チキンはぁと何本勝負?

□チキンはぁと何本勝負? 42
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恋“ふらく”なだけに“フラグ”が立つ?

(2)






仙祥の負の気配が、風鵺の御蔭で、一気に弾け飛んだ。











―――― ★ ――――












(仙祥)「今度は、助けられちゃったね。」



(風鵺)「……分かってたんでしょ?」





こうなる事が…と、確信めいた双眸で、仙祥を見つめる風鵺。


風鵺は見抜いて居た。

仙祥のニッコリと笑う笑顔の眼差(マナザ)しの底には、笑みの色の等、一片(イッペン)の欠片(カケラ)も無く、只々、険しさだけだと言う事を…。





(仙祥)「なんのこt…」



(風鵺)「惚(トボ)けなくて良いYO」





風鵺の煩(ワズラ)わしさを、滲(ニジ)ませた断言の言葉。

其れに対して、訝(イブカ)し気と言うよりは、鬱陶しそうに仙祥は眉根(マユネ)を寄せ、真顔に成る。





(仙祥)「………。。。」



(風鵺)「………。。。」





刹那の沈黙。

其れを先に破ったのは、仙祥の方だった。





(仙祥)「チキンの癖に、遠慮無く突(ツツ)いてくるね。」



(風鵺)「度胸あるチキンですから☆」



(仙祥)「『男は度胸、女は愛嬌』の筈だけど?今時は。」



(風鵺)「そんなの臨機応変にデショ?『男は度胸、女は愛嬌』も『女は度胸 男は愛嬌』も。」



(仙祥)「…そうだね。降参だ。其の通りだよ。僕は分かってた。こうなる事をね。でも、まさか過去視をされるとは思わなかったけどね。」



(風鵺)「重苦しい過去の幻影は、心の古傷に、容易(タヤス)く爪を立てて来て、いとも簡単に血を流させると言うしね。皆同じ。仕様が無いさ☆」



(仙祥)「皆、平等…ね。君にもあるの?だったら教えて欲しいな。君だけが知ってるのは不平等だ。」



(風鵺)「う〜ん……其の悩みが無い事が悩み、かな?」



(仙祥)「…本当に?」



(風鵺)「It's for real.」(訳:マジだよ。)





一瞬、姉の姿が脳裏を過ぎったが、気にせず、悟らせずに、答える。

嘘は、多分、無い。自分の事で等、悩んだ事は、1度も無いからだ。





(仙祥)「じゃぁ、君だけが不平等なんだね。」





鞘(サヤ)から解き放たれ、構えられた瞬間の白刃(ハクジン)の冷酷な鋭さ…。

そんな剥き出しの刀身の様な声が、三日月形をした仙祥の唇の中から、風鵺の耳の奥へと、襲い掛かって来て、脳内に、突き刺さる。





(風鵺)「(…あぁ、ウ・ザ・イ・★)」





劣情(レツジョウ)に因り、寄って集(タカ)って、無関係な相手を、叩き落す人は、本当に、うざったい。

そんな習性を身に付け、同類を掻(カ)き集め、巻き込んで、決めた標的に、ストレスを罵声や暴力に変え、其の人物に浴びせ掛ける。

世間では、苛めっ子や加害者と呼ばれる、唾(ツバ)を吐き付け嘲笑(アザワラ)い、自分の不都合や未熟さを棚に上げ、卑劣(ヒレツ)な悪習に染まる人程、胸糞悪い物は無い。





(仙祥)「苦労を知らない君には、分からないだろう?欲して止まぬモノ、祈り願うモノなんて、とうの昔に決まってるのに、只、其の為に得るべきモノが、中々、揃わない。そんな歯痒さも、君は知らないんだね。」





鋭く尖(トガ)った氷の柱の様に固く冷たい声音(コワネ)で間近(マヂカ)で責められても、風鵺の表情には何の色も、温度も無い。





(風鵺)「甘ったれないでYO」





仙祥が語って居る間、無言を貫いて居た風鵺。

しかし、此処に来て、風鵺の態度が一転する。





(風鵺)「確かに、自分の事で悩んだ事なんてないけどね、周りの人達となら、共に悩み、苦しんで、必ず解決して来たYO」





泣き虫だった喪花、独り耐えてる喪花、不器用な姉。

荒れて居た喧花、苦しみ悩んでた喧花、優しい親戚。

コミュ障害の摩耶、心病んでた摩耶、不思議な友人。





(風鵺)「良い言葉をくれて遣るYO。ウチが尊敬するNiceな名言だYO。」





君ができるすべての善を行え、
Do all the good you can,

君ができるすべての手段で、
By all the means you can,

君ができるすべての方法で、
In all the ways you can,

君ができるすべての場所で、
In all the places you can,

君ができるすべての時に、
At all the times you can,

君ができるすべての人に、
To all the people you can,

君ができる限り。
As long as ever you can.





上記の名言は、ジョン・ウェズリー『行動の規準』から抜粋した物だ。


だが、此れが風鵺の行動基準でもある。

理不尽に耐える人々を見て来て、そして、また、理不尽に苦しむ人々に気付いて、此の言葉と出会って、決めた行動基準の概念。

其れは最早(モハヤ)、風鵺の中では、模範行為と言うより、尊重されるべき理念(リネン)に近い信念へと昇華されて、其の身に、そして心の隅々(スミズミ)までに、染み込んで居る。





(仙祥)「………。。。」



(風鵺)「Youも、“そう”なんでしょ?だったら、ウチの手を取って。そんで、独りで堂々巡りの悲劇のヒロインごっこなんて、さっさとエンディングにさせちゃおうぜ☆」





皮肉めいた言葉を、完膚なきまでに叩きのめされ、愕然(ガクゼン)とする仙祥。

そんな仙祥に、過去視に捕らわれ、子供と化して居た時の様に、同じ様に手を差し伸べる風鵺。





(仙祥)「うん。」





気付けば、仙祥は、無意識の内に、哀しく泣きそうな顔で、コクンと、頷き、肯定の返事をして居た。

そうして、静かに震える、自らの手を、風鵺の、尊(トウト)く見える、手の平に重ねて、ゆっくりと力を込めて行き、大事そうに、握りしめる。


拒まれず、再度、握り返された手に、安堵の溜息を零す。

恐る恐る風鵺を覗き見た仙祥の瞳には、ニコニコ♪と、喜色満面の笑顔を覗(ノゾ)かせた風鵺が、目一杯、映り込んで来て、其れに気付いた仙祥の頬が別の意味で赤くなったのは、また別のお話(笑)。。。










And that's all
(それでおしまい…?)

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