チキンはぁと何本勝負?

□チキンはぁと何本勝負? 33
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彷徨う夢と星屑の氷






月の無い夜。

那由多(ナユタ)の星明りの、そんな夜の下。


夢幻の様に、おぼろげな童子が、1人。

身を寄せ合い座り込む3人の少女に呟く様に、声を掛けた。





(?)「おいで。」





しかし、3人の少女は、ピクリとも呼び掛けに応じない。

其れ所か、反応らしいモノは、何も無い。心此処に在らず…と言った具合だ。





(?)「ほら、此方へおいでなさい。流罪人の子等よ。」





其の様子に、童子はクスリと悪戯(イタズラ)気味に笑う。

しかし、軽く細められた双眸は、とても穏やかで優しい。

サクサク、と草花を踏む音も無く、スススッと静かに歩き、少女等へと近付く。





(?)「過去夢を彷徨って居るね。」





童子が3人に向けて、両手を翳(カザ)す。

すると、瞬間、暗灰色(アンカイショク)の小さな歯車が15個、朧(オボロ)な光を伴い、現れた。


其れは宙を翔け、5個で1組を作り、1人、1人の額に張り付いて行く。

そうして“点”と成り、其れ等を、“線”で結んで繋がったライン上、出来り、浮かび上がるのは、五芒星(ゴボウセイ)。

童子が翳した両手を、ぐっと握り締めると、蛍の様に、仄(ホノ)か光る“星”は、ガシャーンッと、まるで鏡か硝子が割れる様に割れた。





(喧花・風鵺・摩耶)「「「!!?」」」





今まで無反応だった3人は息を呑み、眼を何度か瞬かせ、辺りをキョロキョロと忙(セワ)しく見渡した。

そして、同時に目の前に居る童子へと視線を合わせる。

3人が自分に気付いた事に、眼を合わせられた事に、童子は、朗(ホガ)らかに微笑んで見せた。





(喧花)「お、前、は?」



(?)「僕は…そうだな、“山荷葉(サンカヨウ)”とでも名乗っておこうか。君等に死なれては、困る存在さ。」





過去夢から引き戻され、現在(イマ)へと導かれ、目覚めた喧花の、たどたどしく紡がれた、戸惑いの質問の言葉。

そんな喧花に童子は、『変な名前を付けられても困るからね。』と悪戯気味に頬を緩め、花の名から取った偽名を、楽しげな色が加えられた笑みで、そう答えた。





(風鵺)「今の、情報は、本当なNO?」





山荷葉は、過去夢から3人を引き上げると同時に、情報を与えた。

今の3人の現状に関わる基本的な情報を…。


其の与えられた情報に、珍しく、動じない3人に、動揺が走る。





(山荷葉)「信じられないなら自分で確かめる事が1番だよ。あぁ、只、今宵の様な新月の夜には気を付けなさい。陰鬱な迷夢に捕らわれてしまうから。」



(摩耶)「貴方は…、味方なの?」





摩耶の問いに、今まで、クスクスと小さく声を立てて、柔和(ニュウワ)さが湛(タタ)えられて居た笑みが、冷たく凍る。

しかし、其れは、ほんの一瞬の事。





(山荷葉)「さぁ、どうだろう?」





又(マタ)もや、唇の形は楽し気な事を語る時と同じ、悪戯っ子のソレに戻って居た。

しかし、其の一瞬は、確かに、はっきりと、3人の記憶に、焼き付けられる様に、残った。

隠そうとしても隠し切れない程の悲しみを、堪(コラ)える様な悲壮感(ヒソウカン)が漂った其の刹那の表情を…。





(山荷葉)「まぁ、兎にも角にも、ようこそ、偽葬界へ。」





そう言い残し、山荷葉の姿は、硝子細工のような透明さから、空気の様な無色さへ、最後には暗灰色の歯車や螺子へと変わり、砂の様にサラサラと崩れ去って、其の粒子は、那由多の星屑へとなって、天へと昇って逝った…――――。。。










And that's all
(それでおしまい…?)

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