チキンはぁと何本勝負?

□チキンはぁと何本勝負? 49
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さぁ、お前等の罪の真実を話せ






…が、口に広がったのは血の味でも、脳漿の味でも、脳ミソの味でも無い。加えて言えば、頭蓋骨を砕いた感触も無かった。





ズボッズボボッ



サクサクッ、ザクリ!





仙祥の頭の代わりに口に入って来て砕けたのは、1本、全長215mmもある…ジャイアントポッキー。

プレッツェルの部分が太いので、味のバランスを欠いているかと思いきや、意外にもチョコレートとの調和がとれた、ちゃんとポッキーの味がする、ジャイアントポッキーだった。

そして、良く見ると、見事、其れが22本も、仙祥と黒豹擬きの口に全て、口一杯に、嵌り収まって居る。傍(ハタ)から見たら異様で、過激なポッキーゲームをして居る様な光景だ。





(風鵺)「はぁ〜い、」



(喧花)「其処まで〜。」



(摩耶)「喧嘩、両成敗なの。」





仙祥の絶体絶命の危機を救ったのは、其れまで、完全に空気状態だった女子3人組だった。

ジャイアントポッキーを噛み砕いた瞬間、時間切れとでも言う様に、黒豹擬きの姿が、徐々に小さくなり、元の黒猫擬きの姿に戻る。


其れを見届けるなり、枝折翔とnilが安堵の溜息を吐いた。

と、同時に、仙祥に駆け寄り、口から22本のジャイアントポッキーを、次々に、外してやる。

流石(サスガ)に、人間の噛む力、咬合力(コウゴウリョク)では、全てを噛み砕けなかった様だ。まぁ、そりゃぁ、当たり前の事なのだが。





(?)「ニョッ」





微かに、独特の、小さな舌打ちが聞こえた。

其れが聞こえた瞬間、枝折翔とnilは、仙祥から回収したジャイアントポッキーを、俊敏に投げ付けた。


投げ付けた先は、舌打ちをして、去ろうとする、黒猫擬きの所だった。

黒猫擬きに当たらぬ様、しかし、退路も進路も絶つ為、上下左右に、僅か数pの所に投げ込まれた、ジャイアントポッキーは、黒猫擬きの後ろにある墓石に当たり、粉々に砕けた。





(?)「!」





其れに因り、足を、止めざるを得ない、黒猫擬き。

其のジャイアントポッキーを投げて来た2人へと、キツイ視線を送るが、もぅ、其処から、黒猫擬きが、動く様子は無い。





(喧花)「さてさてさぁて、初っ端(ショッパナ)から説明して貰おうじゃねぇか。」



(摩耶)「口を割って、腹も割るの。」



(風鵺)「That's right!!」(訳:其の通り!)





ついつい癖で、仁王立ちしながら、怒りの威圧感を纏いながら、指の関節をポキポキと鳴らしてしまう喧花。

無表情で、黒猫擬きに近付き、そっと優しく抱き上げ、屈(カガ)んで座って居る男子3人組を、喧花同様、見下ろす摩耶。

首を可愛らしく横に傾(カシ)げながら、指をパチンッ!!と鳴らす、フィンガースナップをして、期待を込めた眼差しで男子3人組を射る風鵺。



そんな一致団結した女子一同に、男子一同は、此れ又(マタ)、何処かで聞いた言葉が、脳裏を過ぎった…。





『女は集まると強い、いやコワイ!?』






諺(コトワザ)の1つに、『雄弁は銀、沈黙は金』とある。

が、しかし、普段は、沈黙のが、高価だが、今回は、雄弁が金と成りそうだ…と、男子達は女子達に気圧されながら、そう悟った。


只、黒猫擬きは、相も変わらず、冷酷的な眼差しで、男子3人組を真っ直ぐ凝視(ギョウシ)し続ける。

しかし、そうして居ながらも、摩耶の腕の中で、抗(アラガ)う事も無く、事の成り行きを見定める様に、大人しくして居て、其れで居て“沈黙は金”を固く守って居た。










―――― ★ ――――











大まかに説明すると……――――、

事の始まりは、幼少期の仙祥の元に、黒猫擬きが“ある物”を届けに来た事から始まる。


其れが原因で、仙祥は、黒猫擬きと、とある契約を交わす事に成る。

1人と、1匹の間に交わされた、謂わば、ギブアンドテイクの契約。


契約内容は、黒猫擬きが“此処(墓場)”に連れて来た偽葬師達の花の鈴を、仙祥が咲かせ、黒猫擬きが“ソレ”を奪う事。

其れを繰り返して居る内に、出会い、協力者と成ったのが、同じ“異端児”と、カテゴリーに分類される枝折翔とnilだった。


理由や、目的は、どうあれ、ソレを、繰り返して来た…と、言う訳である。

言うなれば、彼等は、山賊、海賊、盗賊等に分類される簒奪者(サンダツシャ)だ。





(喧花)「花の鈴?」



(枝折翔)「お前等の添えた花の中心部を見てみろ」



(風鵺)「そんなの、めしべやおしべにとかに決まっt…」



(仙祥)「コレが、そう見えるかい?」





仙祥が風鵺に無理矢理、花立に挿させた花を手に取り、風鵺の目の前まで持って行く。





(風鵺)「!?……?」





咲いた時は、確かに普通の花だった筈なのに、花の中心部には、玉があり、其の銀色の玉には百合の花の絵が描かれて居た。

しかし、何処かで見た様な、そして、懐かしい感じもする。記憶力に優れた脳ミソがそう訴えて来て居るので、まず、間違い無いと判断。





(風鵺)「(しかし、何処で見たっけ??)」





風鵺が顎に手を当て、記憶の糸を手繰り寄せ様と奮闘する中、喧花は自分の墓の所に行き、先刻、ゴールインさせた芍薬を手に取る。

摩耶もワンテンポ遅れて、黒猫擬きを抱えたまま、自分の墓の所に行こうするが、何時(イツ)の間にか後ろに居たnilに襟首(エリクビ)を摑(ツカ)まれ、立ち止まる。


まるで、摩耶が、花の所へ行くのを拒む行動だ。

其の時、摩耶の抱えて居た黒猫擬きの尻尾に埋め込まれた鈴が幾つか、鳴った。

其れを聞いた風鵺は、視線を、花が描かれた玉から、黒猫擬きの尻尾へと移し、見つめる。





(風鵺)「……アーーーー!‼‼」





黒猫擬きの尻尾に埋め込まれて居る、丸い金と銀の玉の数々。

其処には、花の絵が、1つの玉に、一輪だけ、描かれて居り、どれも違う、様々な種類の花が描かれた玉達があった。


先程の男子達の話にあった、奪った“花の鈴”とやらと、何か、関係があるのだろうか?

そして、『其の玉達は、コレクションにでもして居るのだろうか?猫って丸い物、好きだし。』疑問に対して思案を巡らせる風鵺。


しかし、其の思考は、直ぐに、頭の中から、吹っ飛んでしまう事に成る。

其の原因と成る発端は、喧花に因る、考え無しから来る、無警戒で不用心の行動だった。





(喧花)「んだ、こりゃ?」





リーン、と、鈴の音が、鳴る。

喧花が、芍薬の花の真ん中から、玉を取り出すと、其処から音が聞こえた気がした。





(枝折翔)「馬鹿y…ッ」





『馬鹿野郎!』と怒鳴ろうとした枝折翔の言葉は続かない。

玉を取り出した瞬間、ボッ!と音を立てながら、芍薬に、何処からとも無く火が、着火されたからだ。





(喧花)「ぅおぁ!!??」





燃える花の熱さに、思わず驚いて花を落としてしまう喧花。

其の花が地面に着く前に、摩耶の腕の中で大人しくして居た黒猫擬きが、飛び出し、宙を跳ねた。

そして、燃える花に気を取られて居る喧花の手から、芍薬の花が描かれた銀色の玉を口でキャッチして、其の先の地面に見事、着地した。





(枝折翔)「チッ!!」





盛大な舌打ちと共に、黒猫擬きから玉を取り返そうと走り出そうとする…が、





ピキッ



ピキリ





黒猫擬きが、口に咥(クワ)えた喧花の芍薬の描かれた玉に、咬合力を加えると、玉と喧花の顔に、ヒビが入った。

咄嗟(トッサ)に、枝折翔が足を止め、黒猫擬きを睨(ニラ)み、ギリッと、奥歯を噛み締めた。





(喧花)「……あ゙?」



(風鵺)「え?まさか…其の玉と本人って、一心同体的な意味で、繋がってる??」





其の通りだと、黒猫擬きの目が、嗤う。

奪い返そうとしたのに、止まった枝折翔の反応も、風鵺の言葉を立証する、証拠の1つに成る。


流石は、頭の回転が速く、聡明な風鵺だ。

玉のヒビに、喧花の顔にも、同じヒビが入るのを見て、風鵺の頭脳明晰な思考力は、即座に、正解の回答を、導き出した。





(風鵺)「マジでか…。って事は、玉が壊されると、同じ様に喧花たんは……――――、」





此れでは、喧花を、人質に取られたも同然だ。

男子達は勿論の事、女子達も其れが理解出来た。


つまり、形勢が逆転した。

女子達と男子達を、見事、出し抜き、黒猫擬きが優勢になった。


誰も彼も、1歩も動けない。

黒猫擬きが、どう動くのかと、固唾(カタズ)を呑(ノ)んで、見守るしか無かった…――――。










And that's all
(それでおしまい…?)

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