BOOK

□現実
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「喉乾いたの?」

「ううん」




チェヨンは覚悟を決めた。




「話があるんだ」


「どうしたの?」


「……」




沈黙。


チェヨンな深刻な表情に
ジョンヨンは心配そうに顔を覗き込むと、チェヨンの手を握った。


「チェヨナ、大丈夫だよ。オンニに話してみな」



ジョンヨンは優しい表情で、
チェヨンの頭を撫でた。

その行動がチェヨンの心を
更に苦しくさせる。



好きなんて言ったら絶対引かれる。何が大丈夫なの?
何も大丈夫なんかじゃない。
気持ち悪くなるだろう、
今までそんな目で見られていたなんて知ったら。


チェヨンは心の葛藤を続けながら、
口を開く。


「…私、ジョンヨンおんにが…」

「うん」

「…」


チェヨンに向けられるジョンヨンの眼差しがあまりにも優しくて。
何も言えなくなる。

チェヨンは涙を流す。

その涙をジョンヨンは優しく拭き取り、抱き締める。



「泣かないでチョヨナ」


ジョンヨンはチェヨンの背中をさする。


そんな風にされたらますます言えなくなる。ますます辛くさせる。



「触らないで」



そう言い放ちジョンヨンの肩を押す。

ジョンヨンは困惑している。

…さわらないで、?






「ごめん…私…オンニがすきで、」

「うん」


「すき、なんだ」



ガヤガヤと廊下で声が聞こえる。
メンバーが騒ぎ出したようだ。



「私も好きだよチェヨナ、」


ジョンヨンは少しチェヨンから離れ、そう答えた。
チェヨンは離れたジョンヨンに自分から近づいていった。
少しずつ距離を詰めるチェヨンに戸惑い後ずさるジョンヨン。




一歩ずつ、距離を詰めていく。



「違う」

また一歩。

「1人の、女性として」

また一歩。

「恋愛として、すき」

また一歩。


壁へと追い詰めた。

チェヨンは背伸びをして、
ジョンヨンに顔を近づける。



「おんに」


ジョンヨンは動けず困惑したままだったが、チェヨンの肩を押し返した。




「チェヨナ、やめて…」





弱々しい声だった。

ジョンヨンだってチェヨンを傷つけたくない。しかし恋愛対象として見られていたなんて思いもしなかったし、どうしたらいいのか分からない。



するとチェヨンはまたジョンヨンを押し返し、こう言った。


「付き合えない?私じゃ」

「…いやそういうわけじゃ、でも待って」

「待てない、おんに私のこと好きじゃない?」




ジョンヨンは黙り込んだ。



そんなジョンヨンに勢いよくチェヨンは唇を重ねた。


「?!んッ…」


ジョンヨンは思わずチェヨンを突き飛ばす。よろけて倒れたチェヨン 。

そして、ゆっくりと立ち上がると


さようなら、
と言い残し走り去って行った。


ジョンヨンも急な展開にそのまま座り込んでしまった。











チェヨンは泣きながら廊下を走る。
そのまま外に出てひたすら走る。

綺麗な星空の下、
立ち止まり声を出して泣いた。



さようなら、私の初恋。



今日からはただのメンバー。


もう踏み込まない、
この恋は終わったんだ。

現実はそう甘くない。
























まさかこれが、悲劇の幕開けだったなんて、思っていなかった。





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