チキンはぁと何本勝負?

□チキンはぁと何本勝負? 39
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トラジェディーはコメディーの前菜






光の中には、辺りの静穏な暗闇の視界とは、異なる風景が流れ、映されて居る。

其れは、見えざるモノ、此の場合に置いては、きっと3人の過去を見通す幻視(ゲンシ)の力。


3人の男子の覚えて居る記憶の断片を、3人の少女達へと伝える光。

少女達は咄嗟(トッサ)に其々の名を呼んだが、しかし、聞こえる筈が無い。



コレ等は、あくまでも、過去の風景だ。

と、同時に、上映される彼等の物語だ。



只、流されて居る映像は、どれも此れもドロドロと混沌とした、負の感情。そんな表現がピッタリの黒歴史(ブラックレコード)。

見て居る此方が、気が滅入る様な、黒く感化されて行く様な、或いは同情を誘う様な、涙を誘う様な、過去の映像ばかりだ。





(喧花)「ムカムカすんな、おい。」



(風鵺)「不快感が鰻(ウナギ)登り中、Now(ナウ)。」(訳:今)



(摩耶)「…眠い。」





だが、3人は其の様な共感に流される様な、買う様な真似は、さっぱり無い!

他人の一切が分かってしまっては面白くも無い気がする等と言う以前に、他人の事に全く関心を示して無いとでも言う様だ。

さて、上記の3人の少女達の惚(トボ)けた様な、いや、あからさまに飽きた反応を伺う辺り、そろそろ限界点を突破しそうだ。





(喧花)「くそ、ウゼェエエ!‼!」



(風鵺)「飽〜き〜た〜!」



(摩耶)「まだ終わらないの?」





そして、案の定、直ぐに其れは表れた。

此処からは、どうこうしても、話の腰をバキボキに折るのが得意な3人の本領が発揮された。





(喧花)「いい加減に…、」



(風鵺)「しろYO!」



(摩耶)「とっとと…、」



(喧花・風鵺・摩耶)「「「起きなさい!!」」」





力の入らない身体。

ギリリ、と歯を食いしばる。

滑り込んで来ようとする景色に、抗(アラガ)う。

渾身の力を込めた片腕を、手を、光の珠へと伸ばす。

珠へと指先から、触れる、包み込む、そして、握り潰す。





バシュッ





握り潰した音が響く。

身体が、軽く成った。


固く握り締めた指先から、光の粒が、ボロボロと砂の様に崩れ逝く。

どうやら、光の珠は彼女達の精気を喰って存在して居た様で、消滅すると同時に身体に力が戻り、自由に動ける様に成った様だ。


そうして、光の珠は、霧散(ムサン)する。

しかし、其れは、禍々(マガマガ)しい雰囲気を纏った、幼き男子達へと姿を変じた。

3人は驚く事も無く、其々の童子に向き合い、目線を合わせる様に、しゃがみ込む。


幼子(オサナゴ)達は言う。

全て自分が悪いのだと、睫毛(マツゲ)の奥の眼光は、記憶の海を泳いで居る。

唇からは、渇(カワ)き切った独り言の様な呟きを、徒然(ツレヅレ)と語り続けた。










And that's all
(それでおしまい…?)

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