ベストウイッシュ!

□プロローグ
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その一報が彼女に届いたのは数年前のことだ。

ジョウトでの旅を終えた彼女は、旅の同行者のヒビキと別れ、次の目的地カントーへ向かうところだった。
その道中見知らぬ番号から電話がかかってきた。
彼女のポケギアにかかってきたのは、幼なじみ・コウタからの連絡。
番号を教えてないのになぜ知ってるんだ。おそらくナナカマド博士が教えたんだろう。
どうせ、旅での出来事や思い出を語りたくてかけてきたのだとそう思っていた。
だが、何故かいつものおちゃらけた様子ではなく深刻な声色だった。
何があったのかと、いつもならコウタの話なんて半ば流すのに、その時は珍しく耳を傾けた気がする。


「どうしたの?」
「それがさ……」


次の言葉を言い渋るコウタ。いつもなら催促をするが、どうもそういう気にはなれない。


「イチカと連絡が取れないんだ……」


少しの間を開けてやっとコウタが口にした言葉に耳を疑った。

それ以上、それに関しての詳しいことは、通話では話せないらしい。
一度シンオウに戻って来いとのことであった。


急いでルートを変えシンオウに帰ると、ナナカマド研究所で待っていたコウタと警察から詳しいことが告げられた。
警察曰く。
もう一人の男の幼なじみである「イチカ」と、何をやっても連絡が取れないというコウタの連絡を受けた警察が調べたところ、ポケッチ、ポケナビにも反応がない。
ホウエンに向かったはずだが足取りも掴めない上に消息も不明。
つまり、現段階で行方不明と断定せざるを得ない状況だという。

そこまで聞かされたアランはいてもたってもいられなくなって研究所を飛び出そうとした。だが、落ち着かせようとしたコウタに羽交い締めにされて止められた。まだ小さく華奢なアランでは体格差で負ける。
引き留められたあとは、探しに行かせろとコウタの腕の中で泣きじゃくり、暴れた。

そのうち泣き疲れたアランは寝てしまい、それを押さえつけていたコウタも疲れ果て寝た。


しかし、止められたところで大人しくしているアランではない。泣き疲れたが狸寝入りをしていたのだ。
コウタや研究所の人が寝ているのを確認したあと、「探しに行ってきます」と一言書いた置き手紙を残し、研究所を早朝そっと抜け出した。

この時は、イチカ探しの旅があんなに過酷なものになるとは思っていなかった。
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