爆速3秒圏内 (Hati)「……桜の妖精ぞよね」 (Sköll)「ん?」 (Hati)「Sköllが、桜の妖精みたいだなって思ったんだぞよ。」 大方、Sköllの髪の色と、住処(スミカ)として居る此の桜の木の花の色を、結び付けたのだろう。 Sköllは突拍子も無い頓珍漢な思考回路をして居ると、常々、Hatiは小言の様に文句を言うが、Hatiだって、似た様な物だと、Sköllは思う。 (Sköll)「男の俺が?」 (Hati)「ぞよ?妖精に性別は……あると思うぞよ。」 (Sköll)「今の間は?」 (Hati)「ゔ……」 Sköll同様、知恵の樹に成った禁断の果実である林檎を食べたと言うのに、未だにHatiの頭の中は、お花畑だと、毒舌気味にSköllは評価して居る。 (Sköll)「せめて、桜人にして欲しいな。」 (Hati)「寝床にしか思って無いクセにぞよか?」 (Sköll)「花見をしてるんだヨ。」 (Hati)「ふふっ…嘘吐(ウソツ)きぞよね。」 此の世の全ての幸せを詰め込んだ様に微笑する声音(コワネ)で、そう優しく反論して来たHati。 そんな小生意気なHatiを横目にして、起き上がり、珍しく淡く微笑み、腕を翼の様に、ゆっくりと広げて、其の温かい翼に、幸せの者を静かに包んだ。 Hatiの笑いが、一瞬止まり、無言で目を見張る。 しかし、Hatiは、またクスクスと、本当に楽し気に、笑い始め、Sköllが、何が其れ程までに、楽しいのかと、謎に思った。 与える事は当然であって、与えられる事など、皆無だった。 いつもいつも、不要なゴミを入れられ、処理する様な、腐った役割を、こなす日々。 そんな世界のゴミ箱扱い的な虐げを受けて来た、此の世で、たった唯一無二の存在同士。 だからだろうか? 彼女の聲(コエ)が、聞こえ始めたのは。 (女神)『醜(ミニク)いぞよ。』 (女神)『嫌(イヤ)だぞよ。』 (女神)『もう沢山だぞよ!』 悲しさと切なさから生まれた、哀願(アイガン)の嘆(ナゲ)きに、自分には無い愛しさを感じた。 そして、同時に、腹立たしい様な、苛立つ様な、何とも言い難(ガタ)い気持ちが胸中で、グルグルと渦(ウズ)を巻いた。 それよりも難解なのは、独りを嘆き、塞(フサ)ぎ込む彼女の、其の思考と心が、少しも理解出来無かった。 けれども、彼女と会って、其れは難解でも、何でも無く、必然だったのだと、軽い驚きと、緩(ユル)やかな得心(トクシン)に満ちた。 (Hati)『Sköll』 だからだろうか? 俺が居る時は、屈託(クッタク)なく笑えるクセに、1人の時は、ぐずぐずと、泣きべそをかいて、また煩(ウルサ)く、幼子(オサナゴ)の様に呼ぶ聲がするのだ。 (Sköll)「う……ぐ」 片膝を付いた体に、また裂傷が走った。 喉をついて溢(アフ)れかけた悲鳴を、Sköllは歯を合わせて噛(カ)み殺す。 また、無数の光と闇の混合矢が、雨の如くSköllを襲った。 まだ、何とか動かせる利き腕で、既に仕込錫杖だった其処から、抜刀した血よりも濃い緋色の刃の直刀を振(フル)いまくって、8割は切り落とすが、それでも、確実に、じわじわと、劣勢に成って来て居る。 (至高の存在in?)「「全ての代償ヲ払う覚悟ハ出来タカ?」」 (Sköll)「だから、さぁ……――――ッ」 まさか、至高の存在が、“荒振神”の“闇神”と、手を結んで“混ざり合って”居たとは…。 Deus ex machinaを創ったと、情報を得た時は、裏で手を組んでる事は見抜けたが、まさか、“至高の存在”としての己をも“差し出して”居たとは、想像出来なかった。 其の点だけは、恐れ入った。 其の読みだけは、此方(コチラ)の完敗だ。 当たった2割の光と闇の呪力は、酷く醜い鈍痛を与えて来る。 臓腑(ゾウフ)と血肉(チニク)を、鉄の棒で掻き回される様な不快感に加え、爆竹(バクチク)の様に爆ぜる激痛感。 其れでも……――――。 (Hati)『Sköll』 (Sköll)「ぁ…ん…まり」 (至高の存在in闇神)「「何?」」 (Sköll)「イライラさせないで欲しいよね!!」 光が、噴き出す。 血の様に、赤く輝くソレは、Sköllを包み込み、赤い流星となって、一瞬で、至高の存在in闇神を、地球まで、吹っ飛ばした。 (Sköll)「さて、俺が誓いの塔に連れて来られてたって事は、御姫様は、差し詰(ヅ)め、祈りの塔か。全く、俺等も落ちたもんだね。平和ボケにも程がある。」 こんな事態に成って居るのは、戦いが終わりに近付き、平和が訪れる寸前での、気の緩(ユル)みが、1番の原因に他ならない。 だから、こうして、隙を突かれ、無様な醜態を晒す事態に成ってしまって居る。 (Sköll)「さて、そんじゃ、もう1発、打(ブ)ち噛(カ)まそーか♪」 先程ので、あの力の放出の仕方は、分かった。 アレをもう一発やれば、月になんて、3秒と掛からないだろう。 運が良ければ、あの至高の存在in闇神が戻って来る前に、Deus ex machinaも、俺の獲物として、独占出来る。 そう思うと、失態を犯した不愉快感など、砂の上の城の様に脆(モロ)く崩れ去り、代わりに、禍々(マガマガ)しく紅い瞳には、ただ、愉悦の色だけが宿って居た。 And that's all…? (それでおしまい…?) |