チキンはぁと何本勝負?
□チキンはぁと何本勝負? 36
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ハプニング☆ファーストキッス
ひらひら
ぱたぱた
…と、黒猫擬きの背に付いて居る射干玉(ヌバタマ)色の蝶の羽が、宙を羽ばたいて居る。
いや、正しくは、其の蝶の羽根を付けた黒猫擬きが、宙を飛びながら、3人を誘導する様に、歩いて行く。
其れに従(シタガ)って、ノコノコと付いて行く3人。
辿り着いた先は…、偽葬殿の三方への出入り口前。
(喧花)「まさか、また俺達、バラバラにされるんじゃねぇだろうな?」
もぅ、1人きりは御免だ…と、顔に、でかでかと書かれて居る喧花に、黒猫擬きは肩越しに振り返り、にんまり、と口端を緩く釣り上げて笑った。
(?)「にょん♪」
(風鵺)「あ〜、やっぱり?山荷葉の言葉からも読み取れる様に、此処から其々(ソレゾレ)の、通い慣れた門の先へLet's Go!って事だろうからね。」
足取り軽やかに振り返った、黒猫擬きの表情を見る限り、喧花の言った事は肯定された様に見えた。
山荷葉の助言の≪“各々”の悪魔の囁きの帰趨(キスウ)する処≫と、風鵺の憶測の解釈での≪“個々”で何時も通りに悪戯しに行く処≫は、3人一緒では無く、単身で行く事を示して居るのは確かだと、風鵺は喧花に答える。
(喧花)「トホホ、マジか…。」
(摩耶)「通い慣れたって、いつも通りって事?」
(風鵺)「多分ね。」
(喧花)「で、俺達は何時も通りに悪行を行えば良いのか?」
(?)「にょにょん!」
『違う違う!』とでも言う様に、激しく首を、左右に、ブンブンと振る黒猫擬き。
そうして、何を思ったのか、パタパタと羽根を動かし、摩耶の頭の上に、ちょこんと居座る。
(摩耶)「ドキューン♡」
3人の中で自分を選んでくれた優越感と黒猫擬きの可愛さに胸貫かれる摩耶。
其の摩耶が胸打たれて居る間に、黒猫擬きの背中の羽根が一層、輝きを増しだした。
パァアアアアッ
黒く光る射干玉色がより一層発光し、無数の小さな蝶の群れへと、変じる。
すると、其れ等は、まるで、点と線を描く様に水平に並ぶ。
・−−−・ −・−・・ −−・・− −・−・ ・・・− ・・−・ ・−−・ ・・ −・−− −・−−・
(摩耶)「風鵺、何て書いてあるの?」
(風鵺)「『せ・き・ひ・に・く・ち・づ・け・る』」
(喧花)「『石碑に口付ける』だと?」
(風鵺)「ふぅ〜ん。そうすれば、自(オノ)ずと解決策に辿り着くって事?」
(?)「にょぉ〜ん♪」
風鵺と喧花が、導き出した回答に、満足気に鳴く黒猫擬き。
(喧花)「俺、女の子以外に口付ける趣味、持ち合わせてねぇんだけど…」
(摩耶)「じゃぁ、此れから、どうするの?」
(喧花)「………。。。」
摩耶の問いに、憮然(ブゼン)とした表情になる喧花。所詮(ショセン)、“背に腹は変えられぬ”と言う事だ。
摩耶は、そんな喧花の様子を見届けてから、頭に未だに乗っかって居る黒猫擬きを目の前まで、優しく抱き下ろす。
(摩耶)「黒猫擬きさん…」
(?)「にょぉ…」
ちゅっ♡
(?)「!」
『にょぉん』、と多分、『何だ』と、言い放とうとしたのだろう。
だが、続かない。何故なら其の唇は摩耶の唇に因って塞がれたからだ。
触れたのは、ほんの一瞬だけ。触れるだけの軽い、キス。
其れでも、黒猫擬きから、にんまりと性悪そうな笑顔を消すには充分だった。
(摩耶)「私の初めては、貴方って決めてたから。」
突然の事に驚いたらしく、片目を丸くした侭、呆然として居る黒猫擬き。
そんな黒猫擬きに、はにかんだ様な、嬉しさを隠せないと言った様な、にっこりと愛らしく無垢(ムク)に微笑んだ。
多分、摩耶の笑顔の中では、最上級クラスに入る笑顔だ。
(喧花)「NooOOoOOO‼‼!俺の摩耶のファーストキスがぁあああアアAAA‼‼!‼」
(風鵺)「ヒュ〜♪やるじゃん、摩耶たん。」
(?)「ふ、フシャーーーー‼!‼」
全く慣れて無い事をされた所為(セイ)か、黒猫擬きは威嚇をする様に鳴いた。
いや其れか、『さっさと、早く行け‼!‼』と正して、居るのかもしれない。
或いは、所謂(イワユル)、照れ隠し…と言う可能性も、万が一、あるのかも、しれないww
モールス信号に使って居た蝶達を呼び寄せ、元の背中へと集めさせ羽根へと戻し、摩耶から離れる。
そんな黒猫擬きの心情を分かって居るのか、3人は蜘蛛の子を散らす様に、きゃらきゃらと、楽しそうに笑いながらバラけて行った。
3人の姿が其々に見えなくなった所で、黒猫擬きは漸く、安堵と疲れの溜息を1つ吐いた。
(?)「……にょー。」
3人が上手く行けば、黒猫擬きにとっての大切な利用価値の高い者達が戻って来る。
そう、其の者達が戻ってくれば“元の姿”に戻れる好機(チャンス)も得られ、更には【鈴】を作り出せるかもしれない。
だが、別に、仮に3人が失敗しても、此方には、何の影響も、何1つも無い。まぁ、利用価値の高い者達を失うのは少々痛手だが…デメリットはゼロに近い。
(?)「……にょおん♪」
黒猫擬きの、夢見がちっぽい眼差しが、フワフワッと、宙を漂(タダヨ)う。
しかし、陰影のはっきりとした姿は、妖(アヤ)し気な雰囲気を纏って居る。
まるで、企(タクラ)みを巡らせ、夢や幻影を見つめる、思春期の子供の様だ。
(?)「にょっ☆」
思惑に酔った御蔭か、先程の機嫌が治り、黒猫擬きは小さく含み笑いを零した。
And that's all…?
(それでおしまい…?)