襲い掛かる澱んだ夜闇
迎え撃つ飛び散る花火
守りの無数の風船
崩壊する部屋
落下。
爆発音。
爆ぜる光。
割れる風船。
幻の様な、数瞬の出来事。
反射的に少女達は目を閉じた。
そして……、
ドンッ
爆風で風船が全て割れて、防壁が無くなった皆は其のせいで突き飛ばされた。
其の勢いで、スーパーボールが弾む様に、ポーンと宙へと放り出された。
バキバキバキッ
ガラガラガラッ
と言う崩壊音と共に襲って来た浮遊感。
何事だと、少女達は目を見開いた。
部屋の残骸と共に、無明の闇へと落ちて行く奇妙な光景を目の当たりにし、呆然とした。
どうやら、いまいち状況が呑み込めない様だ。いや、追い付かないとも、実感が沸かないとも、言って良いのかもしれない。
ヒュゥウウウーーーーー
(風鵺)「……只今、浮遊感を全身で感じながら落下中DEATH★」
(喧花・枝折翔)「「……ギャァアアアアアーーーーッ!!!!」」
(風鵺)「ワッホイ!人生ワンダホー☆」
(喧花・枝折翔)「「何処が!?何処がワンダフル!??寧ろアンビリバボーだろぉおおオオオ!!!」」
(摩耶)「あぁ、確かにワンダフルよりアンビリーバブルの方が妥当の様な気がする。」
(風鵺)「あー…じゃぁ、人生アンビリバボー☆★」
(喧花・枝折翔)「「お前は御気楽過ぎぃいい!!現状分かってる!?しかも人生じゃなくて、此の状況がアンビリーバブルなんだよッ!!」」
(風鵺)「もぅ…あー言えば、こー言うんだからん。…いやー、でも、しっかりツッコミしてくれるって嬉しいねぃ♪安心してボケられるYO」
(喧花・枝折翔)「「そのボケは故意か!!!」」
(摩耶)「風鵺の場合、バカもボケも素よ。」
(風鵺)「ほほほーう♪いぇあ☆」
(喧花・枝折翔)「「こいつ、まともじゃねぇ!!」」
(仙祥)「フンッ、自分達は常識人って顔してるけど、この状況下で其処までしっかりツッコミ出来れば、物の見事に常識人の範疇を超えてるよ。」
(摩耶)「あぁ、普通の一般人なら、只々(タダタダ)、悲鳴を上げるか、気絶するか等で、会話など普通出来ないものね。」
(喧花・枝折翔)「「ガーン!!」」
自分達が、まともでないと言われて意外と自分達は常識人だと思って居た喧花と枝折翔はショックを受ける。
(風鵺)「つまり皆、NOT(ノット)パンピーって事だねぃ!」(訳:一般人じゃ無い。)
(仙祥)「そ・ん・な・事より、nil、ありがとう。御蔭で爆死しないで済んだよ。」
(nil)「流石に、一瞬で此の人数を爆発から守るのは骨が折れる。」
nilの掌から盾のバルーンが1つ出て来る。
どうやら皆が爆発に巻き込まれながらも、傷1つなく元気なのは、爆破を枝折翔が相殺してくれただけじゃなく、間一髪の所でnilが大量の風船でバリアを張って守ってくれた御蔭らしい。
しかし、大人数にして、防御範囲が広範囲だったのと、発動時間が短過ぎたせいで、充分な強度が足りず、爆風には耐えられず、床や窓や壁諸共(モロトモ)、外へと突き飛ばされてしまった様だ。
そして現在、上記の通り、皆でコントをしながら落下している過程である。
(風鵺)「OHー!ウチ等ING系(現在進行形)で空を飛んでるYOぉ!I Can Fly☆」(訳:私は空を飛ぶ事が出来る☆)
(仙祥)「フフッ、そう考えれば面白くは、あるね。」
(喧花)「まぁ、確かに…って、違ぇーー!!そーじゃねーだろッ!」
(摩耶)「飛んで居るのではなく、重力と引力に因(ヨ)って、私達は地面に引き寄せられて居るのっ。」
(nil)「素直に落下してるって言えよ。」
漸く、話の流れが、脱線と言う名の現実逃避をし終えた様だ。
やっと、現実を見る気になったらしい、今の現状に対しての会話に成って来た。
(風鵺)「ぴーヒョロロロロ〜♪」
…訂正、現実逃避を未だに続ける者、馬鹿1名。
(喧花)「鳥に成り切ったって飛べねぇよ!いい加減、現実見ろッ。此のドアホ!!」
バキッ!
鳥に成り切って手足をバタバタさせて居た風鵺を殴る喧花。
(風鵺)「んギャァアアアアッス!!!」
殴られたせいで、風鵺は皆より下に落下する。
(風鵺)「すいません、すいまそん!Chickenなのに開き直って調子ぶっこいてましたぁぁァアアッ!!」
(喧花)「よっし、そのままテメーを下敷きにして助かるぜ☆」
(風鵺)「んぎぴゃァアアアんNOOOぉおおお!鬼ぃいい!!」
先に落下して居る風鵺の背中に両足を乗っける喧花。
(摩耶)「愚駄愚駄(グダグダ)喧しいの!」
バコッ!バンッ!
騒ぎ出す喧花と風鵺の頭に摩耶の『甘味特集大辞典』と書かれた分厚い本を使用したブックハンマーが炸裂!!
その攻撃が見事クリーンヒットした2人は下へ下へと更に落ちて行く。他の人よりも更に先へ、下へ沈む結果となった。
(摩耶)「よしっ、此の2人を下敷きにすれば助かる!」
(喧花・風鵺)「「ぎぃやぁあああアアアッ!!鬼ぃいイイイ!!!!」」
“覆水盆に返らず”
“落花枝に返らず、破鏡再び照らさず”
一度損なわれた物や、死んでしまったものは二度と元に戻らないと云う例えの、そんな諺がピッタリの絶体絶命の此の現状。
だと言うのに、先程までのパニック状態は何処へやら…。
今は、何時も通りの平常運転で、元気一杯にコントをする少女3人。
そんな少女等の様子に、呆れ果て、大いに引いた視線で見て、再び、男子達は、思う…――――。
『女は怪獣(モンスター)の様なモノだ。』
And that's all…?
(それでおしまい…?)