チキンはぁと何本勝負?
□チキンはぁと何本勝負? 30
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其れは稚拙なワルツに良く似て居る
両者共々、壮絶な戦いを繰り広げる。
≪俺1人でやるから邪魔をするな。≫と、釘を刺された少年達は只々、魅入る。
神様(仮)達と少年達の其の遣り取りを眺めて居た少女達は、自分と神様(仮)のONE ON ONE。
タイマン勝負を行うと云う解釈に捉えて良いと判断をして、2人に向けて居た警戒意識から、一旦、少年達を除外して居る。
つまり、もう舞台には三者三様、どうあれ、2人ずつしか立っては居ない。
―――― ★ ――――
獲物越しに、目が合う。
其の一瞬で、何も聞こえなくなる。
2人は前に出る。
撃ち合う度に小さな火花が散る。
其の火で肌が焼ける。
其の痛みは無い。
熱も、感じ無い。
意識はただ、目の前の相手にのみ向いて居る。
そして、2度3度と短い間隔でクナイが投げ込まれる。
其のクナイが銃弾と、ぶつかり合い、双方、激しく鋭く鈍い音を立てて飛び散る。
黒曜(コクヨウ)が閃(ヒラメ)く。
銀が其れを既(スンデ)の所で受け止める。
クナイをギリギリのタイミングで受け止める。
クナイと銃の押し合いだ。
クナイに負けない程、切れ長で冷ややかな双眸と、弾丸の発射された熱にも負けない煮え滾った双眸同士が、間近に迫った。
(太郎神(仮))「…只の馬鹿じゃねぇな。こっちが何か企んでるか分かってやがる、か。だから只の言い成りの傀儡(クグツ)に成らない様に覚醒を拒んでるのか?だったら良い判断だなぁ!おい!」
(喧花)「さて、な。つーか、言葉でごちゃごちゃ殺る気はねぇって……言ってんだろうがッ!!」
冷ややかな双眸が、一瞬、遠退く。
そうして……――――、
ゴチンッ!!
渾身の不意打ちに因る頭突きを太郎神(仮)に喰らわせてから、密着し合って居た武器を放し、無茶苦茶に距離を取る喧花。
たらっ、
たらり、
ポタッ
ポタリ
(太郎神(仮))「〜〜〜〜ッ。テッメェ、どんだけの石頭だ!」
(喧花)「てめぇも、な!」
お互いの衝突をし合った額の硬さは、互角。
しかし、額を覆う薄い皮膚が捲(メク)れ、血が滴(シタタ)った。
―――― ★ ――――
三郎神(仮)が懐(フトコロ)に仕込んで居た短刀を、風鵺の首筋へと向けて構えた。
(風鵺)「おー」
しかし、声を上げながらも、其れは棒読みで、無表情だ。
と言うより、向けられた当の本人は視線を微々(ビビ)たりとも揺らさない。
普段のチキン振りと違い、見事なまでの、無神経さで、無反応にも近い、反応振りだ。
(風鵺)「おー、そう言えばそうだ。」
毅然(キゼン)とした態度を崩さない。
そして、何を思ってか、風鵺は鉄球のハンマーから手を放した。
ゴトゴトンッ
床に鉄球のハンマーが転げ落ちる。
(三郎神(仮))「何のつもり?」
(風鵺)「ほらぁ、ウチってチキンじゃん?チキンに武器は似合わないって言うか、ねぇ?」
(三郎神(仮))「あんまり…嘗めないで、よ!」
短刀の銀色が、風鵺を目がけて翔(カ)けた。
だがしかし、何の其の、風鵺は幽霊達の攻撃同様に、此れも容易(タヤス)く躱(カワ)す。
其の間に三郎神(仮)は廊下の床を翔ける。
三郎神(仮)の手には抜き身の太刀(タチ)があった。
先程の短刀とは違い、今度は長刀だ。が、振り下ろされた此の長刀の太刀筋も全て見切って躱し切った。
(三郎神(仮))「流石だね。此れ全部躱すなんて」
(風鵺)「King・of・Chickenの名は伊達じゃないじぇ☆」
そう言い合って、2人は同時に動いた。
風鵺は身近に転がって居た幽霊1体を掴み、自分の前へと盾にする様に差し出す。
直後、幽霊がズタズタに裂け散る。
(風鵺)「あーぁ、可哀想に。自分達の部下みたいなものでしょ?」
(三郎神(仮))「そんなモノ、取り替えは幾らでも利く。」
(風鵺)「見た目と違って、乱暴者な上に浪費家なんだねぇ。ふー、やれやれ」
頬に片手を当て、小首を傾げ、ふう…と、わざとらしくポーズを取る。
(三郎神(仮))「あはっ。そう言う君こそ、盾にするなんて、残虐非道な外道者だネw」
(風鵺)「えー、知らないの?…チキンは他人を身代わりにするから生き延びられるんだよ♡」
お互いに、あくまでも、ニッコリと笑って見せる三郎神(仮)と風鵺。
―――― ★ ――――
ダッ、と、お互いに、相手に向かって走り出す。
最初に先手を打ったのは、次郎神(仮)だった。
素早く手裏剣を、摩耶に向かって投げる。
其の手裏剣の攻撃を、鎌で一閃して弾く摩耶。
しかし、其の防いでから、一息の間も付かない内に、次郎神(仮)の刀が摩耶に振り下ろされ、摩耶の胸を薙いだ。
摩耶の胸から、鮮血が空に向かって吹き出し、宙を舞う。
…かの様に見えたけれど、実際に宙に舞ったのは、無数の色取り取りの雛霰(ヒナアラレ)。
其れを次郎神(仮)とnilが視認した瞬間に、ジャラジャラジャラッ!!…と、鎖同士が擦れる音が耳に入る。
其の音が聞こえるや否や、次郎神(仮)の身体には、鎖が蛇の如く巻き付いて居て、動きを封じて居た。
そして最後に、銀の三日月が、次郎神(仮)の頬を掠り抜ける様に、ヒュンッ!と鋭い音を立てて宙を翔(カ)け、次郎神(仮)のすぐ横の後ろの壁へと、ガッ!と、勢い良く突き刺さった。
(次郎神(仮))「…成程。只の大鎌ではなく、鎖付きの鎖鎌でもあると云う訳か。」
そう次郎神(仮)が呟くと同時に、ザシュッ!と、次郎神(仮)の頬の皮膚が、2cm程、真横に裂け、緋色が滴る。
幼さを少し残しながらも大人びた、整った其の顔の頬から流れ出たのは、紛れも無く、血。
(次郎神(仮))「変わり身の術も見事じゃのぅ。」
大鎌の鎖鎌で、身体の動きを拘束される中、次郎神(仮)は首を動かし、自分を縛り付けて居る鎖の先を目で辿って行く。
其の先には、鎖と繋がった鎌の棒状の部分の柄(エ)を持ち、相変わらず淡く暗く微笑んだ表情を浮かべながら、悠然と立って居る無傷の摩耶が居た。
しかし、次郎神(仮)も殺られっぱ無しでは無い。
無表情ながらも、一瞬で鎖の束縛から抜け出した。
ジャラジャラジャララッ、
ガシャンッ、
ジャランッ、
ガシャンシャン!
捕縛する獲物を失った鎖が、鈍い音を奏で合いながら、其の場の地面へと落ちる。
ヒュン、
ジャラララララララ…、
カシャンっ。
しかし摩耶は其れに驚く事無く、鎖と繋がった棒を釣り上げる様に振り上げる。
其の動作に連動して、引っ張られた鎖は筒状となって居る棒の中に、刃は棒の先へと付け戻り、鎖鎌から元の武器スタイルである大鎌へと戻る。
(次郎神(仮))「素材は…水飴かのぅ。」
(摩耶)「正解。」
死神鎌の素材を言い当てた次郎神(仮)に、のんびりと返答をする摩耶。
And that's all…?
(それでおしまい…?)