョンは俺に抱きつきキスをして来た。

暫くすると、ジニョンの口が開きはじめた。
俺はその隙間から舌を入れ口内を攻めはじめたジニョンからは吐息交じりの甘い声が漏れ、俺を昂らせた。
俺は、ジニョンを離したくなくてずっと抱きしめていた。

「ヒョン?そろそろ帰らないとみんなが心配するよ。」

「ジニョンは、帰りたい?」

「もう少しこのままでいたいけど、僕達がルール違反は出来ないでしょう。」

「確かにそうだよな。」

「それなら、帰って僕の部屋で一緒にいたいな。」

「ジニョン。マジで言ってる?」

「やっぱり、みんながいるからダメかな?」

「いや、言い訳なら考えればいいさ。」

俺とジニョンは繋いだ手をコートのポケットに入れ逸る気持ちを抑えながら宿舎まで歩いて帰った。

今こうしてジニョンと一緒にいられる事は奇跡なのかもしれない。
だけど、俺は運命だと信じたい。
あの時から始まっていた…運命だと…。



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