濁った白
閉ざされた黒
爛(タダ)れた赤
沈んだ青
嘲笑う黄
蔓延(ハビコ)る緑
引き摺り込む紫
其々が其々の色を伴った夢を見た。
振り返ると言う事すら、近頃は、すっかり忘れてしまって居た、言い様の無い懐かしさを、伴(トモナ)う過去の夢。
微睡(マドロ)む中、誰かに呼ばれた気がして、振り返る。
けれど、其処には誰も居ない。
空耳かと首を傾げると、また、“聲”が聞こえた。
自分の名前を呼んで居る。そして、何かを、叫んで居る。
けれど、再度、振り返っても、辺りをグルリと見渡してみても、誰も、何も見当たらない。
そんなだから、戸惑い、同時に焦る。
何故か、気持ちが、叫ぶのだ。
どうしても行かなければならない、と。
――――…透明…――――
涙が溢れ、零れた。
ポタポタと次々に頬を伝い、滴(シタタ)り落ちて行く雫。
また、名を呼ばれた。
足元で、落ちた筈の涙が地に着く寸前で止まり、チカチカと光を発し、点滅を繰り返して居た。
やがて其れ等は1つに集まり、光の珠となり、フワリと丁度、目の高さまで舞い上がった。
暫くは遊ぶ様にフワリフワリと浮遊した後、光の珠は形を歪め、やがて、小さな胎児の姿をとった。
其れは、自分の下腹部へと、吸い込まれる様に、淡く滲(ニジ)み、入り込んで行く。
其れに対し、身体が異物感を訴えたのは、僅か一瞬。違和感は、直ぐに消えた。まるで、体内の一部として溶け込んだ様に…。
クスクスクス、クスクスクスと楽し気に溶けた“ソレ”は、笑う。
安堵した様に、有難うとでも言う様に、此れからの未来に光を見るかの様に、極上の笑み浮かべて…。
気付けば、御腹に手を当て、笑い合って居た。
(下腹部が、灯る様に温かく成った気がした。)
軽やかな白
包み込む黒
燃える赤
クールな青
輝く黄
芽吹く緑
エキゾチックな紫
And that's all…?
(それでおしまい…?)