チキンはぁと何本勝負?

□チキンはぁと何本勝負? 41
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恋“ふらく”なだけに“フラグ”が立つ?

(1)






枝折翔の負の気配が、喧花の御蔭で、一気に弾け飛んだ。











―――― ★ ――――












散々(サンザン)泣く枝折翔を、必死に泣き止ませた喧花。

苦労した喧花の甲斐(カイ)あって、枝折翔が、漸(ヨウヤ)く笑顔を見せると、枝折翔の姿は幼子から、本来の少年へと戻った。


そして今、枝折翔は、何故、自分が幼児化して居たのかと、ひたすら首を傾(カシ)げて居る。

既に其の瞳から、濁った印象は拭(ヌグ)われて居て、既に正気に戻った様子で、其の証拠に、ふっ、と明るい光を宿し、今は思案の色に染められて居る。


其れに対して、喧花の反応はと言うと…、唇を『へ』の字に曲げて、押し黙って居た。

しかし、そんな喧花の様子に、一向に気付かない枝折翔を睨み、沈黙を止め、口を開く。





(喧花)「間抜けな夢からは覚(サ)めたか?」





キッパリと『間抜け』と言われて、枝折翔は言い返す術(スベ)も無く、渋い面構えで赤面し、ぐっ、と瞼を伏せる。

そうして瞬(マバタ)きをし、最初に目に飛び込んで来た喧花を、じっ、と真剣に見つめて、小さく頷(ウナズ)き、力強く言い返した。





(枝折翔)「あぁ!」





其の後に感謝の言葉を照れ臭そうに言い、『此処を出るぞ』と言い、其の身を翻(ヒルガエ)す。





(喧花)「待て。確かめたい事が有る。」





喧花が枝折翔の服の袖を掴む。

すると、軽く躓(ツマヅ)く様にして、足を止めざるを得なかった。

何なんだと思い、肩越しに振り返ると、喧花は裾(スソ)を離さない侭、ジィッと、訝(イブカ)しる様に見上げて来た。



そして、一本背負い。



喧花は枝折翔に、一本背負い投げを、喰らわせた。

一本背負いで、床に強くたたき付けられた枝折翔。


痛みに呻(ウメ)き、ふと、気が付けば、仰向(アオム)けに倒された枝折翔の上に喧花が馬乗りに成って居た。





(枝折翔)「退け!」



(喧花)「断る。」





喧花の自棄(ヤケ)に低い声に、拒否の返事。

其れに対して、怒りの顔から、訝し気な顰(シカ)めっ面へと表情を変える。





(喧花)「ちと、襲うぞ」



(枝折翔)「……は?」





喧花の発言に、枝折翔は、思考が飛ぶ。

頭の中がフリーズし、真っ白に成った。


其の隙を突いて、ビリリッと枝折翔の服を破き、胸筋に巻かれて居る晒(サラ)しを強引に、瞬きする間に、素手で引っ張って、打ち切る。

そして、片手で露わに成った胸筋を、ムギュッと掴み、もう片手は下半身の股へと伸ばし、股間をガッと掴み、暫し両方を揉みしだく。


其の間、僅か数秒。

余りの手際の良さに、抵抗出来ず、只々、零れ落ちるのでは…と、言う程に、目を剥(ム)く枝折翔。

だが、直ぐに競り上がって来た快感に、喘ぎ声が喉を通って口から外に飛び出す前に、身体が動いた。


其れは、粗(ホボ)、反射的に近かった。

枝折翔は喧花の肩を勢い良く押し返し、其の魔の手から逃れ、部屋の隅まで逃げ、壁にベタリと背を寄せた。

セクハラの度を少々超(コ)す辱(ハズカシ)めを受けた枝折翔の顔は、火照(ホテ)って居る…が、何処か、青褪めて居る様にも見え、背筋には薄(ウス)ら寒いモノが走った。





(喧花)「胸は…ギリギリAカップ、チンコは…付いてる。」



(枝折翔)「(知・ら・れ・た・!)」





枝折翔はそう悟った瞬間、素早く動いた。

信じられないと、未だ感触の残る手を、握っては、開いてを、繰り返しては、呆然として居る喧花。


そんな喧花の後ろを取るのは容易だった。

殺さなければ…と、羽交い締めにし、其の体制の侭、真後ろに、反り投げるドラゴンスープレックスを衝動的に掛けようとする。


すると、突然、喧花の背が縮んだ。

いや、違う。


枝折翔の其の技を阻止する為に、両足を床に、めり込ませた。

沈んで行く喧花の両足に、バキバキッと、床が悲鳴を上げる。


恐ろしい脚力の怪力の馬鹿力に、また思考力が、身体が、動かなくなって、静止する枝折翔。

そんな力の抜けた枝折翔からの腕の拘束からも逃れ、足も床から抜き取り、肩回しをして、振り向き様に、枝折翔を殴り飛ばす。


見事なまでに、無防備だった枝折翔は、足に力を入れて、踏ん張る事も出来ず、其の身体は、簡単に床を離れ、宙を浮き、吹き飛ばされる。

ダンッ、ダン!と床を跳ねて行く様は、水面に向かって回転をかけた石を投げて、水面で石を跳ねさせる遊びの水切りされた石の様だった。





(枝折翔)「ィッツ‼な、何しやがる!」



(喧花)「そりゃ、こっちの台詞だ。あんなに殺気立ってりゃ、誰だって手加減は出来ねぇぞ。例え…其の…性転換手術してる、本物のオカマ野郎でも。」



(枝折翔)「違ぇよ!元からだっ、此の両性具有(アンドロギュノス)の体は!!……あ゙。」



(喧花)「あ゙?アンドロギュノス??」





つい、口を滑らせてしまった。と、頭を抱えて、しゃがみ込む枝折翔。

しかし、両性具有だと知られるのも、我慢成らないが、性転換手術と勘違いされるのも癪だったのも事実。





(喧花)「まぁ、安心しろよ。完全な女じゃねぇ限り、俺は取って食おうとは思わねぇよ。其れに…口は堅い方だ。安心しな。」



(枝折翔)「お前…」



(喧花)「あ、ほらよ。」





上半身が半分以上、露(アラ)わになって居る枝折翔に上着を投げ渡す。

元から大きなサイズの上着は、枝折翔には、ちょうど、ギリギリだが、着れた。

此れには、枝折翔も助かった。胸が露わに成った侭、出歩けば、其れは只の露出狂だ。変態だ。





(喧花)「他人の噂とか、バラ撒く程、暇じゃねぇし。んな事する暇があるなら女、誘って喰うし。」



(枝折翔)「ナンパすんな!そして喰うな!!」



(喧花)「お、漸く何時もの、お前に戻ったじゃん。」



(枝折翔)「は?…――――ッ!!」



(喧花)「さぁ、行こうぜ?案内してくれんだろ?出口までさ。“案内人”さん?」







ニヤニヤ、と性悪でニヒルな…其れでも何処か嬉しそうな笑顔を覗(ノゾ)かせた喧花に、枝折翔は別の意味で頬が赤くなったのは、また別のお話(笑)。。。










And that's all
(それでおしまい…?)

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