チキンはぁと何本勝負?
□チキンはぁと何本勝負? 46
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花盗人は風流のうち
男子達は、花が咲き誇ると同時に離れ、先程の定位置に素早く戻った。
マジックの様に、手品の様に、突如姿を現した花に呆然とする女子達。
両手で掬い上げる様に持つと、花は簡単に身体から離れた。
そして、手元にある花を、まじまじと、あらゆる角度から見つめる様に検討する…が、何の変哲も無い、只の花だ。
(枝折翔)「ソレを、自分達の墓に供えろ。」
(喧花)「おい、其れよりも、100発ずつ、俺に殴らせろ。許さん!」
ポイッと後ろに花を投げ、手や指をポキポキ、首をコキコキと関節を鋭い音で鳴らすクラッキングをして、殴る気、満々な喧花。
しかし、ちゃっかり、花はスポンっと、仏花や樒(シキミ)等を立てる筒又の花立(ハナタテ)に見事、ゴールインする。
其れを見届けてから、枝折翔はグシャリと花を潰されなかった事に密かに安堵し、反論に移る。
(枝折翔)「おおお、お前だって、こっ酷(ピド)い事、俺に、ししししただろ!!」
(喧花)「世界は俺のルールに従って回ってるから良いんだよ。」
(枝折翔)「何じゃそりゃッ!ふざっけんな!!」
そうして言い合いを始めてしまった喧花と枝折翔。
(風鵺)「“立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花”って言うけど、me達ってそんなにBeautiful Woman?ウフ、ウフフフフ♪」
(仙祥)「フフ…黙って居れば、君は百合の花の様だよ♡」
(風鵺)「百合の花は、ウチには、分不相応(ブンフソウオウ)ってヤツだYO!仙祥っぴの方が、似合ってると思うな♪だから、Present for You♡」(訳:あなたへプレゼント♡)
此方の風鵺と仙祥は、オブラートに包んだ嫌みの言い合いが勃発して居る。
百合の花はと言うと、押し付け合って居る……。。。
(摩耶)「!……あたし、綺麗?」
(nil)「口裂け女の真似してねぇで、さっさとしろよ。」
(摩耶)「あたし、綺麗?」
牡丹を言われた通り、立花に…牡丹は挿せないので、置くと、もう1度、同じ言葉を繰り返しながら、両手をnilに差し出す。
(nil)「残念ながら、べっこう飴も金平糖もボンタン飴も持ってねぇよ。」
何時(イツ)ぞやの時の様に、手を叩き落とされ、収穫ゼロの現実に、シュンと落ち込む摩耶。
其れを無視してnilは、仙祥の所に行き、2人係りで無理矢理、風鵺に百合を花立に挿させる。
(風鵺)「何で自分の墓に、弔いなんぞの花を、捧げねば、ならんのじゃーい!」
(喧花)「…百合って言ったら、俺だよな?だって百合族(GL)だし」
(枝折翔・仙祥・nil)「「「…は?」」」
考え事をする素振りを見せる様に顎に手を当てる喧花。
しかし、口から出されたのは、とんでもない爆弾発言だった。
其の衝撃発言の暴言に、男子3人が口を、あんぐりとさせ、素っ頓狂な声を上げる。
だが、しかし、其れに更なる爆弾発言をする輩(ヤカラ)が現れた!其れは勿論……――――、
(風鵺)「そんな事、言ったら、ウチは薔薇に成るじゃん!薔薇族(BL)なんだからっ☆」
ドドンッ!
以前暴走した…風鵺だ!!
(摩耶)「其れじゃぁ、私は…NLだから…桜か葡萄(ブドウ)?」
更に更に、便乗するのは最後の砦…いや、違った、最後の爆弾、摩耶だッ。
同性愛を、花に例える場合がある。
男同士の恋愛(Boys Love(ボーイズ ラブ)略して、BL)を薔薇。
女同士の恋愛(Girls Love(ガールズ ラブ)略して、GL)を百合。
しかし、摩耶の言った、男と女の恋愛に例えられるモノは厳密には≪無い≫のだそうだ。
強いて言えば、桜か、又は、葡萄と呼ぼうと言う、少々、故事付け臭い案があるらしい。
桜の由来は、薔薇が情熱の赤、百合が純潔の白だから、其の中間のピンクの花を、と言う事らしい。
葡萄の由来は、『薔薇も百合も聖母マリアの象徴する花だから、キリスト教のシンボルでもある葡萄を』と言う事らしい。
(風鵺)「あっはっは、花が咲いたんだから、葡萄は無いだろう摩耶たん。」
(喧花)「桜…桜かぁ…喪花姉様、御免なさい!!」
(摩耶)「…牡丹か桜かぁ〜。どちらかと言うと…、甘い蜜を吸える花が良い。」
(風鵺)「喧花たん、過去の過ちは、過ぎちまったもんは、どうしようもないぜ。大体、姉たまの桜嫌いは昔っからっショ?摩耶たんは相変わらず花より団子だねぇ〜♪」
喧花の爆発発言から次々に投下され、誘爆する爆弾の嵐の数々に付いて行けない男子達は、以前、石碑に戻った様に固まった侭である。
きっと、男が知らない所で、ガールズトークが、実は男からドン引きされる程の酷い事に成って居る実態に気付いた瞬間に、鉢合わせた様な心情に近いに違い無い。
其れに終止符を打ったのはガールズトークの発端(ホッタン)と成った喧花の言動だった。
(喧花)「そう言や、お前等は、どんな花が咲くんだ?」
此の部屋の怪奇現象の1つとでも考えたのだろうか?
枝折翔と襟首を掴み合って居たのを即座に止め、未だに、鈍く固まった侭の枝折翔の服を捲(メク)り、キスを1つ。
(喧花)「あれ?咲かねぇぞ?」
(風鵺)「まさかの女子だけってパターン?」
(摩耶)「不公平。」
喧花の其の言葉に、枝折翔の下腹部を、まじまじ見つめて居る3人は気付かない。
普段なら慌てふためくだろう枝折翔の反応や、本来なら、やんわりと、強制的に、そんな行為を止めに入ろうとする仙祥や、のんびり傍観に浸かるnilの達観が無い事を…。
男子3人の顔から表情が消え失せて居る事を…――――。。。
(喧花)「おい、どう言うこっt…。」
最初に気付いたのは、喧花だった。
男子3人の異様な雰囲気に嫌な予感がした。
其の次に気付いたのは、風鵺だった。
男子3人が此の部屋での“定位置”からズレた事により墓に彫られた名前を見た。
左側から順に、『十 枝折翔』、『壱番合戦 仙祥』、『幻夜庵 nil』。
最後に気付いたのは、摩耶だった。
3人の花立にも、何か、黒い物が挿してある。
喧花が枝折翔の墓に、風鵺が仙祥の墓に、摩耶がnilの墓に近付き、黒い物を、見つめ、そっと手を添える。
(喧花)「……こりゃ、薔薇の花…か?」
(風鵺)「焼け焦げてるYO。こっちは…百合っぽい?」
(摩耶)「可哀想…菫?」
枯れて居るのなら、まだ話が分かる。
自然に枯れたのだろうと、思う事が出来る。
だが、花達は、無残にも、焼け焦げて居た。
男子3人が、やったのだろうか?
いや、違う。
気を失って居た喧花に対して、此の部屋に男子達と同時に着いた風鵺と摩耶は、意識があった。
御墓や骨を調べて居た時も、風鵺は3人にも気を配ってたが、“定位置”から一切、動いた気配は無かった。
じゃぁ、誰が??
思案を巡らせる喧花に、風鵺。
辺りが先程とは打って変わり、静まり返る中、唐突に摩耶が口を開いた。
(摩耶)「『西洋では、薔薇・百合・菫を“花のトリオ”と呼び、薔薇は『美・慈愛』を、百合は『威厳・清純』を、菫は『謙虚・誠実』を表して居ます。そして此の3つの花は、聖母マリアに捧げる花として別格らしいです。』」
(風鵺)「シリアスな雰囲気の中に、いきなり豆知識投入!?」
(喧花)「へぇ、そんな素敵な意味もあるんだな。此れ、お前達の花なんだろ?多分。焦げちまってるけど、良い花じゃん♪」
『意外と似合ってるよ、お前達に』と、曇りの無い、ニカッとした笑顔を向けられた時、漸く男子3人の顔に表情が戻った。しかし、何処か苦し気で、困惑して居る様な表情だ。
(枝折翔)「…げろ」
(喧花)「あ?」
(枝折翔)「花の鈴、抱えて、逃げろ!!」
(仙祥)「枝折翔!」
(枝折翔)「此処は、奴の狩場だ!!」
And that's all…?
(それでおしまい…?)