(風鵺)「ねぇ、所で、ウチ等は何処に向かってるNO?」
当初の様に、風鵺と摩耶の2人を、抱えて走る喧花に問う。
(喧花)「あ゙?何処って出口だよ出口!」
(摩耶)「北口。」
(風鵺)「What!?何時もの【空に三つ廊下】じゃないのかYO?!」
(喧花)「………何で、【空に三つ廊下】なんだ?」
風鵺の言葉に、目を見開き、暫しの間、沈黙して、其の理由を、問う。
一見、馬鹿に見える、おちゃらけた調子の風鵺だが、頭の良さは、全国屈指のトップクラスに値する。
其の頭脳だけは、随一の風鵺が、得意分野で、自分と摩耶とは違う回答を、導き出した。しかも、有り得ない!と言う表情をして。
だから、此れは、単なる、おちょくりからでは無い。
(風鵺)「だって言ってたじゃんYO」
『東西南北(ヨモヒロ)】は、表口の【空に三つ廊下】の対極に位置する裏口』
自分達が、偽葬殿の中に入ったのは、【東西南北(ヨモヒロ)】と呼ばれ、裏口とされる北口。
異常な超常現象が、多彩に混在する裏側。
そして、何時も自分達が、出入りを繰り返して居た【空に三つ廊下】と呼ばれ、一般口とさせる表口。
此方は、異常な超常現象が、一切起こらない現実味を帯びた表側。
此処までの見解は、3人一緒だ。
只、出る事ばかりに夢中で、喧花と摩耶は、最初に、足を踏み入れた北口を、目指して居た。
しかし、風鵺が“本当に”出たいのは、何時もの日常がある方…つまりは、異常な超常現象が一切起こらない表側の【空に三つ廊下】の出口だった。
(喧花・摩耶)「「あ。」」
気付いた様に、納得した様に声を上げる2人。
何時もの日常に戻りたいのは、2人も一緒だ。
本来、北口は存在しない。
異常への出入り口で、正常への出入り口では無いとしたら?
(風鵺)「でも、もうウチ等って北口から入って裏側に居るじゃん?」
(喧花)「おぅ、居るな。」
(風鵺)「多分に、三方向ではラスボスが待ち受けてそうだよねぃ?」
(摩耶)「1体に付き1人って言ってたもんね。」
(喧花)「3罪科…か。」
北以外の三方向で待ち構える人外青年の姿が目に浮かぶ。
(喧花)「でもま、三方向に1体ずつなら、どれか、一方向を、此の侭、進んで、3人で突入すりゃ、何とかなんだろ。」
(風鵺・摩耶)「「えーーーー」」
(喧花)「な、何だよ!?」
『3対1で、楽勝、楽勝♪』と提言する喧花に、他の2人から、思いもよらぬブーイングが入った。
賛成されると思いきや、まさかの反対に、戸惑う喧花。
(摩耶)「帰りがけに、お菓子、持って帰りたい。」
(風鵺)「ウチは、三郎神(仮)の本体である、無抵抗な御神体を、蹴飛ばしたいお♪」
至極当然の様に、さらりと発言する摩耶に、無抵抗なモノには、強気なチキンの風鵺。
(風鵺・摩耶)「「そぅ言う訳で…アデュー☆」」
(喧花)「お、お前等なぁああアアア‼‼!‼」
モゾモゾと、喧花の腕から抜け出し、バラけ、走り出す身勝手な2人に、喧花の叫びが、四つ辻(ツジ)の廊下に木霊する。
(喧花)「俺だって、小遣い奪取してから、帰りたいの、我慢しての、提案だったんだからなーーー!!」
本当は、3人の中で1番、寂しがり屋の喧花。
本当は3人一緒が良いのに、ぼっちにされて、寂しさを覚える。
しかし、もう二手に分かれて、突(ツ)っ走(パシ)って行ってしまった2人を止める術は無い。
“二兎追うものは一兎をも得ず”
二人と一緒にと、欲ばっても、追えるのは片方のみ。
しかし、どちらかを選んでも、説得に失敗したり、中途半端に此方が折れて終わるのは、目に見えて居る。
本日、何度目かの、孤独感を感じる喧花。
結局、ヤケクソな気持ちを、強がりに変えて、2人に負けじと、張り合う様に、大声で吠えて、振り切る様にして、自分も、2人とは違う道へと、走り出した…。
And that's all…?
(それでおしまい…?)