minayeon
□ペンギンの正夢
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最近サナとジヒョはやけに仲良しだ。いつどこにいても2人で話していることが多くて、夜リビングのソファでアイスを仲良く食べているのを見かける。お陰で最近はミナと部屋に2人きりになることが多い。
そんな最近だから、私はあるものを用意してみた。前話してたことを、現実にさせてあげたいなあ、なんて。
「ミナや、最近夢見る?」
隣のベッドで動画を見ているミナに話しかける。ミナは私の方を向くと、話しかけられたことが嬉しいのか、んふふ、と笑ってセミロングの髪を耳にかけた。
「、なんで?」
「…んー、なんとなくよ」
「最近は…見ないかなあ」
「見ないの?」
「やから、なんでなん?」
「先月くらいに、2人で話したこと覚えてる?」
覚えてるわけないと思う。2人きりで話すことなんてよくあるし。ううんと首を横に振るミナに、私は大きな袋をベッドの下から取り出した。
「これ、あげる」
「え?」
ミナのベッドに入って、
少し驚いてるミナの手にそれを持たせる。
「今開けて」
「…うん、」
ガサゴソと私の言われるままに袋を開けて行くミナの横顔は少し嬉しそう。
「わあ…っこれ」
「可愛いでしょ」
大きいペンギンのぬいぐるみ。ミナが以前、ペンギンを飼う夢を見たんよ、名前もつけたんよ、なんてキラキラした瞳で一生懸命話し掛けてくるもんだから、買ってあげたくなっちゃって。
「可愛い…っ!ありがとう、ナヨンオンニ」
「ふふ、いいえ」
ミナはペンギンを撫でて、じっと見つめてた。大きいペンギンはそれなりの重さもあるから、膝の上に乗せて可愛がるミナ。ふわふわの毛皮はこの時期少し暑苦しいかもしれないけど、ミナは嬉しそうに撫でていた。
ぎゅっと抱きしめて、気に入ってくれたようだ。
「ミナに、ペンギン飼わせてあげたくて」
「ああ、あの夢!それで買ってくれたん?」
「うん、」
「嬉しい…それじゃ、名前つけなきゃあかん」
「うん、つけてあげて」
んー、と真剣に考え込むミナ。まるで親に犬飼っていいよと許可された子供みたいに、真剣で純粋な瞳だ。片手を顎に添えて、ぺん、ぺん、ぺん…と言いながら考えるミナがあまりにも真剣で面白くて、笑ってしまう。
ぺんの付く名前にしたいみたいね。
「オンニは何がいいと思う?」
「え?私はね〜」
ミナに呼んでで欲しい名前。
可愛いね〜◯◯〜うちゅちゅちゅ〜ってして欲しい名前は…
「ナヨン」
「…何言ってんねん」
「うそうそ」
私の名前を呼ぶ、私にデレデレになるミナが見たかったなぁ〜、という言葉は心にしまって置く。ミナはスマホを取り出して名前を調べ始めた。そこまでする?と思ったけど、自分のあげたものをここまで真剣に考えてくれるのが嬉しくて、私も隣で意味もなくスマホをいじり始めた。
トン、私の方に重い感覚。
ミナは私に寄りかかったまま、またぺん、ぺんと小さな口をパクパクさせてた。
お、そろそろ出るかな。
「決まった?」
ミナは肩に寄りかかったまま、
私を見上げるように言った。
「…ぺんぺん」
「…」
反応が遅いと笑っていつも誤魔化すのに、今回は自信があるのか私の反応をじっと待つミナ。
可愛くて固まってしまった私。
「ん、ふふ、いいと思う」
まあ、考えた割には普通の名前だっけけど。
「ミナらしくて可愛い」
「ほんまに?」
「うん」
「でも…」
またうーんと考え出すミナ。
肩をこちらち寄せれば、また身体を預けてきて、首がコテン、と私の肩に倒れる。
「オンニがくれたから、いむぺんぺんにする」
「…なんかダサいわね、別に私の名前入れなくても」
「さっきナヨンて言うてたやん」
「あれは冗談よ」
「…ん、でも入れたい」
左手を軽くふにふにと握ってくるから、その手に答えて指を絡めてあげた。ミナはその手を見つめていたと思ったら、今度は細めた目で私を見つめる。
「ナヨンオンニがくれたんやもん」
「…そうね、じゃあそうしましょ」
へへ、嬉しそうに笑って結ばれた手にぎゅ、と一瞬力を込められる。なんかダサいけど、どうしても私の名前を入れたいミナ。そんなに可愛い反応を見せてくれるなら、またペンギンを買ってあげたくなる。私の名前のついたペンギンたち。
「よろしくね、いむぺんぺん」
私の肩へ預けていた頭はいむぺんぺんに向けられた。私はただミナが可愛らしくて、ずっと口角が上がりっぱなしだった。
「正夢になっちゃった」
そう言ってとびきりの笑顔を見せてくれたミナに、私はたまらなくなって抱き着いた。勢いに2人でベッドに倒れこむ。ペンギンはミナの手から離れてベッドの下へ落ちてしまった。
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