星娘の核

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「ええ?!この街って、魔法屋一軒しかないの?!」




バンッ、と子気味の良い音を立ててカウンターテーブルを驚いたように叩く少女




「ええ。元々、魔法より漁業が盛んな街ですからねぇ。街の者も、魔法を使えるのは一割もいませんので
この店はほぼ、旅の魔道士専門ですわ」





中年、といったほどの店主がそういうば、少女は
サイドテールに結んだ金髪の髪を揺らしながらがくりと肩を落とし
腰に手を当ててため息を尽いた






「はあーぁ。無駄足だったかしらねぇ」





明らかに残念と顔に表す少女に、店主は服のカラーが変わる魔法具などを取り出すが
それはすでに少女が持っているもので




自身はゲートの鍵の強力なものを探していると、店をキョロキョロと見渡す




その言葉に、店主はあっただろうか、とうんうんと頭を傾げる





そんな店主を横目に、少女は見つけたとばかりに顔を明るく輝かせ
目当てのものを店主の前まで持ってくる






「白い子、ホワイトドギー!」




嬉しそうにコロコロと笑う彼女に、店主は言いにくそうに苦笑を漏らした





「そんなの、全然強力じゃないよ?」





「いいの!ずっと探してたんだー!」




ニコニコと笑う彼女はそのままカウンターに鍵の入った箱を置く





「それじゃあこれください!」





「はいよ!2万ジュエルね!!」




店主の言葉に、少女の輝かしい笑顔がピシリと固まる





「……今、なんて?」






「だから2万ジュエル!」





その言葉を聞いて、少女は踵を返そうとした





しかし、その腕を店主の腕が引き止める





「待って待って待って!ずっと探してたんでしょ?!」





「いやー。流石に高すぎるから手が出せないわー」






進まぬことを知りながらも、少女は足踏みを続けて前へと向かおうとする





「嫌でも!ここで逃したらまた会えるかわかんないよ?!」





「じゃあおじさん安く売ってくれる?」





ピタリと足を止めて、振り向く少女に
店主は行き詰ったように顔を歪める




そのままうーん、と腕を組みやがて意を決したように少女に向き直った






「しょうがない。じゃあ1万9000ジュエルだ!」





「えぇー。まだ高いかしらねー。1万5000でどう?!」





「それはさすがに……」





「じゃぁいいでーす」




くるりと踵を返して、帰ろうとする少女をまたもや引き止めて何とか説得する店主




このやり取りが10回ほど続いて、店主が1万3000ジュエルにまけることで話はまとまった





涙を流しながら少女を見送る店主と、
ほくほくと笑顔で鍵の入った箱を持ち、帰っていく少女




しばらくその店では、値切りをする客が押し寄せたという
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