BOOK

□Best friend
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「デビューしたい」


その気持ちは皆同じはずなのに
なぜこうもすれ違ってしまうのだろう。私達はただデビューしたい一心なのに。


6MIXとして、デビューすることが嬉しくて
最初はよく皆で遊んだり
意見も沢山言い合って
自分たちを高めてきた


しかし2度目のデビュー延期。
メンバーも入れ替わり
ジヒョ、ナヨン、ジョンヨンは
もどかしさでいっぱいだった。


部屋の片隅で丸くなってひたすら泣くジヒョ。
この短期間で何度泣いたのだろう。

長年の練習生としてどれほどの努力してきたか。いつか報われると思っていた。頑張っているところを誰かがきっと見ていてくれていて、いつかデビューを果たした自分に向かって、ジヒョよく頑張ったねと言ってくれる誰かが。その努力がやっと報われようとしていた時、期待で胸がいっぱいだった矢先、デビュー予定だったグループは解散となった。


結局ジヒョのデビューの夢は
叶わなかった。


いくら練習したか分からない。小学生の頃から授業が終わるとすぐにレッスン。放課後に友達と遊ぶことなんて出来なかった。そのため親友と呼べる友達もいない。

中学生になればあちこち男女が付き合い、ジヒョは誰が好きなの?なんて聞かれたりして。私は歌が好き、答えはそれしかない。同世代の子には追いつけなかった。恋愛経験なんて全くのゼロ。

人生の全てを歌手という夢に捧げてきた。






ジヒョは泣きながら、
菓子パンを頬張っていた。


事務所の練習生や先輩、社長は、皆揃ってジヒョには才能がある。ジヒョは本当に歌が上手い。早くデビューするべきだって。そう言ってくれる。



ジヒョ「…じゃあなんでデビューさせてくれないの…?」




膝を抱え声を出して泣く。



一体何が。自分はこんなに頑張っている、誰かが見てくれると勝手に思っていた。でもそんなものは理想。
自分が頑張ろうが頑張らまいが、
結局は大人の都合。




ガチャ。




部屋のドアが開けられた。


ジョンヨンだ。





ジョンヨン「ジヒョ…」



部屋に散らばったお菓子やインスタント食品のゴミ。手を止められずに食べ、泣き続けるジヒョ。


ジョンヨンはパンを食べているジヒョの手を掴み抱き締める。


ジョンヨン「ジヒョ、ジヒョ」


ジヒョ「離して…」


ジョンヨン 「だめ、毎日こんなに食べたら…病気になっちゃう」



ジョンヨンの声も震えていた。
涙をこらえているのが分かる。

同じ宿舎でジョンヨンはジヒョの隣の部屋。毎晩ジヒョが泣いている声
を聞いてはジョンヨンが来る。




ジヒョ「来るなって言ってるのに」


ジョンヨン 「放っておけると思うの?」



ジヒョ「イヤホンでもすればいいでしょ」


ジョンヨン 「ジヒョの気持ちわかるから。私だって悔しい。また一緒に頑張ろうよ、ねえジヒョ?」




抱き締めるジョンヨンを
ジヒョは突き飛ばした。



ジョンヨン 「っ?!」


勢いよく壁にぶつかる。




ジヒョ「あんたに私の気持ちなんて分からないわよ!もういい加減にしてよ!!」




ジヒョはジョンヨンを力ずくで部屋から追い出し、鍵を閉めた。



ジョンヨン「…ごめん。ジヒョ」




壁越しに聞こえてくる一言。
ジョンヨンは涙を流しながら自室に戻ろうとしていた。その時にナヨンとすれ違う。




ナヨン「ジョンヨナ?」

ジョンヨン 「あぁ…オンニ、オンニっ」



ナヨンを見るなり勢いを増す涙。
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