Jeongmi

□Your name
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朝、早起きをしていつもより早く学校に着く。時刻は6:30。部活も無いのにこんな時間に学校に来るのって、私くらい。


コンビニで買ったメロンパンを頬張りながら、陸上部の練習を眺める。私も部活入っときゃ良かったかな〜、なんて思いながら。結局バイトがしたくて帰宅部。



ホイッスルの音と部員の声だけが響く朝の学校。走り終わってふいに上を見上げた生徒が、こちらに向かって手を振っている。



「今日も早いですねー!」



なんだ、チェヨンか。
私は大きく手を振り返す。

今日も元気だなあ、そう思いながらまた一口頬張ろうとした瞬間。





「あの!」




震えた女の子の声が背後で聞こえた。




振り向けば顔を赤く染めた女子生徒。






「ん?」
「よかったら、私と付き合ってもらえませんか…」





朝っぱらから…

皆と同じ時間に学校に来るのは、じろじろと生徒の目が気になるのが嫌だ。だから早く来てるのに、そんな習慣も一部の人にはもうバレてるようだ。



でも彼女も勇気を振り絞って、わざわざ早起きをして伝えてくれているわけで。




「ありがとう」
「…え、おっけー、ですか」
「…今は、恋人、作る気なくてさ。ごめんね。」
「…そうですか」
「ん、でもありがとう、嬉しいよ」
「いえっ、急にごめんなさい、変なこと言って…」





それじゃっ、震えたままの声でパタパタ走って行く。高校に入ってから、何度告白されたか分からない。女子校な同性愛が多いとか聞いていたけど、それは本当だったみたい。

もちろん、本当に恋人を作る気がないわけじゃ無い。でも、なかなか興味がある人に出会えなくて。


申し訳ないと思いつつも、嘘を言ってたぶらかすなんてことも出来ないから、いつも振ってしまってばかり。




口の端についたパンくずを取りながら、チェヨンに頑張ってねと連絡をする。まあ、見ないだろうけど。あ、ナヨンオンニにモーニングコール頼まれてたの忘れてた。


あー…


あとで絶対怒られる、だる…






チャイムと同時に滑り込んできたナヨンオンニは、予想通り、私を見るなりなんで起こしてくれないのと騒いでいた。

寝坊したのに髪もメイクもばっちりなオンニはすごいなーなんて思いながら謝る。




「ねえ、私が朝早く来てるってもう他の女の子にバレてんだけど」
「え、はやすぎ…モテる女は大変ね」
「はぁ…女にだけどね」
「あーそういえば今日のお昼、体育館倉庫裏に来て下さいって」
「誰が?」
「私が知るわけないでしょ!いっつも私を使ってジョンヨンに近づこうとするのよみんなは」
「はぁ…ナヨンオンニにも苦労かけるね」
「本当よ!でもまぁまぁ可愛かったし、行ってあげたら?」
「ん、そうだね」





お昼の時間になって私はお腹が空きすぎて死にそうだった。朝早く起きるようになってご飯を食べる時間も早くなって、なかなかお昼まで持たない、のに、私は体育館倉庫裏に行かなければならない。

すぐ終わらせよ、そう思いながら到着する。





あれ、まだ来てない…
誰の姿も見えない。



「ジョンヨンさん」




え…


透き通るような、儚いけど強い声。聞いたことがない声に、
すぐに声のした方向を振り向く。




「ジョンヨンさん、ですよね」
「うん…そうだけど」
「良かった、来てくれたんですね」




そう言ってへへ、と笑う彼女は見たことがないくらい端正な顔立ちをしていて。高校生とは思えない落ち着きで、大人っぽくて、長いスカートから華奢な足が覗いている。

ふわっと風に髪の毛が煽られて、
髪を手で押さえて微笑む彼女に、


私は一目惚れをした。



ぼーっとつい見惚れていると、
あわあわしだしてカバンの中からノートを取り出す彼女。


さっきまで綺麗な人だったのに、
急に可愛いらしく見える。


「あ、あの、これ朝拾って」



そこには私の名前が書かれたノート。


「あぁ、ありがとう」
「いえいえ、それじゃ」




え、それだけ?

彼女はパタパタと走って行ってしまった。


ノート渡すだけなら、ナヨンオンニに渡せばよかったのに…どうしてわざわざこんなところに呼びたんだろう。

あ、



名前…聞き忘れた。






私はこの時から彼女のことが気になって仕方がなかった。今までの感じたことがない気持ち。


そんな私達が再会したのは
想像しているよりずっと早くやってきた。






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