チキンはぁと何本勝負?

□チキンはぁと何本勝負? 03
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(捕まった)反省はしている、だが(悪行の)後悔はしていない。






いつも通りの日常だった。

良くつるむ女子、3人組。


気が強そうな、凛とした目元が印象的な、背の1番高いスレンダーで、中性的な面立ちの少女。

珍しい銀灰色の色味を帯びた、クリン♪とした大きな双眸(ソウボウ)が印象的で、明朗快活そうな少女。

眠たげな…しかし、儚(ハカナ)げながらも、何処かミステリアスな雰囲気が漂う、古風な姫君を思わせる少女。


学校の帰り道に、立ち寄る迷宮の境内社。

三人別々の目的があるので、一緒に同じ鳥居を潜った事は、あまり無い。

今回もそうだった。1人は東口、1人は西口、1人は南口から、中に入った。


しかし、どうだ。

いつもと、違う。



きらきら

クルクル

きらきら

クルクル

ぎらぎら

グルグル

ぎらぎら

グルグル



目がチカチカと痛む程の様々な色や模様の光が、回りに回る乱反射。

其の様は、万華鏡を思わせる。

まるで、万華鏡の中に閉じ込められてしまったかの様な錯覚に陥る。


何時もの3つ廊下は無く、別々の入り口から入った3人は、見知らぬ同じ部屋…此のカレイドスコープの部屋の中に、並列に佇んで居た。

そして、そんな3人の目の前には、見るからに、演芸バラエティ番組で有名の『座布団10枚!』…以上に積み上げられた座布団の煙突が3塔。


其の上に座り、此方を不機嫌そうに見下して来る奇妙な青年が3人。(←バランス感覚半端ねぇに違いない。)

そんな光景に、訳が分からないと疑問に思う前よりも、クエスチョンマークを浮かべる間よりも先に、1人の青年が口を開いた。





(?)「この僕を何度も蹴飛ばし、他の仏像にも損害を加えた…クラッシャー腐女子。」





現代の流行りファッションの1つである洋服を着た、可愛い顔した、見た目キュートな男が、本のページを捲りながら、黒い笑顔で3人の中で1番背の低い女子へと言葉を投げ掛ける。





(?)「『天囃子 風鵺(テンバヤシ カヤ)。辛い物とBLが大好き。ポジティブ思考でチキン。故に、他人より自分が優先的な思考回路。意外な所は、頭が良く、成績優秀な所。』」





しかし、其処で反応したのは、実際に声を掛けられた女子ではなく、背の高さが3人の中で真ん中に当たる女子が、小さな紙を取り出し、其の紙に書かれたカンペを見ながら、背の低い女子の紹介をした。





(風鵺)「Hey(ヘイ)☆天囃子 風鵺でーっす♪」





そして、本人による陽気で元気なご挨拶。

ちなみに、BLとは、Boys Love(ボーイズ ラブ)の略称で、男性同士の同性愛を示す物である。

更に、チキンとは、鶏肉の方のチキンでは無く、自らの安寧を保とうとする、臆病者の事を、蔑(サゲス)んで言う、スラング用語の方である。





(?)「この俺様への上納された金銭を何度も盗みに働いた…ドロボーオカマ。」





今時流行りのビジュアルファッションの格好をした男が、名簿の様な物を捲りながら、怒りで引き攣った顔で、3人の中で1番背の高い女子へと言葉を投げ掛ける。





(風鵺)「『鬼姫 喧花(キヒメ ケンカ)。The(ザ)☆下手物&GLラブ!バリバリ男前な気質。なので、常にレディーファースト思考回路。意外な所は、大の味覚音痴なポイントと、素行は悪いのに、成績は平均並みな所かねィ?』」





しかし、又もや此処で答えたのは、声を掛けられた本人ではなく、先程、自己紹介を終えた風鵺に因る、見事な暗記での背の高い女子の他己紹介だった。





(喧花)「あ、俺?チワーッス。鬼姫 喧花で〜すよっと。」





そして、本人による間延びした、やる気の無いご挨拶。

ちなみに、GLとは、Girls Love(ガールズ ラブ)の略称で、女性同士の同性愛を示す物である。





(?)「吾(ワガ)へ奉げられた善良の甘味の供物の盗み食いを仕出かした…盗人(ヌスット)甘ったれ。」





現代ではもう、普段は着る事の無い着物を着た男が、巻物の様な物を広げながら冷たい無表情の顔で、3人の背比べの中で中間に当たる女子へと言葉を投げ掛ける。





(喧花)「『菓子宮 摩耶(カシミヤ マヤ)。甘い物好き&NL推しな、電波系ミステリアスガール。ジュルリ。隠し味は、意外と、お馬鹿なチャーミング的思考回路!ムフッ。まぁ、俺的結論風に言うとだな…マイ☆スイート♪エンジェル!!フヘヘ。』」





此れも同様。言葉を投げ掛けられた本人では無く、見事な変態振りを露呈した喧花に因る、他己紹介だった。





(摩耶)「菓子宮 摩耶です。」





そして、本人による単調で短文なご挨拶。

ちなみに、NLとは、Normal Love(ノーマルラブ)の略称で、男性×女性のカップリングのこと。BL(Boys Love)やGL(Girls Love)と区別して、男女のカップリングを表す為に、作られた言葉である。

更に、電波系とは、ラジオやテレビ放送等の、電気通信に使う物を言う、赤外線より波長が長い電磁波の方では無く、荒唐無稽な妄想や、常人の感性とは乖離(カイリ)する主張を、周囲に向かって、公言する者の事を指す意味合いの方である。





(?・?・?)「「「…………。。。」」」



(?)「不山戯(フザケ)てんの?」



(?)「唐突な現状だっつーのに、何?其のチームプレー。つーか、自分の紹介文にツッコまねーのかいッ!ボケ殺し共めッ!!」



(?)「うんうん。憤慨する所か、最早、感嘆に値するな。天晴(アッパ)れだの。」



(?・?)「「いや、感心してる場合じゃねーよ!?」」





真剣に、そして剣呑に呼び掛(カ)けた己達に対して、女子達は絶妙で戯れ合い感満載なチームワークで対応する。

そんな対応に更に剣呑さを尖らせて応戦しようとする青年達。

仕切り直しとして、『ゴホンッ』と、和服姿の青年が咳払いを1つして、脱線しかけた話の流れを元に戻す。





(?)「そなた等の此れ等の所業は…」





極 刑






(?)「に、値しま〜す♪」



(摩耶)「…只、甘い物、貰っただけなのに。」





ポツリと、何時も通りの、やる気の無い無気力な無表情で、冷たい無表情で、自分を見下げて来る、着物を纏った男を、見上げながら呟く。





(?)「誰があげたと云うのだ?誰が許可したと云うのだ?」



(摩耶)「あたし」


(?)「世の中、自分中心だと思わぬ事だな。」





ひゅぉおおおっ…と、辺りに吹雪を起こしながら、更に冷たくなった無表情で、摩耶を見下す青年。

其れに対して、先程同様、のんびりとした無表情で、そんな男を見上げる摩耶。





(喧花)「たった、そんぐれーで死刑とか、どんだけ〜っ!?ちゅー位、心狭ぇ奴等だな。」





呆れと面倒臭さ全開の表情で、己を、未(イマ)だ、引き攣った笑みで、見下げて来るビジュアル系の格好をした男を、見上げながら言う。





(?)「じゃぁ、返せや。テメーが俺様から盗った金、100倍返し利子付きで!」



(喧花)「つーか、元々お前の金じゃねーじゃん。」



(?)「だったら、テメーが盗って使って良い金でも、ねーんだよ。つーか、俺に奉げされた金だから俺のなんだよ!!」





そんな喧花の返答に、早くも座布団を積み上げた上座から降りる青年。

そして、喧花の前に仁王立ち、引き攣った笑みを止め、真っ向から怒りを滲ませた表情で睨み付ける。





(風鵺)「僕、君みたいな可愛い子、蹴ったりした覚えないよ?…腹黒いから好みじゃないけど





全く心当たりがないと言う顔をして、腹黒さが滲み出る様な、黒い笑顔を、ニコニコと表面上だけに、貼り付けながら、自分を見下して来る、現代風の洋服を着た青年を、見上げながら言う。





(?)「だぁからさぁ、不山戯んのも惚(トボ)けんのも、やめてくれる?」





3人の女子は、分かって居る。

そして、冷静に、余裕で、対応して居る。

常識外れな者達、特有の、常識に捕らわれない柔軟性と、其れから現実逃避をしない度胸さ。

…と言っても、まだ実感が沸いて居なく、此れから起こり得る事を知らないだけかもしれないが、ともかく、彼女達は正解の答えを導き出して居る。



青年達は、人ならざる者…人外魔境の類いであると言う事を。



出入り口の無い、閉ざされた密室の部屋。

夢と片付け様にも、同床異夢ならまだしも、同床同夢なんて、甘く生温い程に、蹴散らせる現実感。

此処が、逸話がゴロゴロ転がる境内社と言う状況下で、自分達が仕出かし続けた所業の数々を熟知してるかの物言い。



間違い無く、彼等は、人間では、無い。

其の上で、彼女達は、思考を巡らせる。





(喧花・風鵺・摩耶)「「「(さて、どう逃げようか?)」」」





此処から脱出する方法と、此の青年達の姿をした化け物から逃げ切る為の、解決の糸口を見つける事に、思案をし始める。










And that's all
(それでおしまい…?)


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