前日譚【前編】

□星影に供花の十字架 02
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太陽の帝国と月の王国






男神が、“太陽”と成り、女神が、“月”と成り、“至高の存在”が“地球”と成り、幾星霜の時代を重ね、悠久の時が過ぎた。

其の時の歴史の流れの中で、“太陽”と“月”では、“至高の存在”の恩恵を受けた影響が、盛大に花開いた神代(カミヨ)の時代があった。



“太陽”には、不老長寿で好戦的な生命体が次々に生まれ、金烏(キンウ)帝国の中心部である太陽の都、日照殿(ニッショウデン)では、煌(キラ)びやかな服装に身を包み、日々、武道会を開催しては、戦いで賑わって居る男神達の国。

“月”では、美人だが、短命で、非好戦的な生命体が次々に生まれ、玉兎(ギョクト)王国の中心部である月の都、月宮殿(ゲッキュウデン)では、華やかな服装に身を包み、日々、舞踏会を開催しては、可憐に舞い踊る女神達の国。



両国共に繁栄はして居るが、金烏帝国と、玉兎王国の間には、不干渉の原則が絶対的であった。



答えは簡単だった。

自分達とは思想も価値観も流儀も哲学もポリシーも、何より、生き方が真逆だった。


しかし、今まで、衝突や戦争が起こった事は無い。

何故なら、“太陽”と“月”と成った男神と女神の体質が、例外無く、子孫である神々に受け継がれて居たからだ。

此れでは、衝突や戦争は、デメリット、損害の方が多く成る為、お互いの国には、一切合切関わらない不干渉条約を結んで居るのだ。


まぁ、其れでも、金烏帝国は、玉兎王国を、弱者と軽蔑して、見下しては罵(ノノ)しって居る。

玉兎王国は、金烏帝国を、野蛮な男神達だと、礼節を知らない無礼者と、陰口を叩いて居る。



結論的に言えば、分かり合えない、理解し合えない程、不穏で険呑とした、嫌悪の関係。

否(イナ)、互いを知り、分かり合おうとも、歩み寄り、理解し合おうともしない、双方の心に、鬱陶(ウットウ)しい隔(ヘダ)たりを作り、隙間風が吹く険悪な不仲。



だが、其れは悪手でしか無かった。

相手を蔑(サゲス)む行為は、負の感情を生み出す。


一点の曇りも無かった国には、何時(イツ)しか、闇が、ひっそりと狡猾に、悪の魔手で、神々の心に、穢(ケガ)れを植え付けて行った。

金烏帝国と玉兎王国の神々は、誰1人として、気付かぬ内に、好き勝手に、欲望の侭、其の身を委(ユダ)ね、狂った様に堕落して悪に支配された。





そうして、不干渉の契りは破られ、戦争が始まった。










And that's all
(それでおしまい…?)

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