白執事

□01
6ページ/7ページ

少女が待つこと数十分、目の前には完成した料理




バルドに運ぶことを命じたセバスチャンは、部屋の掃除に取り掛かる





「……手伝う……」





料理は手伝えなかったのだから、とセバスチャンの隣で壁をきれいに掃除する少女






「おや。ありがとうございます」






にこやかに微笑みながら言うセバスチャン


2人で素早く拭き上げて、ものの数分で厨房を元の状態に戻して見せた






「あなたは仕事が早いですね。おかげで予定より早く仕上げられた」







そこからはいつも通りのファントムハイブ家というべきか




悲しいかな、メイリンやフィニがしでかす問題に振り回されるセバスチャンから





仕事内容を大まかに聞いて、夕食の仕込みを黙々と進めていく少女





ようやく落ち着いたか、とセバスチャンと共に厨房で調理をしていると




大量の食器を運んできたメイリンが、よろよろと不安定な足取りで急ぎながら部屋に入ってくる





転ばないのだろうか、と少女が見つめていればお約束というべきか





足を滑らせて前に転びそうになったメイリンは、食器を手放してしまう




咄嗟に動こうとしたセバスチャンを追い越して、少女は自身より大きなメイリンを右手と自身の体で受け止めて
落としそうになった食器を左手と片足で落とさぬように支える





「す、すみませんですだ……!」





腕の中であわあわと焦るメイリンを、静かに見つめて
スッと目を細める






「ん……怪我、してない……?」






「だだ、大丈夫ですだ!!」






「なら、いい……。……慌て、ないで……少し、ずつでも……いいから。



安全……第一……ね」





ジー、ッと視線を逸らすことなく見つめる少女に、メイリンは顔を真っ赤に染め上げて
はひ、と返事になっていない返事を返した




彼女が同性愛者というわけではないのだろうが、恐ろしく整った顔立ちをしている少女に助けられたあげく
見つめられるというのは恥ずかしくもあり、同時に嬉しくもあるのだろう






ゆっくりとメイリンを立たせて、近くの台に食器を置く





その様子を、セバスチャンはくすくすと笑いながら
夕食の調理に取り掛かった
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ