dream

□chaeyoung ×
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「ごめんってば…」


そろそろ私も疲れてきた頃だ。何度謝っても私の言葉に耳を傾けようともしてくれない。部屋の隅で膝を抱えて小さくなってる私の彼女は、かなり嫉妬しいで寂しがりやだ。少し構ってあげないだけでこうやって拗ねるくせに、私が構って欲しい時はちょっと待ってて、なんて言って数時間彼女が絵を描き終わるまで待たされる。嫉妬しいで寂しがりやで、ついでにわがままだ。


「チェヨンー…」


これを面倒臭いと思うか、
それすらも愛おしいと思えてしまうか。
私はきっと、…後者、と言いたいところだが、正直どちらも当てはまると思う。本当、よく私はこんなわがままな彼女に飽きないなと、こういう時に思う。うん、本当になんでだろう。

もう何分くらいこうしているのだろう。スマホで時間を確認しようとポケットに手を入れたけど、見当たらない。あれ?反対側だっけ?と思って確認してみるけど、入っていない。



「…」


…やっぱり今回の原因はスマホだったか。


チェヨンが拗ねているときは、私が何かに集中していて構ってあげない時が多い。そして、私が集中している物事を奪うのだ。絶対にスマホはポケットに入れたし、無いのは彼女がとったからだ。完全にそうだ。それしかない。私はそっぽを向いている彼女に近づいて、頭を撫でてもう一度謝る。


「ごめん、」


真後ろから夕焼けの光が差し込んで、綺麗な金髪がより輝いて見えた。顔を見やすいように彼女の髪を耳にかけてあげると、やあ、と小さい声を上げて髪で顔を覆ってしまった。やっと反応してくれたと思ったら、そんな反応。

…こうなったら最終手段。私は優しく彼女をぎゅうと抱き締める。ふわふわの髪が耳に当たってくすぐったい。


「…チェヨンが一番好きだから」


本当は恥ずかしいから、あんまり言いたくないんだ。付き合いたての熱々カップルじゃあるまいし、好き、とか、愛してる、なんて言わなくたって分かってる。なんかそう言うのは恥ずかしいから、私はあまり言いたくはないのだけど、彼女は言葉を欲しがる。


「…ほんと?」
「…うん」
「じゃあちゅーして」


えぇ、と笑う私に早く、と急かす彼女。ようやく言葉を返してくれたので、私は彼女の言う通りにしようと仕方なく腕を解いた。密着した身体が離れかけた瞬間、勢いよく後頭部を掴まれて彼女の方へ引っ張られる。



「すきありっ」


彼女に噛み付かれるように私の唇は奪われていて、驚いて離れると嬉しそうな顔をしたチェヨンがいた。


「…急になに」


てか隙ってなに。私が折角キスしてあげようと思ったのに。と思うも、私の首に腕を回してにこ、と微笑む彼女を見てどきっとしてしまい、目を逸らしてしまった。その顔、ずるい。かわいい、と思わず声が漏れてしまうと、彼女は目を少し見開いて、照れたように笑った。


「ふふ、オンニが褒めてくれるなんて珍しい」
「…そうかなあ」


そんなこと言って、私が心の中では毎日褒めてること、チェヨンに夢中なこと、気が付いてるクセに。

笑顔を取り戻した彼女は、私のポケットにスマホを乱暴に入れて、ぺたぺたと裸足でソファまで歩いて行く。私も彼女を追いかけて隣に座る。
彼女はコテン、と首を倒して私に肩寄りかかると、私の手や爪をいじり始めた。黙ってその様子を見ていれば手の甲の皮膚を引っ張られて、いた、と変な声が出る。


「おしおきだよ」
「…いてて、まだ怒ってんの」
「もう怒ってないもーん」


地味に痛い。びよーんと皮膚を引っ張って私で遊んでいる彼女の首に手を置くと、大げさに肩をあげてくすぐったい!と叫んだ。置いただけで擽っていないのに、首が弱い彼女は声を出して笑った。


「やーあ!ジョンヨンオンニ!」
「地味に痛かったんだからね」
「わ、わかったっ、ごめんオンニっ、ひひっ」


どき、また心臓が跳ねる。
私ってこの子の笑顔にとことん弱い。
…分かった、私はきっとこの笑顔が見ていたいから、彼女に飽きないんだ。ツボが浅いとこも、照れ笑いの時も、私に向けられる笑顔を全部、ずっと見ていたいんだ。だってほら、こんなくすぐりの笑顔にだって、どきどきしてしまう。

付き合いたての熱々カップルじゃあるまいし、どきどきする、なんて思うのすら恥ずかしいけど、仕方がない。かわいいチェヨンが悪いんだ。


いつまでも彼女離れ出来なそうな私でした。




Fin

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