Jeongmi

□Wishing
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「ミナや、付き合おっか」
「え…ほ、ほんまに言うてるん?」
「うん、ずっと好きだった」
「…私も、私もジョンヨナが」


ジリリリリリリリリリリリリ



「…んぅ…」


うるさい目覚まし時計が今日も容赦なく私を叩き起こす。今、いい夢見てると、思ったのに…。

「さっむ…」

目を開ければ寒すぎる気温に震えて、私はもう一度布団に潜り込んでしまった。寒過ぎる。何度も鳴るアラーム音に嫌々身体を起こせば、冷たい床に思わず小さな声が漏れた。ニットを取り出して腕を通せば少しだけホッとする。最近まで少し上着を羽織れば済むくらいだったのに。そろそろコートが必要かもしれない。季節の変わり目を早く感じた。気になっていたドラマもいつの間にか終わっていて、次の新ドラマの予告がニュースの合間に流れる、金曜の朝。

私はトーストを齧りながら
ふと光ったスマホに目をやった。


"今起きた"


彼女からの連絡。もう、また。
今日は1限から同じ授業なのに。



"笑"

"席取っとくよ"



送信して、コーヒーをゴクリと飲んで立ち上がる。洗面所に移動して歯を磨いていれば、ピコンとスマホの通知が鳴り確認してみる。人気のファーストフード店からクーポンプレゼント、と見えて、公式か…とほんの少し落ち込む。

大学に入学してすぐに仲良くなった私達は
ほとんど毎日同じ授業をとってる。間違いなく1番の仲良しだ。彼女とは毎日会うし、毎日連絡もするのに、それでも通知が鳴る度嬉しいのは、私は彼女に恋をしているから。そう、たまに告白される夢を見るほど。



「いってきます」


風もなく、外は思いの外寒くなかった。
大学に着いて遅刻をした彼女と私の2人分の席を確保して、授業が始まるのを呑気に待つ。チャイムが鳴ると同時にぽん、と背中を叩かれて振り返れば「おはよ!」と息を切らした彼女。

たまに遅刻はするけど、しっかりメイクもしているし、いつもセンスのあるお洒落な私服に関心する。朝風呂上がりのふんわりシャンプーの香る乾いたばかりの髪にどきっとした。


「ぎりぎり間に合ったな」
「ん、今日寒すぎて起きれなかった…」


ほんまにな〜なんて会話を交わしながら
先生のつまらない子守唄を聞いてはまたうとうとして。窓の外から赤く染まった葉が揺れ落ちるのを見てた。季節は次々と巡り変わっていくのに、私たちの関係は変わらないまま。1つの場所に集められた枯葉の上にまた一枚、ひらりと落ちて、彼女との思い出がまた募っていくのだろう。このまま、友達のまま。

友情を壊したくない。でも伝えたい。
自分の気持ちに気付いてからは、いつも彼女にドキドキして、モヤモヤしてばかりだ。





#



「明日も1限?」
「うん、ミナ2限からだっけ」
「うん」


枯葉を踏みしめながら駅まで歩く。彼女は車通学だから駅と駐車場がある方向でいつもバイバイ。10分間くらいの短い距離だけど、騒がしい学内に居るよりは、こうやって2人で歩いている時間が好きだった。



「最近さあ」


彼女はスウェットパーカーのフードを被りながら口を開いた。



「ん?」
「なんかモテてない?」
「え?私が?」
「うん」
「そんなことないやろ」
「絶対そう!可愛いって、さっき後ろの先に座ってた男達も話してた」
「そうかなあ…?」



本当に彼女の言う通り、私がモテてたとしても、嬉しくはならない。
あなたにモテたいよーって。


「ミナが他の男に取られる前に、私が早く捕まえとかないとっ」
「わっ」


勢いよく抱き着いてきた彼女にバランスを崩す。ぐらついた私を抱き締めてへらへら笑ってる彼女は、いま、なんて言ったの。


告白された…?いや、違う、か


違うよね…?




「…」
「はは、びっくりした?」
「…あ、うん」



戸惑う私の顔を見て、驚きすぎだよってまた笑い出す彼女。やだ、私いま、どんな顔してる?


「冗談だよ、ひっひ」



私の腕を組んでまた歩き出す、引き笑いの彼女。恥ずかしい、私だけ恥ずかしくなって、ドキドキしちゃって。

それでも彼女の引き笑いの声を、ずっと聞いていたいと思ってしまうのは、私は相当重症だから。だって、あなたはこんなに無邪気に笑う。ドキドキしてるのは私だけって、悔しいけど、やっぱり笑うあなたは可愛いくて。



「もう、そんな面白い顔してた…?」
「うんっ!」
「…っ」



ずるいよ、その笑顔。
普段はかっこいいのに、甘えるのも上手で、垣間見える末っ子らしい感じが私の心臓をより早く動かす。

分かれ道で別れた私達は、2日間会えないからって何度も振り返って手を振り合う。まだ私の心臓はドキドキしたまま。遠いから見えないかなって、思いっきり笑ってみた。



1人通り抜ける改札に、おさまらない胸の鼓動。電車を待ちながら私に抱き着いた彼女を思い出して、にやけそうになって慌てて口を抑えた。




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